Resistance to the False Accusation第8話


王都を出発して行く4人を城門で見送り、宰相のレラヴィンはくるりと

踵を返して城内へと戻る。

(それではこちらも準備をするか)

ただ単に闇雲に追い掛け回すだけでは何の意味も無い。それに姿を消しても

瞬間移動が出来る訳でも無し。となればこの大陸はアーエリヴァ、イディリークへと

地続きなのだし西の端の町にある港へ行くにしても、そこは人が多いし尚且つ

船を使ってやって来る人間や荷物を検査する為の検問だって張られている。

だからこそ、やるべき事はまずこれだ。


「これだけあればまずは良いだろう。早馬を」

配下の騎士団員達と警備隊員達に命じて、王宮画家に描いて貰った2人の似顔絵を

使った手配書を国中の至る所に点在している町や村に貼り出しに回る。

似顔絵があれば何処の町や村でもうかつな行動は取りにくい。

かと言ってこそこそしていても怪しまれる要素が高い。

今の所出来る対策と言えばこれ位しか無いのだが、騎士団がこの事件に絡んでいると

なれば今の所はその2人の手配書を作る事が先決だ。

(これはただ単にあの2人を追いかける為の物では無いからな)

そう思いながら、レラヴィンは執務室で自分の仕事を再び片付け始める。

自分の仕事はこれ以外にも沢山あるので、こればかりに構っていられる訳でも無い。


しかしこの事件が気になるのは自分でも分かっている事なので、仕事の合間に麻薬事件の事について

何か見落としている事が無いか自分でも調べ直してみる事に。

そうして行くと、ある1つの不可解な物資の流れが浮かび上がって来た。

(ん……?)

物資の流れで不自然だと思ったのは大量に仕入れた薬草の流れ。

そう、それは紛れも無くガラムの薬草畑から時々仕入れさせて貰っているあの薬草だった。

(私は薬草の流れに関与していないから知らなかったが、何だか不自然な使い道だな?)

薬草とはその名前の通り薬の原材料に使われる草であるが、どんな薬草が仕入れられているのかと

言う所までを少しだけ把握しているのみであり、それ以降の使い道については宰相の自分が出る

幕では無いと思っていたので関与していなかった。

(これは……徹底的に洗い直す必要がありそうだ)

そう考え、レラヴィンは配下の騎士に頼んで薬草関係の書類を持ち出せるだけ持って来て貰う事にした。


その結果、色々と不自然な事が分かって来た。

基本的に薬草は仕入れた後に騎士団と警備隊で検品に回され、粗悪品は弾かれてゴミとして燃やされる。

それ以降は王城の敷地内に存在している研究所へ送られるのでそこから先は騎士団が

関与する事は出来ない様になっている。

(でも、騎士団がもしその粗悪品をゴミとして出さずにそのまま何かに使い回しているとしたら?)

もしそうだとしたら、どうせゴミとして捨てられる物に関心を示すのは城下町に居る物乞い位なものだろう。

(この予測が合っているとしたらかなりの盲点だ。そっちのルートを洗い直してみれば何かが分かるかもしれない!)


レラヴィンはその後も仕事の合間を縫いつつ、独自に調査を進めて行く。

そうして辿り着いた自分の結論は、どうやら逃げた2人はただ単に事件の容疑者として逃げた訳では

無さそうであると言う事だった。

それよりも、もしかしたらこちらの味方になっているのかもしれない。だけどそうだとして、騎士団と

繋がりがあるガラムが自分達にも気づいた事を報告せずに突然姿を消した理由が引っかかる。

(……まさか……)

その「騎士団と繋がりがある」からこそ、彼等は姿を消したのでは無いか?

そう思ったレラヴィンは、もっともっと調査が必要だと感じて一層この事件には深い闇があるのだと

思わずにはいられなかった。


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