Rescue request of a dragon第7話
『それが、だなぁ……俺様の卵を見つけたんだがその……何だか怪しい奴等が近くに居て
取りに行こうにも取りに行けないんだよ』
「え? 何それ?」
「怪しい奴って何処に居るんだ?」
『この倉庫街の中にある倉庫の1つ。案内するからついて来てくれよ』
そう言われれば確認しない訳にはいかないので、5人はエルヴェダーに案内されて1つの倉庫の
近くへと辿り着いた。
そこにはGTウィングがついたオレンジのR33スカイラインの姿が。
「何だ? あのスカイライン……」
「地元の走り屋かな?」
どうやらVSSEでは無い様だが、用心するに越した事は無いのでまずは栗山が傭兵時代の経験を
活かし、気配を殺して倉庫の中の様子を窺う。すると倉庫の中では入り口側に背中を向けて
2人の男が立ち話をしていた。
結構大きな声で話しているので栗山にも丸聞こえだ。
「で、その卵らしき物がこれだって話なんだろ? だったら簡単だ、これをそいつに渡そうぜ」
「それしかやはり方法が無いか。ただ……宅配便で届ける訳にもいかないから大人しくその2人が
到着するのを待つしか無いだろ」
そうして栗山が様子を窺っていると、その後ろから洋子が覗いて来る。
「誰? あの2人……」
「さぁ……? でもとにかく、あの2人をどうにかしない事には卵が回収出来ないぜ」
「そうね……」
どうにかして卵を回収する為にあの2人を卵の前から移動させなければならない様だ。
その卵は1つだけだが遠目でも分かる位に大きく、その2人の下半身位の大きさがある。
だがその時、2人の男の話が終わり倉庫の入り口側に身体を向けた!!
「ん? 誰だ御前達は?」
緑色の髪の毛の筋肉質な男と白の髪の毛をしている
中年の男の内、緑の髪の男が栗山と洋子に話し掛けて来た。
「あ、えっと……」
「港湾警備の者ですけれども、ここで何をされていたんですか?」
うろたえかけた洋子を制し、本職である警備員の振りをしながら栗山は尋ねる。
だが白髪の男は訝しげな視線を栗山に向けた。
「港湾警備……? 俺達は変な光がここに差し込むのが見えたから
来てみたんだけど、あんた……本当に警備員なのか?」
それにも動じず栗山はしれっと答える。
「ええ。丁度勤務が終わって帰ろうと思ったらここの明かりがついているのが
見えましてね。それにしてもその変な光って言うのが気になります。
それと……何ですかその物体は? 卵、ですか……?」
その恐る恐ると言う振りの疑問には緑髪の男が答える。
「ああこれ? これは俺達の舞台演出に使う為の小道具。ここで昨日練習させて
貰って、それで置き忘れていたのを取りに来ただけなんだ。どうやら光が差し込んだのが
見えたってのも俺達の見間違いみたいだった様だし、もうここから引き上げるよ」
そう言いながら緑髪の男は卵を持ち上げようとする……が。
「……うお、重……」
「えっ……」
明らかに卵を持ち上げられない様子を見て、栗山も洋子も男達が不審人物であると確信した。
「あんた等……泥棒だな?」
「ち、違う。俺等は探偵だ!!」
「探偵? だったら何でそれが自分達の小道具だなんて嘘をつく必要があるんですか?」
洋子も栗山に加勢し、探偵だと名乗った2人は一気に口篭もる。
「そ、それはだなぁ……」
「怪しいですね。だったら警察を呼びましょうか?」
「く、くそっ! 一旦引き上げるぞ!!」
2人は素早く栗山と洋子の横を走り抜け、緑髪の男がスカイラインのドライバーズシートに、
白髪の男がナビシートに乗り込んで盛大にホイールスピンをさせながら港の入り口へと消えて行った。
「何だったんだ、あいつ等?」
「さぁ……? まぁ、とにかくこれで邪魔者は居なくなったんだ。さっさと卵を回収しよう」
だがその卵は1つでも5人がかりで持ち上げるのがやっとであった。
「お、おいー!? 重いぞこれ……」
『大丈夫だ、俺様に任せろ』
一旦真の姿に戻ったエルヴェダーは、自分の腹にあるポケットに卵を入れて再びビンの薬を胃の中へ。
そうすると、何と卵まで一緒に小さくなってしまっている!!
『と言う訳だ』
「原理は分からないけど便利な物だな」
岩村が感心した様に呟き、これで1つ目の卵の回収に成功した。
「よっしゃ、後はもう名古屋に用事は無いしさっさと東京に帰ってみんなと合流しよう」
博人がそう言って、5人と人間の姿のドラゴンはさっさと港から出て再び地下鉄に乗り金山駅から
名古屋駅を目指す。その港から出た5人と1匹の後ろを尾行し始める人影が居る事には、
この時誰も気がつく事は無かった。
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