Rescue request of a dragon第23話


「それで……あんたは一体誰だ?」

周二が尋ねると、男は奇妙な事を言い出した。

「あれ、俺の事を覚えて無いのか?」

「えっ?」

「ああそうか、RPバトルの人間だから余り面識が無いのか」

「RPバトル……?」


懐かしい単語を聞いて5人はこの男がC1グランプリの関係者だと

言う所までは分かった。しかしその先が分からない。

「C1グランプリに出てたのか?」

「ああ。黄緑のS14に乗っているんだが。得意なのはドリフトバトルだ」

「ドリフトで黄緑のS14……あっ!」

「ようやく思い出したって感じだな」

声を上げた橋本に男は笑みを浮かべる。

「まさか……イリュージョンBか? C1外回りの」


その通り名を聞いて、他の4人も彼の事を思い出した。

「あ、ああ〜……確かドリフトの人気が凄い高いって聞いた事がある」

「そうそう、初心者は相手にしない事で有名だぜ」

「環状線だとかなり有名だが、ドライバーの顔までははっきり覚えていないよ」

「そう言えば居たな」

孝司もグレイルも兼山も周二も全員が彼の事を思い出した。

「本名はえーと……」

「谷本仁史だ。この際だからまとめて覚えてくれ。ちなみに俺、あんた等の知り合いの

ハードウェポンこと栗山祐二とは同じ警備会社の同僚だよ」


それにしても、何故仁史とセルフォンが一緒に居たのであろうか?

『某は道に迷っている途中にこの男に話しかけられてな。ここまで一緒に来て貰った』

「そうか……俺等の仲間が迷惑をかけたな」

「いや別に。ところで、これからあんた等は観光に行くのか?」

「ああそのつもりだよ」

「へえ、そうなんだ。何処に行くんだ?」

「あー……特に決めてはいないんだけど」


孝司が頭を掻きながらそう言うと、仁史はこんな提案を出して来た。

「だったらよ、俺と一緒に海の玄関口のサーキュラーキーに行かないか?」

「えっ?」

「サーキュラーキー……だと?」

実は仁史の提案は余り嬉しく無かった。何故なら次の波動を感じるスポットが

そこにあるので仁史と一緒だと卵を回収し難くなってしまう。

「あー、悪い。実はもうそこに行って来たんだ」

「ああそうなのか、だったらしょうがないな」


と言う訳で仁史とはそこで別れたが、5人は嘘も方便と言う事でまだ1度も行っていない

サーキュラーキーへと足を運ぶ。

シドニーでも屈指の人気観光スポットであり、観光客の数も勿論トップクラスだ。

クルーズ船等が停泊するだけで無くシドニー・ハーバーブリッジと言う観光スポットもあるし、

オペラハウスも有名なスポットの1つだ。

そんなサーキュラーキーで波動を感じるスポットをセルフォンに聞いてみると……。

『向こうの方だよ』

「あっちはミセスマッコーリーズ・ポイントか」


ミセスマッコーリーズ・ポイントは、ロイヤル・ボタニックガーデンと呼ばれるオーストラリアで

最も古い植物園の東側にある突き出た岬の事だ。

ハーバーブリッジとオペラハウスがまとめて撮影出来るスポットとして知られているので、

シャッターをセルフォンに頼んで記念撮影。

「何か、マジで旅行しに来た様だな」

「ああ。波動も近いのか?」

『うむ、某が感じるのはもうすぐそこだ』


そのセルフォンの言葉通り、エリザベス・マッコーリーの為に岩を削って出来たベンチの

ミセスマッコーリーズ・チェアの隅にそれは隠れる様にして存在していた。

「これが卵だな」

『ああそうだ。これで某達の目的は達成されたな』

「ならもっと観光したいけどそうもいかないから空港に向かおう。集合ポイントへ向かうんだ」

なのでセルフォンには卵の運搬を任せる為に集合ポイントへと夜を待って飛んで貰い、

一足先に5人の人間が集合ポイントへと向かう為に空港へと歩き出そうとした……その瞬間。


「何だ、やっぱりこう言う事だったのか」

「へ?」

聞き覚えのある声の方に振り向けば、そこには腕を組んだ仁史の姿が。

「あれっ、何でここに居るの?」

橋本が素で疑問の言葉を口に出すが、仁史は腕を組んだままその質問に質問で返す。

「それはこっちのセリフだ。俺に嘘をついてまで捜し求めていた物は、やっぱりその卵だったと言う事だな」

「な、何の事だよ?」

動揺しながらもそう返す兼山だが、仁史はさっきセルフォンと一緒に居た時にはつけていなかった耳の

インカムに対して話し始めた。

「俺だ……証拠はこれで揃ったよ。後は任せるぜ」


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