Rescue request of a dragon第18話


モナコは手早いルートであれば日本から羽田でまず12時間前後かけてパリの

シャルル・ド・ゴールへ向かう。その後乗り換えに2〜3時間で、ニース空港までは

およそ90分の旅。そして更にそこからヘリかタクシーかバスでモナコに辿り着ける。

羽田を日本時間の0:30に飛び立って、現地時間の5:30に到着。

そこから9:35分の便でニースへと向けて出発して着いたのは11:05。

そしてモナコにヘリで10分足らずでやって来て、着いた時にはもう正午になろうとして

いたのは百瀬和美率いるDestruction Performersの5人だ。


「ああ、着いたわね。ヘリって意外と安いのよ。タクシーとそんなに変わらないわ」

「ほんとだな。それで……せっかくだから何処か見回りたいけど、そんな時間も無さそうだ」

「VSSEの本拠地らしいからな、ヨーロッパは」

「そうだな……。それで波動を感じたって場所はメモして来たか?」

「ええ、もうバッチリよ」

由佳がモナコの詳細な地図を広げて、そのイークヴェスが波動を感じたと言う場所に

チェックを事前にきちんとつけてあった。チェックがされていたのはモナコの観光名所である

熱帯庭園とグレース・ケリーの日本庭園だった。


その2つを見て苦笑いを漏らす永治だったが、和美は逆にほっこりした顔だ。

「うん、これなら先にこっちへ行った方が効率が良いわね……」

「え? 何が?」

哲の問い掛けに和美がその理由を告げる。

「日本庭園はここから結構近いのよ。だから効率良く探せるって事」

「へええ、そうなんだ」

和美の解説に腕を組んで感心する藤尾であった。


「まぁ、モナコは診て回るだけなら1日あれば十分だし、本当は11月の半ばまで

プチトレインって言う山手線みたいにぐるっと1周する列車が走っているんだけど

あいにく今は12月だから営業していないのよ。さぁ行きましょう。熱帯庭園は

アクセスが余りし易くないから時間を食いやすい。だから日本庭園を先に見に行こう」

「流石リーダー、ヨーロッパの事なら博士級ですね!」

「任せて任せて!」

哲におだてられながら、和美はその哲を含めた4人を連れて日本庭園へと向かった。



かの有名なグレース・ケリーが亡くなってしまった後に建設され、1994年5月7日に

オープンしたこの日本庭園はおよそ8000平方メートルと言う広大な敷地に

建設されている。

「おおすげー、地元を思い出すぜ」

京都が地元の哲でさえも、思わずそんな声を出してしまう程凄い物であった。

しかし真の目的は観光に来た訳では無いので、まずは卵かドラゴンかどちらかを

見つけなければいけない。


そうして日本庭園を5人で手分けして探していると、永治が目標に辿り着いた。

「おい、そこのあんた」

『え?』

「グラルバルトだろう? あんたは」

黄色の髪に黄色い瞳が印象的な黄色を基調とした服装の中年男性。しかし

その正体は……。

『ああ、永治君か……わざわざこんな遠くまで、迷惑をかけたな』

「全くだ。向こうにみんなも居るから行こう」


と言う訳でDestruction Performersの5人は黄龍のグラルバルトと再会し、続けて衝撃的な

真実を彼の口から聞く事になった。

「えっ、卵も見つけた?」

『鍾乳洞でな。だけど私はこの世界のお金を持っていないから中に入れなかった』

「ああ、成る程ね。あそこの入場料は無料だからね」

と言う訳で次はモナコの端にあるのでアクセスがし難い植物庭園へ。モナコ2つ目の庭園だ。


「本当、ちょっと手間掛かるな」

哲がぼやきながら辿り着いた熱帯庭園では、ミクロクリマと呼ばれているモナコ特有の

気候を利用してサボテン等の植物が栽培されているスポットだ。

別名熱帯植物園、熱帯公園とも呼ばれており植物に関心のある人間にとっては

是非見ておきたいスポットになっている。

「うわぁ、すげぇな……」

「何か東京の緑が余り無い景色を見慣れてるからか、結構新鮮だぜ」

「数千品種が集められている植物園だから、かなりの物よ」

『これがこちらの世界の植物か。ヘルヴァナールとはまた違うのだな』

「世界からして違うから当たり前だけどね……」


グラルバルトの呟きに由佳がボソッと突っ込みを入れつつ、次に鍾乳洞へ。

『この中だ』

「おっほ、ここも凄いぜ。まるでファンタジーな世界に来たみたいだ」

藤尾が感慨の声を上げつつ、一行は鍾乳洞の最深部へ進んで行くとそこで卵を発見。

「これか。結構大きいんだな」

『ああ。人間には持てない重さだから見張っててくれ』

と言う訳で人間の姿のグラルバルトが持ち、不自然に見えない程度にその周りを囲む様に

して5人が歩く。だがそんな5人と1匹の行動をどう考えても怪しいと思う人物が、こっそりとその

後を尾け始めていたのである……。


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