Rescue request of a dragon第32話
それぞれが品川の倉庫から、目的地である波動のポイントへ向かった時まで
さかのぼり、アメリカにある近未来都市として名高いバーチャシティに日本から
この5人が一足先に到着していた。
「俺達は3回目か」
「ああ……でもここに集まるんだろ?」
「そうそう。で、俺等はここの担当だ」
「またバーチャシティに来てしまったぜ、俺達」
「そうですね……。願わくばトラブルなんて起こらない様にしたいです」
バーチャシティにやって来たのは、この都市において爆弾付きのベストを着させられて
犯罪行為をさせられたものの、リーダーの機転によって爆弾を解除出来ただけでは
無く犯人逮捕まで協力してしまったと言うSpeed Produceの5人だった。
「それで俺達の所は……波動が1つだけなのか?」
弘樹がバーチャシティの紙の地図を見ながら疑問を持つが、その弘樹と
長年のライバルであり良い関係の真由美がこんな予想を立てる。
「恐らく、ドラゴンか卵かどっちかがあるんじゃ無いのか?」
そこに岸と明が入って来る。
「どっちにしても、僕等はその波動の所まで行かないといけない訳でしょ」
「ああ。でもこれを見る限りは郊外だから時間が掛かりそう」
そんな4人の会話をリーダーの令次が纏める。
「それでもここまで来てしまった以上、俺達は行くしか無いんですよ」
その令次の一言でこのバーチャシティでの波動の探索がスタートしたのだが、
のっけから顔見知りに会ってしまう事に……。
「それで、その波動がある場所って言うのは?」
「ええと確か……ああ、これだ」
真由美に問われた弘樹が地図を出し、それでもう1度場所を確認する。
「ここは港だな……あの時の事件の港だぜ」
「ああ……」
あの爆弾ベストを着けられ、弘樹のRX−7と令次のインプレッサで映画
「スピード」まがいの事をさせられたのは先月上旬の事だから記憶に新しい。
「そうか、もう12月も上旬なんだもんな」
「年末でしっかりと、全てに決着をつけさせて貰いたいぜ」
岸と明がその事件を思い出しながらしみじみと呟く。
と言う訳でまずはその港へと向かう事にした5人だったが、いざ港についてみると
何処へ向かえば良いのか分からなくなってしまった。
「あれ……、この波動の場所がアバウトすぎるぜ」
「あーほんとだ。それじゃあ手分けして探そう」
「ああ、それが良いかもな」
真由美、弘樹、明の3人がそう言い出した事がきっかけで手分けして卵を探し始めたのだが、
事前に卵の特徴を聞いていてもなかなか見当たらない。
(確か卵の特徴としては……腰ぐらいの高さまであって、白い殻で覆われている卵か。
となれば普通の卵を少し大きくした感じだな)
そう心の中で予想を立てつつ港を探し回る令次だったが、港が大きいせいで手分けして
探しても時間が掛かりそうだ。
結局令次はそのまま20分近く歩き回ったが、卵を見つける事は出来なかった。
「どうだ、見つかったか?」
「いえ、こっちはありませんでした。明さんの方は?」
「俺も全然だ。この3人の方も見つからなかったって話だし」
メンバー全員が合流して、その時初めて卵が見つからないと言う事実が発覚。
「本当にこっちなのかよ?」
「おっかしーなー。イークヴェスはこっちだって言ってたし、実際にこうしてチェックまでつけて
くれたからそれを信用するしか俺等には頼る術が無いんだけど」
後はイークヴェスの声が聞こえて来るのを待つしか無さそうだと5人は一旦諦めかけたが、
ここで真由美がある事に気がつく。
「なぁ、俺思ったんだけど」
「ん?」
真由美に反応した岸を見て当の本人が続ける。
「港の中って言うのは何も通路やコンテナの間と間だけじゃ無い。もしかしたら
何処かこの港の倉庫の中とかにあるんじゃないのか?」
「あっ、そうか! それだったら見つからないのも頷けるぜ」
明がポンと手を打ってその真由美の意見に賛同する。そう言う事であれば
今はまだ昼なので深夜にまた来る事にして一旦ここは引き上げる。
「しょうがねぇ、何泊かするっきゃねーな」
「ここまで来たんだし、せっかくだから観光でもして行こうぜ」
「ええ……前回はあんな事がありましたから」
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