Rescue request of a dragon第36話


と言う訳でホテルに泊まった翌日はあえて観光を楽しむ事にして、

それからその日の真夜中に再度港へと向かう。その途中で真由美が

納得した様にこんなセリフを言い出した。

「そうか、考えてみればどっちにせよ俺等はこのバーチャシティに泊まらなければいけなかった訳か」

「そうですよ、俺等はここでドラゴンや他の皆さんと合流する為にも待ってないといけないんですから」

令次はそれを見越してホテルに泊まる事を指示したのである。メンバーやドラゴン達と

合流せずにこのバーチャシティを出てしまっては何の意味も無いし、そもそもこの世界中を股にかけた

大事件の最終的な決着は、このバーチャシティにあるあの軍事基地跡でつけなければいけなかったからだ。


そうして真夜中になって、この港は静まり返っているがその方が5人にとっては好都合だ。

夜になって人の目が無くなった事で、最初に来た時よりも更に広いエリアを見る事も

出来る様になった。

「良し、それじゃあまた5人で手分けして探しましょう」

「分かった」

令次の指示で港を探し回るが、その結末は意外とあっけ無く終わってしまう。


「おい、見つけたぞ!!」

その卵を発見したのは明だった。昼間は人の目が在り過ぎて踏み入る事が出来なかった

ゾーンのコンテナの陰に立て掛ける様にして存在していたのだった。

「あー、ここじゃ確かに人気が多かったし無理だな」

「それじゃあ後はこの卵を運ぶだけだな」

そうして岸と明で卵を持ち上げようとしたが……。

「……あれ? これ……くくっ、す、凄い重くないか……?」

岸が唖然とした声を出すのも無理は無かった。明と岸の2人掛かりで持ち上げられない。


それ所か、5人全員の力でも駄目だった。

「うっわ、何だこれ!? こんなにドラゴンの卵って重いのかよ!!」

弘樹が思わず叫ぶ位に持ち上げられない。

「でも、これをどうにかしてあの軍事基地まで持っていかないと……」

「それでもまず持ち上げられない事にはどうしようもねぇよ」

しょうが無いので持ち上げるのでは無く、卵は球体だから転がるのでなるべく

衝撃を与えない様にして転がす方法を取った。


が、そんな5人の元につかつかと複数の足音が歩み寄って来るのが聞こえて来た。

「……!!」

「だ、誰だ……?」

「まさかバーチャコップ……!?」

素早く卵と共にコンテナの陰に身を潜め、その足音の正体を陰から窺う5人。

しかし5人の目の前に現れたのは思いもよらない人物達であった。


「重たいならこいつに運ばせろよ」

「そうそう、それって重たいから人間の力じゃ無理だぜ」

「えっ……!?」

驚きの声を上げる令次達の目の前に現れたのは、同じくアメリカにやって来ていた

Master'sの5人と人間の姿になっているタリヴァルだった。

『波動を感じたからこうして来てみれば……確かにそれは人間の力では無理だ。我が持つ』


「で、でも何でMaster'sのみんなが?」

そう聞いた岸に答えたのはMaster'sのリーダーのハール・ドレンジーだった。

「もうこっちは終わった。VSSEのエージェント達も退けたから。さぁ、卵はタリヴァルが」

そうしてドラゴンの姿に戻ったタリヴァルはその白いボディを目立たせない様に、卵を

腹のポケットに入れて大空へと飛び立つ。

そしてMaster'sの5人と一緒にジャンボタクシーを2台呼んで貰い、一旦ホテルへと5人は戻る事にした。

勿論そのタクシーの中で今までの経緯をお互いに聞いておく事も忘れない。


その翌朝には5人もホテルをチェックアウトして、Master'sの5人と市街地で合流して

再びジャンボタクシーを使ってあの軍事基地跡へと向かう事に。

「タリヴァルは先に向かうって」

「なら俺達も急いで合流しよう。他のメンバーも気になるけどな」

明の言葉に他の9人も頷き、いざジャンボタクシーを呼んで乗り込んだ10人はそのまま

ようやく軍事基地跡に辿り着いた。


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