Rescue request of a dragon第21話
「本当だな。しかし長い人生なら1度や2度こんな事があっても良いか」
スティーブは微笑を浮かべながら右手を差し出す。それを見て真治も右手を差し出して来た。
「お? おお、奇遇だけど良い話も沢山聞けたよ。楽しかったぜ」
右手を差し出された事でほぼ反射的に握手に応じた哲と藤尾だったが、そんな2人の手首に
次の瞬間ガチャリと黒い手錠がはめられた。
「……え?」
「あれ?」
何が起きたか頭の処理が追いつかない2人の口に、今度は甘い香りのする布が押し当てられて
意識がブラックアウトする。
「なっ……!?」
咄嗟に残りの3人が2人に向かって駆け出すが、和美だけは後ろから物凄い力で
羽交い絞めにされて側頭部に黒い銃口を押し当てられる。
「動くな。先に言っておくが俺は警察だ」
「はっ……?」
何とか和美は拘束を解こうとするが、後ろから聞こえて来た低い声の主もかなりの
手練(てだれ)の様で和美の抵抗を許さない。
「おいそっちの2人、この女の命が惜しかったら俺達について来るんだ」
その男の声と、和美が成すすべなく捕らえられた姿に由佳と永治が唖然としている内に
真治とスティーブが後ろ手に素早く手錠を使って2人を拘束した。
「な、何よあんた達!!」
「くそっ、やっぱりVSSEか!!」
その由佳と永治の叫びに答えたのは真治とスティーブだった。
「ついさっきの話だがな」
「どう言う事よ!?」
「食事をして別れるまでは味方だったが、今はもう違う。さぁ来るんだ」
そうして連れ込まれたのは、手近に停めてあるカングーバンの荷物室の中だった。
その中に狭いながらも全員で乗り込み、更に藤尾と哲が文字通り叩き起こされる。
「痛てっ!! な、何だよお前等、俺達をどうする気だ!?」
「心配するな。別に俺達に従ってくれれば何もしない」
真治は淡々とした口調で哲に言うが、無表情なのが恐怖をそそる。その横で黒髪の
白人がノートパソコンを使って画面を見せて来た。
「これを見てみろ。御前達の事だろう?」
「えっ?」
戸惑いながらも突き出されたノートパソコンの画面を見た由佳は愕然とする。
そこには自分達のデータが顔写真と共に映し出されているでは無いか。
「ええっ、な、何よこれ!?」
「俺も前にVSSEとは少し関わった事があってね、その縁だよ。御前達のここからの
行き先を調べるのにそう時間は掛からなかった」
口元を緩ませる白人に永治がパソコンの画面を見てある事に気がつく。
「あんた一体……ん、STF……?」
画面の左上にその3文字のロゴが映し出されており、何処かで見た覚えがある様な……と
永治は必死に記憶を手繰り寄せる。
が、先に白人の正体に気がついたのは藤尾だった。
「あっ、まさかあんたは10年前位にゲームになっていたスペシャルタクティカルフォースの人!?
スコットランドヤード警察の特殊部隊の隊長で、名前は確か……」
「御名答、クロード・マクガレンだ。今はあの時からもう少し上に昇進しているがな」
その名前を聞いて残りの4人も男の正体を思い出す。
「ああ、何か番外編みたいな形で出てたあれか……」
「番外編って言うか派生シリーズみたいな物だったかしら?」
「そうそうそれそれ。マシンガンだったから爽快感は凄かったわね」
「確か日本では家庭用に移植されて無かった奴だろ」
その男が何故ここに、と言う疑問は次のクロード本人のセリフで解決される事に!!
「俺は今休暇中だが、せっかくの休暇がこれで台無しだ。俺はVSSEから
御前達5人を本部へと連れて来る様にと頼まれたんだよ。と言う訳でこのまま
輸送させて貰うとしよう」
「そんな事させる訳がぶぐおわっ!?」
哲が飛び掛かろうとしたが、あっけなく傍に居るスティーブに押さえつけられる。
「大人しくしてろ。こっちだってなるべく怪我はさせたくは無い」
「良し、それじゃあ出発だ。この5人の見張りを頼むぞ」
そう言ってクロードはVSSEの本部に向け、カングーバンを発車させるのであった。
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