Rescue request of a dragon第6話
その電話を受けたのは突然だった。
「はい、もしもし? ……あれ、久しぶりだな」
『こっちこそ久しぶりだ。今日は大事な話があって電話をしたんだが、今時間あるか?』
「ああ、あるけど。でも電話かけて来るのは珍しいな? 電話するのって何時も
こっちからだっただろ。何か嫌な予感がするんだが」
『そうだ。嫌な予感かもしれないが聞いて欲しい』
電話の相手はその男に、今起こっている事件の事を話した。
「何だよそれ。そんなジョークを言う男じゃないだろ、あんた」
『ジョークだったら俺は電話していない』
「……本当、なのかよ。こんな時代にまさか……」
『だからこうして電話した』
「でも、俺達はそいつ等とは関わり無いぜ。噂には聞いた事ある位で」
『そう、か……。でももし出会う事があったら尾行を頼む。それから後で全員分のデータを送る』
「ああ分かった」
電話を切っても、電話の相手から告げられたまさかの話に男はまだ半信半疑だった。
(何だってんだよ、全く……)
事務所のデスクをトントンと指でつつきながら、まぁ……良いかと男は仕事に戻った。
同じ頃、東京からモナコへ向けて旅立とうとしていた三浦由佳の携帯電話に着信があった。
「もしもし?」
『俺だ、ロバートだ』
「ロバート……?」
『ほらVSSEの』
その単語を聞いて、一気に由佳の身体がこわばった。
『……どうした?』
返事が無い事を問い掛けるロバートの問いかけが聞こえ、慌てて由佳は返事する。
「あ、ううん……ちょっと今VSSEって何だったっけって思い出してたから」
声のボリュームを上げた由佳は、それと同時に人差し指を唇に当ててスピーカーホンにする。
『ああ、それなんだが……って、スピーカーホンにしてるのか?』
「うん。今ちょっと騒がしい所に居るから聞こえなくて。それよりどうしたの?」
『実はだな、ドラゴンの事についてなんだけど……』
「ドラゴン……!?」
由佳は驚いた振りをしながら、スピーカーホン越しにロバートの報告を聞いていた。
VSSEが襲撃された事、ヨーロッパの5人が関係している事、逃げられて今VSSEが躍起に
なっている事等を全てだ。
「それで……何で私に連絡を?」
『御前達なら、その5人から何か連絡が来ているんじゃないかと思ってな』
そのロバートの予想に不自然にならない様に心がけて返答を由佳は返す。
「いや、来ていないわ」
『……そうか、分かった。もし連絡があったらそいつ等を捕まえる為に協力してくれ』
「うん、わざわざどうも」
電話を切った由佳だったが、周りの他のメンバー達ともう結託している為協力する所か
内通者になってしまっているのだ。
今35人とイークヴェスが居る所は先程と同じくまだ品川の倉庫街の一角である。
「当然だが、もうVSSEは動き出しているみたいだな」
「ええ。だったらとにかく迅速な行動あるのみよ。そしてこれでドラゴンとの縁も本当に
最後にさせて貰いたいわね」
周二の言葉に由佳も同調し、これからそれぞれ空港へと向かって出発しようと思ったが……。
「……あ、あのさ……ちょっと1つ思いついた事があるんだけど」
「え? 何?」
恐る恐ると言った感じで手を挙げた栗山に由佳が反応する。
「ドラゴン達を念話で誘導する事って出来ないのか? その……卵がある所に。
今はビンの影響で人型になっているみたいだけど、夜になって闇に紛れて卵の波動を
感じる所まで飛んで、そこからまた人間に戻ってみたいな感じで」
「ああ、それだったら俺達は別に行かなくて済むな……」
成る程と言う表情で真由美も同調する。
しかしイークヴェスは渋い顔をした。
『やれない事は無いが……念話も魔力が必要なのでな。休み休みなら何とか。それにあいつ等が
ちゃんと動いてくれるかどうか』
「そう、か……。だったらまずアクセスしやすい国のメンバーだけ先に出発しようぜ」
陽介の一言でメンバー達はすぐに出発準備を始めるのであった。
まず愛知県へ行くと言う事で、寄せ集めサーティンデビルズの5人が
他のメンバー達と別れて新幹線で品川駅から名古屋駅へ向かう。
「はぁ、着いたぜ……」
「岩村は愛知の何処の出身なんだ?」
「俺は一宮」
それを聞いて隣の静岡出身の大塚が頷いた。
「ああ、ほぼ岐阜県じゃん。名古屋は行った事あるのか?」
「結構ある。孤児院は岐阜だったけど、名古屋まで20分位の場所だったから」
と言う訳で愛知に詳しいと思われる岩村に道案内のリーダーを任せる事に。
「イークヴェスの奴、何処から卵の波動を感じるって言ってたっけ?」
「海の近くだったな。だから思い当たるのは名古屋港かな?」
「ならまずそこへ行ってみるか」
岩村は愛知は久しぶりなので、スマートフォンのアプリで地図を取り出しつつ調べる。
しかしこの判断が、この5人にピンチを呼び込む事になってしまう!!
「良し分かった、ここからならJRに乗り換えて金山駅まで行って、そこで地下鉄に乗り換えて
名古屋港駅って言うのがあるからそこで下りるんだ」
「ならすぐに行こうぜ」
と言う訳でJRと地下鉄を使って名古屋港駅まで向かった5人だったが、
肝心のドラゴンが居る区画の場所が分からない。
するとタイミングを見計らったかの様に、5人に念話が聞こえて来た。
『着いた様だな』
「イークヴェスか」
『ああ。そこにエルヴェダーが居る筈だから。港の入り口で待つ様に伝えてある』
「分かった」
博人が了解の意を返し港の入り口に行ってみると、確かにそこには赤髪に赤い目を
して首に白いスカーフを巻いて赤を基調とした服装の男が1人立っている。
「よう……久しぶりだな、赤龍」
『ああ。今回の件はこちらの俺様達の責任だ』
「全くだわ。それで……卵は見つかったの?」
博人が挨拶をしたエルヴェダーは何も変わっていなかった。そんなエルヴェダーに洋子が卵の行方を聞く。
しかしこの後、エルヴェダーから衝撃の告白が!!
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