Rescue request of a dragon第5話


「久しぶりだな、イークヴェス」

「ヨーロッパの5人も久々だな」

「ここまで来たんだし、日本を楽しんで……とも言えないな」

「明日はみんなで一旦集まろう。両替が出来ないんだったら幾らかあげるよ」

呼び出しに応じてやって来たのは寄せ集めサーティンデビルズのリーダー小野田博人、

Be Legendのリーダー坂本淳、Racing Projectのリーダー市松孝司、そして最後に

Master'sのリーダーハール・ドレンジーの4人だった。ちなみにSpeed Produceのリーダー

宝坂令次と、Destruction Performersのリーダー百瀬和美は仕事の都合で来られなかったと言う。


「で、何があったの? 一応断片的に念話で話は聞いたんだけどさ、

VSSEとの関係が悪化したらしいじゃん」

「そうそう、僕もびっくりしたよ」

淳とハールがそう切り出すと、5人を代表してアイトエルが事の顛末を話した。

「……と言う訳で、6匹とその卵を探す事になった」

「かーっ、何だよそれ。今度はこっちの世界中か?」

「向こうは全部で10カ国だったけど、こっちは200カ国近くあるからスケールが違うな」

博人は頭を抱え、孝司は苦笑を漏らすしか無かった。


うーんどうしよう、と考えていると、バラリーからこんな提案が。

「……確かイークヴェスは、卵の波動を感じ取る事が出来るんだよな?」

『そうだ。他のドラゴンの波動もある程度は』

「だったら、世界地図からでも調べられるか? ほら……あの超能力の番組みたいに」

「あ、成る程な」

ポンと孝司も手を打ち、急いで羽田空港の中の店で世界地図を購入してイークヴェスに

望みを託す事にした。


が、そのイークヴェスからは複雑な表情が読み取れる。

「……どうだ?」

サエリクスの問いかけにテンションの低い声で人間の姿のドラゴンは返す。

『読み取れる事は読み取れたんだが、非常に厄介だ』

「何で? まさか……」

『世界中にそれぞれ散らばっている様だ。卵も他のドラゴンも』

「ああ、やっぱりか」

博人の予想が当たり、更にその答えを聞いた淳ががっくりとうな垂れる。


腕を組んでこの後の予定をハールが立てる。

「となると、この年末の忙しい時期にまた部隊を分けなければならないか」

『すまない、迷惑をかける』

「全くだぜ。それで……何処から波動を感じるのかをこのペンで印をつけてくれ。

それと念話で、その波動を感じる所から動かないでくれとドラゴン達に伝えろ」

『勿論だ』

ハリドにそう指示され、イークヴェスは念話を飛ばした後に地図にハリドから借りた

赤ペンで印をつけ始めた。


「うわあ……」

「ああ、見事にバラバラだぜ……」

「あーあ、すっげーめんどくさそう」

「マジどうすんだこれ」

アイトエルもサエリクスも孝司も博人もがっかりした表情になる。

何故なら見事に日本、北アメリカ、南アメリカ、オセアニア、アフリカ、ヨーロッパと

卵の波動を感じる箇所がバラバラだったからだ。

「しかもアメリカに2つ……これが1番厄介だな」

「でもヨーロッパもヤバイだろ。VSSEの巣に飛び込むもんだぞ?」


それでもどうにかしなければいけないので、まずはこの1番近い日本の中で卵を探す事にする。

「あー、とりあえずさぁ、各大陸と日本の地図をそれぞれまた買って来てくれよ、博人」

「分かった。それでそこから調べるんだな」

そうして博人が買って来た地図の内、まずは日本の地図を調べてみる事に。

「東京だと良いんだけど」

希望を込めて呟いた淳だったが、空しくもその期待は裏切られる事に。

『ここだ……ここから強い波動を感じる』

「……東京じゃなかったか……」

イークヴェスが指差した場所には、愛知県の文字があった。


ひとまずその日はヨーロッパの5人がハールの酒屋の2階で、

イークヴェスは博人に連れられて彼のマンションで寝る事になった。

そして翌日の17:30に品川埠頭の人気の無い倉庫に集まった一同は

イークヴェスとの再会を果たした。

「世界中に卵が散らばっちゃった訳ね。そしてその道案内に私達が必要だと」

腰に手を当てて和美がぼやく。

「そして、その卵を全部集めたらどうするんです?」

令次の問いかけに、イークヴェスは深刻な口調で呟いた。


