Rescue request of a dragon第26話


そんな2人の表情を見たウェズリーが銃口を向けながら口を開く。

「何故、と言う顔をしているな」

それに答えたのはMaster'sのリーダーのハールだった。

「ある程度の予想はつくよ。恐らく、空港でのチケット購入者リストの中に

僕等が居ることを調べたんだろう。それでこのロサンゼルスへ飛ぶって分かって、

ヨーロッパにあるVSSEの本拠地からヘリコプターか飛行機かを使って

やって来たって所じゃないの?」

「でもそこまでは良いにしても、何でここに来る事まで分かったのかが分からねぇ」


ハールに続けてそう疑問を持った和人に、アランは鼻で笑って答えを出した。

「俺達もな、どんな物を追ってここまで来たのかが知りたかった。だから俺達は

空港に着いてあんた等を見かけていたんだが、あえてそこでコンタクトを取らずに

ここまでこうして追いかけて来たって訳さ。警戒心が薄くて助かったぜ?」

世界の脅威を排除する為のエージェントである筈のアランが、凶悪な笑みを

浮かべてじりじりと5人にウェズリーと共に近付く。

「動くなよ。動いたらバーン!! だぜ?」


笑みを絶やさないまま目だけが笑っていないアラン。しかしそれに意外な言葉を

ハールがぶつける。

「それって、僕等に対して言ってるの?」

「当たり前だろう、御前達以外に誰が居る?」

若干呆れた表情をしながらもウェズリーも更に近付いて行く。すると今度は恵が

意味深な言葉を吐き出して来た。

「ふぅん……だったら私達はこのまま動かなければ良い訳ね」

「? どう言う意味うおぉ!?」


そこまでアランが言い掛けた時、何者かがいきなり襟首を掴んで2人同時に

VSSEのエージェントを持ち上げる。

「なっ!?」

まるで悪さをした猫の様にVSSEの2人は持ち上げられ、状況が飲み込めない内に

ハールとアレイレルがそれぞれのハンドガンを回収する。

『その理屈なら、我はこうして動いて大丈夫と言う訳だな』

「助かったよ、タリヴァル」

「後ろから歩いて来た時、表情を変えない様にするので精一杯だったぜ」


「な、何だてめぇ!?」

「下ろせ!」

じたばたともがくアランとウェズリーに、人間の姿の白いドラゴンであるタリヴァルは

冷たい一言を残酷に投げつける。

『まだ駄目だ。さぁ、ここは我に任せて早く行け』

「ええ、ありがとうタリヴァル!!」


そう恵が答えて、卵を持ってひとまずここから離れようとするが……。

「お、重てぇ!!」

「うぐぐ、何だよこれ!?」

「5人がかりでもだ、駄目だ〜」

何と卵が重くて持ち上がらない。これじゃあ移動しようにも移動出来ない。

『ううむ、困ったな……それじゃあちょっと待っていろ』

そう言うとタリヴァルはそのままアランとウェズリーを持ち上げたままドラゴンの姿に戻ると、

バサバサと何処かへ飛んで行って3分後にまた戻って来た。


「お帰り。あの2人を捨てて来たの?」

『ああそうだ。捨てたと言うより道端に置いて来た。すぐには戻って来られないだろう。

さて、我にビンの薬を飲ませてくれないか?』

「お、おう……」

恵の問い掛けに反応するタリヴァルに戸惑う流斗が、ドラゴンの腹にあるポケットに

入っているビンの薬を飲ませて再び人間の姿へと戻らせた。

「これ、どうする?」

「ここに置いておこう。持ってても使わないし」


次にVSSEの2人が持っていたハンドガン、スミス&ウェッソンのSW99を如何するかと言う事を

アレイレルが尋ねてハールがその答えを返し、またVSSEの連中がやって来ない内に

さっさと卵をタリヴァルが持ってここから退散する事にした。

「これめっちゃ重いぜ。ドラゴンはやっぱ人間の姿でも怪力なんだな」

そう感想を漏らす和人にタリヴァルは冷静に答える。

『ああ……まぁ、向こうで騎士団員達と手合わせする時は力を抑えていた。そのままの力だと

全然こっちが有利だからな。それはそうと何故こんな状況になっているんだ?』

「それ、こっちが聞きたいよ……」

最もな答えをハールが返し、5人はまずタクシーを呼んでからタリヴァルと別れて合流ポイントへと

向かう為に空港へと向かうのであった。


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