Rescue request of a dragon第31話


突然、空がざわめき始めたかと思うと何処からかバサバサとした音が聞こえて来る。

「な、何だ……?」

(何の音だ?)

クロードとリチャードが同時にその音がする方向を見上げてみると、そこには

こちらに向かって急接近して来る黄色いドラゴンの姿が!

「うわっ!?」

「うおお!!」

「くそっ、またドラゴンか!!」

「全員戦闘準備!!」


ウェズリーもアランもロバートもキースもすぐに武器を構えようとしたが、ドラゴンは一旦

地面スレスレを飛んでから上空に向かって縦に1回転し、そこから中庭の土の地面へ

ドスンと降り立って大きな咆哮を上げる。

その黄色いドラゴンは勿論10人にとって、特に和美と橋本の2人にとっては異世界で

自分達が武術を教える役目であったので他のメンバーよりも親密な関係になっていた。

「ぐ、グラルバルト!?」

「何で……?」

『待て! ふぅぅぅぅぅううううううう……はあぁっ!!』


着地して来た黄色いドラゴンのグラルバルトは、大きく前足を上げてから気を込めて

その前足を力一杯地面に叩き付ける。

するとそれだけでグラグラと地面が揺れ、VSSEのエージェント達は姿勢を崩したり

後ろに衝撃で転がったりしたので凄いパワーである。

異世界ではその攻撃を何回も10人は見て来たのであらかじめ踏ん張って何とか

体勢を維持していたが、名古屋の5人とクロードと他の3人は踏ん張り切れなかった。

「ぬおおっ!?」

「ぐうっ!」

「うわわわっ!!」


その間に今度はグラルバルトがポケットからあのビンを取り出して、それを空中から

セルフォンの口目掛けて投げ入れた。

『そらっ!!』

上手くそのビンを口でキャッチして飲み込んだセルフォンは人間の姿になり、

鎖を易々と抜け出してまずは和美と孝司のロープを解く。

次に和美と孝司も協力して他のメンバー達のロープを解き、体勢を立て直して

こちらに向かって武器を構えるVSSEエージェント達の姿を目で捉えたが、和美の目には

アランがセルフォンに向かってグレネードランチャーを構えているのが見えた!!


「危ない!!」

和美が咄嗟にセルフォンを突き飛ばしつつ彼と一緒に地面に転がり、

セルフォンを狙っていたアランのグレネードから間一髪で救出。

『やってくれたな!!』

セルフォンはそう言いながら本来の姿に再び戻り、咆哮を上げつつ

少しだけ飛び上がると同時に翼を激しくバサバサとはためかせる。

それによって今度は突風が巻き起こり、再度エージェント達と協力者達の

体勢が崩れる。


『今だ、乗れ!!』

着陸しつつグラルバルトがそう叫び、素早く5人ずつチームごとに分かれて

和美達はグラルバルトの背中に、孝司達はセルフォンの背中に乗り込む。

そのまま銃撃を回避しつつ大空へと飛び立つ2匹のドラゴンだったが、

何故グラルバルトがここに現れたのだろうと言う疑問が10人には当然の

如く湧き出て来ていた。

「た、助かったぜ……それにしてもモナコで別れた筈なのに、何でここに?」


その疑問を口にした哲にグラルバルトはこう答える。

『御前達と別れた後、そのまま魔力の湧き出ている場所に向かっても

良かったのだが……何か只ならぬ予感がしたんだ。だから御前達の後を

追いかけてみようと思ったら車に乗って連れ去られて行く所だった。

ならばと思ってすぐに元の姿に戻り、簡単に人間に姿を見られない様に

はるか上空から御前達の行く先を目で追っていた』


「それで私達を追いかけて来て、中庭でああして捕まってたから助け出すチャンスを

窺っていたと?」

それの続きを由佳が尋ねると、グラルバルトはこくりと頷いた。

『そうだ。あの建物の近くで人間の姿に戻りたかったのだが狭くて駄目だし目立つと

思ったから、一旦場所を覚えてから人気の無い場所で変身し、何とか潜入して

こうして助け出す事が出来た。間一髪だったな』

「本当にどうもありがとう。あなたは命の恩人……じゃなくて、恩ドラゴンね」

『それもそうだ、私は人間では無いからな』

寸前で言い直した和美に納得しつつ、グラルバルトはセルフォンと共に合流ポイントの

バーチャシティへと羽ばたいて行くのであった。


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