『それなんだが……以前、御前達が余達の世界から来た暴れん坊を退治した場所があっただろう』

「ああ、バーチャシティの」

グレイルの確認にドラゴンは頷いた。

『そうだ。そこから最も強い魔力を感じる……波動とはまた別の。そこに行けば何かが

分かるかもしれないが、今は卵の回収と他のドラゴンとの合流が先だ』

「またバーチャシティか……」

「しかもまた郊外のあそこだろ、その言い方だと」

「何でこうバーチャシティに縁があるのかな、俺等って」

洋子と和人と弘樹は以前にもそれぞれ事件に巻き込まれた事を思い出し、溜め息が自然とこぼれる。


同じく連も溜め息をつきつつイークヴェスに疑問を投げ掛けた。

「とにかく……まずはその愛知が1番近いって言うけど、俺達はまたヘルヴァナールの時

みたいに別々に行動していた方が良いのか?」

『そうだ。出来れば別々に行動して貰ってそれぞれのドラゴンにまた会いに行ってくれ』

そしてアレイレルからはこんな疑問も。

「何処にどの色のドラゴンが居るのかって言うのは分からないのか?」

『そこまでは分からない。しかし別に波動云々は今回の事には関係無いから、ただ単に

こちらの人間に協力を頼みたい、それだけだ』


それを聞いていた藤尾がこんな一言を。

「それが関係無いって言うなら、愛知に行くチームは決定していると思うけど」

『何?』

「そっちの5人が1番適役だろうよ」

藤尾の目線の先には寄せ集めサーティンデビルズの5人が。

「何で俺達なんだ?」

「だってほら……愛知出身の岩村が居るし、その隣の静岡は大塚だろ」

栗山の問い掛けにそう返した藤尾により、愛知へ向かう5人が決定した。


「それじゃあ、後は何処にどのチームが行くかを決めよう」

ジェイノリーの一言でチームの振り分けが始まった。

「えーとまずはオセアニアの……ここはシドニーか?」

そのサエリクスの確認に1人の男の顔が変わる。

「あれ……俺の地元に近いじゃないか」

「そう言えばそうだったな。それじゃあRacing Projectの5人はオセアニアだ」

グレイルの地元と言う事でRacing Projectの5人はオーストラリアへ向かう。


「次にここは……南アフリカのケープタウンだ」

「アフリカって誰か行った事あるのか?」

浩夜の疑問に1人だけ手を挙げるが……。

「俺は傭兵時代に何回も行った事があるけど、俺愛知のチームだし」

「そっか、じゃあそっちは俺達で行くとしよう」

栗山が手を挙げるも彼は愛知行きが決まっているので、European Union Fightersの

5人がケープタウンへと向かう事になった。


「こっちは俺達の地元のヨーロッパだな。そしてここは……モナコか」

「ヨーロッパに詳しいのは和美と弘樹だけど」

その橋本の意見に手を挙げたのは弘樹だったが……。

「俺は確かにまだそっちの言語を話せるけど、ここは和美達が良いと思う。だって

和美は現役でヨーロッパの会社と取り引きの橋渡しをしてるから、そっちの事情に詳しいだろ」

「えっ……え?」

きょとんとする和美を尻目に、ヨーロッパ行きはDestruction Performersの5人に決定。


「ブラジルのここは……サンパウロだ」

「サッカーの国だな。ここは誰か詳しい人は……居ないか。ならサッカー繋がりで

弘樹の……と思ったんだが止めた。南半球繋がりでディールの属するチームで良いか?」

「はっ!? な、何で?」

ハリドの提案に声を上げたのは弘樹だったが、ハリドは冷静に理由を告げる。

「それなんだがな、残りのアメリカ2つはどう考えてもMaster'sとSpeed Produceなんだ。

まずMaster'sは北アメリカ出身が2人居るだろう。そして最後のアメリカの波動がバーチャシティ。

俺達もバーチャシティで事件に巻き込まれたけど、Speed ProduceもMaster'sと

同じくバーチャシティで事件に巻き込まれた。となればバーチャシティを知り尽くしているのでは

無いかと言う事を考えた上でのこの振り分けだ」

そのハリドの理由にその場のメンバー全員は何も言えず、この振り分けで年末の面白くも

何とも無い旅行がスタートするのであった。


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