Rescue request of a dragon第12話
飛行機では無くてドラゴンのエルヴェダーに揺られる事24時間。
日本とは違って12時間の差があるサンパウロ。ブラジルでは国内だけで
3つの時差に分かれているが、サンパウロは12時間きっかりの時差である。
しかしそれ以上にエルヴェダーとその背中に乗っていたBe Legendの5人を
待っていたのは……。
「暑い……」
「思えば南半球だから夏だもんな」
「ディールは地元がニュージーランドだから良いけど、俺達はきつい」
「ああ、すげぇ厚着だ」
「そうだな。俺はこの時期は慣れてるから良いが……いきなり暑い所に来たら
身体がびっくりするだろう」
そう、南半球のサンパウロはこの時期は夏真っ盛り。冬の日本からやって来た
5人は当然厚着だ。一先ずは上着だけでも脱いでおく。
「良し……ブラジルまで来たけどパスポートも何も無い不法入国だ。さっさと卵と
ドラゴンを見つけて合流ポイントへ向かおうぜ」
リーダーの淳はエルヴェダーに波動を探ってくれる様に頼む。勿論エルヴェダーの
着陸地点は人気の無い所を選んだ上、今ブラジルは昼間なので目立たない様に
さっさと着陸してビンで人間の姿に戻っている。
そのエルヴェダーの着陸地点から波動を感じるままに沿って歩いて行くと、サンパウロの
観光名所の1つであるトリアノン公園に辿り着いた。
「ん? ここは……」
「トリアノン公園。観光名所の1つだ」
『この公園の中から俺様は波動を感じたぞ』
まるでアマゾンの中に迷いこんだかの様な公園として知られるトリアノン公園だが、
道はきちんと舗装されているので快適に散策が出来る。
そしてエルヴェダーを先頭に波動がどんどん強くなって来て、その先に待っていた物は……。
「あっ、これは……!!」
『間違い無い、卵だ』
茂みの中に隠れる様に落ちていた卵を発見。それを周囲の人に見られない様にして
エルヴェダーに持って貰い回収。
そこから今度はもう1つの目的であるドラゴンに会いに行く事に。
『ちょっと待ってくれ……ドラゴンの波動だが……』
一旦卵を地面に置き、気を集中させて仲間の波動を探ったエルヴェダーが
指し示した方角は……。
『何だ、すぐ近くじゃないか』
「へ?」
エルヴェダーが指差した方向には、国立のサンパウロ美術館があったが……。
「うわ、すげぇ人」
「ほんとだ……やっぱり芸術は何処でも人気あるんだなー」
一目見てげんなりした声を上げる陽介と、自分も音楽と言う分野は違えど芸術に携わっていた
者として感心する浩夜。
「あの中から探すのか。骨が折れそうだ」
冷静な口調だが疲れるのを覚悟している様なディールの口調に、そのディールの肩を
ポンと叩く連の姿が。
「まぁまぁ。こんな近くで済んで良かったじゃないか」
「良し行こう」
リーダーの淳が先頭に立ち、まずは外から見回ろう……と思っていた矢先だった。
『あれっ? 御前達は……』
「あっ!?」
「何だ、もう見つかっちゃったぜ」
どうやら探しに行く手間が省けた様で、美術館のすぐ目の前に全身緑と言うイメージの
学者のドラゴンであるアサドールの姿があったのだ。
「ああ良かった、これで俺達は合流ポイントに向かえるよ」
ほっと胸を撫で下ろして安堵の息を吐く陽介だったが、アサドールは渋い顔をする。
「……どうした?」
不思議に思ったディールが問い掛けると、アサドールはとんでもない事を言い出した。
『我輩の事を狙っている輩が居る気がする。それも、すぐ近くで……』
「え?」
辺りを見渡してみるが、別にこれと言って不審な人物が居る訳でも無い。
「気のせいじゃ無いのか?」
連の問い掛けにもまだ渋い顔を続けるアサドール。
『いいや……気のせいでは無い。我輩は最近そう言う気配に鋭くなって来ているんだ。
とりあえず人気の無い場所に行った方が良いのだが……』
「ああ、俺達も実はそのつもりだったからさっさと行こうぜ」
淳に促されて、5人と2匹のドラゴンはまず人気の無いサンパウロの郊外に向かって歩き出した。
サンパウロの郊外は工場地帯が立ち並び、身を隠すのにはうってつけだ。
『どうだ、まだ狙われている感じがするか?』
『ああ……さっきよりも強くなって来ている』
余り不自然にならない程度で周りを見渡してみたりもするが、特に変わった様子も無い。
「何かそう言われると怖くなって来るな。さっさと合流ポイントに急ごう」
そうディールが言って、人気が完全に近い位まで無くなっているポイントでドラゴン2匹に
元の姿に戻って貰おうとした……次の瞬間!!
「ぬお!?」
「うわぁ!?」
突然足元に威嚇射撃が2発打ち込まれる。その銃弾が飛んで来た方向を見てみると……。
「みーっけっ!」
「全員その場で動くな!」
銃弾を撃ちこんで来たのは2人の男だった。恐らくこの2人がVSSEのエージェントであろうと
言うのは、その2人を一目見た瞬間から5人と2匹の脳裏にも過ぎっていた。
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