Rescue request of a dragon第4話
ロシアドリフトシリーズでは日本人選手も実は多数参加しており、
この9人の参加も珍しくは無かった。その中で絶妙なコントロール
テクニックを見せ付けた仁史が6位、パワーで圧倒する西山が11位、
ステージアで成績こそ振るわないが多くの観客の目を奪った木下が
ベスト32とまずまずの成績で幕を閉じた。
「何か、ロシアってこんなレベル高かったのか?」
「ああ、どうやらそうらしい。まぁ頑張ったよ、うんうん」
まずまずの成績で日本人軍団の一部は日本へと戻る事になったのだが、
ウラジオストック市内にホテルを取ってあるのでそこへと向かって夕食を摂る事に。
「え? このまま別の大会に出るのか?」
どうやら日本へとそのまま戻るのは名古屋の5人だけの様で、由紀と隆と木下の
街道トリッカーチームは続けてバーチャシティのフォーミュラD最終戦に出るらしい。
それから仁史はオーストラリアへ、真治とスティーブの2人は何とそのまま
ヨーロッパへ飛んでモナコへと年末なのに旅行へと向かうらしい。
「そう、か……」
「結構忙しいんだな。まぁ、とりあえず今は飯にしよう」
ロシアと言えば酒ならウォッカで余りにも有名だが、料理ならボルシチや
ピロシキ、ビーフストロガノフが日本でも聞き慣れた料理とされている。
「流石にキャビアは出ないな」
「まぁ余り高いホテルでも無いからね。とりあえずRDSお疲れー」
「お疲れさーん」
戦いを終えた9人と応援団はそのままホテルで残念会を開き、夜中まで
酒と食事を楽しみベッドへと入る。
そうして帰国の日は夕方の飛行機を取り成田空港まで向かう。更に
そこから名古屋の5人は成田から中部国際空港まで、街道組の3人は
バーチャシティまで、仁史はオーストラリアまで、そして残りの2人はフランスまで
行ってそこから更にモナコへ更に乗り継ぐので結構大変だ。
「何だかんだで楽しかったわね」
「ああ、スポット参戦だったけど来年もまた参加するか」
「俺はフルで参加するか!」
「俺も機会があればスポットで出てみるかな」
由紀と中村と星沢とスティーブがそんな事を言いながらチェックアウトする。
そうして夕方の飛行機で成田までおよそ3時間のフライトで日本へと帰国。
日本から1番近いヨーロッパと言っても過言では無いのもまた魅力の1つであった。
「それじゃあ、俺達はここでだな」
「ああ、来年もまたRDSに参戦しようぜ」
「日程が合えばな」
成田空港でこのまま別れ、後はそれぞれの行き先へと向かう事になった。
だがその成田空港からずっと離れた羽田空港の新整備場においては、黒いドラゴンが
ヨーロッパの5人と共に着陸していた。
「魔術って凄いな」
「ほんとほんと。向こうじゃ実感できなかったけど魔術サマサマだ」
「そうだな。で、ハリド……これからどうする?」
「とりあえず、日本の知り合いの何人かに念話をしてくれ。後は待ち合わせよう」
『分かった』
ハリドは携帯電話からメールを出すのでは無く、イークヴェスに念話を頼む。VSSEに
メールの送受信記録から居場所を特定されたりでもしたら厄介だからだ。それにしても何故
アメリカへ向かった筈の5人がこの日本に居るのかと言うと、まずはアメリカへ行くと見せかけて
日本へ飛んだ方が良いんじゃないかと言うジェイノリーとバラリーの提案だった。
そして、魔術を使ってヨーロッパからアメリカ周りで約1日以上の飛行でも風も揺れも感じない様に
イークヴェスがしてくれたのだ。イークヴェス曰くこれも魔術の一種らしいが、結構魔力の消費も
激しいので余り多く回数を使う事が出来ないらしい。それでも、これで5人はイークヴェスの上で
寝る事も出来たしパスポートやビザの問題も何も無く日本へと入国する事が出来た。勿論
目立たない様に陸地から遠く離れた太平洋の上を飛び、更に黒いドラゴンの為に夜を狙って
着陸した。その上イークヴェスは更に自分の気配を極限まで消す事の出来る魔術を使って、
しっかりと万全の体制で日本へと入国したと言う訳であった。
「都合良すぎるな、全く」
「ああ、俺達の世界じゃ到底不可能な事ばかりだぜ」
アイトエルとサエリクスも驚きの感情を隠せなかった。そうして念話で連絡を取った後は、
まず羽田空港のターミナルビルまで20分程歩いてそこで待ち合わせる事に。
本当はユーロを日本円に両替したかったのだが、パスポートが無いと無理なので日本の
知り合いを頼るしか無いのであった。
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