Rescue request of a dragon第33話


一旦港から撤収した5人はバーチャシティの市街地に向かって歩き出す。

そうして久しぶりのバーチャシティを観光しながら楽しんでいたのだが、

真由美と明がゲームセンターへ行きたいと言い出したのでそれならばと立ち寄ったのである。

そこで真由美はすぐに、あるゲームの元へと進んで行く。

「お、あったあった。バーチャファイター!」

「日本でも出来るだろ」

「こっちのプレイヤーの実力を見たいんだよ」


真由美は硬貨を入れて迷い無くサラ・ブライアントを選択。

「1からずっとサラ使いだからな、俺は」

そんな事を呟いた真由美に今度は岸が同調する。

「ああー、だから真由美の足技も何処と無くサラっぽいのか」

「……どう言う事だ?」

バーチャファイターに興じる真由美の後ろで弘樹と岸の会話が続く。

「いやあのね、真由美はサラと自分を重ね合わせてるみたいなんだよ。今の

5作目のサラはマーシャルアーツの使い手で、足技が豊富になった。

公式サイトのバックグラウンドストーリーでも、トレーニングを行って足技を

中心とした戦闘力を一段と高めている……って書いてあったから」


そんな岸の解説が続く中、真由美は乱入対戦で3連勝していたが4戦目で

空手使いのジャン紅條を使うプレイヤーに苦戦している。

(くっそ、強ぇ……)

打撃投げ抜けや体内避け投げ抜け等の必須テクニックは勿論、コンボまで

やり込んで暗記しているサラ使いの真由美も苦戦する程の相手。

その相手を一目見てみようと、岸と弘樹は真由美の向かいの台に座るプレイヤーの元へ。


だがそのプレイヤーの後ろでは自分達と同じく、プレイヤーの連れと思われる

男女がジャン使いのプレイを見ていたのである。

1人は緑の髪の毛をした見た目が物凄く若い女。そしてもう1人は水色と

茶色の2色の髪の毛をしている背の高い男。更にプレイヤーの男は後ろ姿しか

今の所見えないが、結構がっしりとした大柄な体躯で茶色とオレンジの髪の毛である。

「3人とも髪の色派手じゃないか?」

「弘樹に言われたくないと思うぜ」

岸は冷ややかな目で、黄緑色の髪の毛をしている弘樹の意見を一蹴する。


そうこうしている内に勝負は何と5ラウンド目までもつれ込む。どうやらこの店は

対戦に関してはフルラウンドの設定らしい。

泣いても笑っても最終ラウンド。ここに来て真由美は冬だと言うのにかなり

ヒートアップしているらしく、上着を脱いで腕まくりまでして最終ラウンドに挑む。

目にも留まらぬ速さでコンボを繰り出し、ガードに関しても抜かりはない。車の走らせ方と

同じ様に攻めすぎる嫌いはあるものの、防御する時はしっかりとブロックして体力ゲージの

減りをなるべく防ぐのは流石熟練のプレイヤーと言える所だろう。

「……目がマジだ」

そのプレイを見ていた明もそう呟かずには居られなかった。


だが5ラウンド目でジャンが投げようとして来たので投げ抜けで回避しようとしたのだが、

疲れからか抜けるタイミングが少しずれてしまう。その少しだけ、のミスが切っ掛けで

投げられてしまい、そのままリングアウト負けを喫して真由美の敗北となってしまった。

「ぬああああっ、くそぉおおおおおお!!」

腕まくりまでして気合を入れ、ギリギリの勝負だっただけに本人の悔しさは半端無かった。

すると、悔しがる真由美の元にジャン使いのプレイヤーが反対側の席からやって来る。

「……この街にも、まだこんなバトルが出来る奴が居るとはな……」

そう言いながらその男……どうやら顔つきからアジア人らしい彼は右手を差し出して来た。

「お、おう……あんたも強かったぜ」


真由美と男はがっちり握手をかわしたが、令次は何となくその男に違和感を覚える。

(あれ、この人……)

だがその違和感の正体について記憶を辿る前に、びっくりした様な声が男の連れから出て来た。

「お前……もしかして、迅帝か?」

「えっ?」

自分の事を通り名で呼ぶとなると、レース関係の人間しか思い浮かばない。

「俺の通り名を知っているって事は……って、あんたは!」

令次もその男の驚くべき正体に気がつくのであった。


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