Resistance to the False Accusation第5話


そうして夜に王城に着く様に栽培所を出発したシェオルは、

無事に日没寸前に王城へと辿り着いた。

「こんばんは。薬草を届けに参りました」

「ガラムの所からだな。話は聞いている、通れ」

門番に中の給仕に届ける様に指示をされ、王城へと通される。

シェオルは給仕の待つ医務室へと向かう為に薬草を背中に抱え、

廊下を歩いて行く。


医務室へと通され、薬草を渡して代金を受け取るシェオル。

やる事も終わったのでいざ帰ろうと思ったのだが、どうしてもトイレが

したくなってしまったのでトイレへと向かう。

(う〜〜〜、漏れる漏れる!)

トイレへと急いで駆け込み、用を足すシェオル。だがふと目の前の

棚を見てみると、書類の束が置いてあるでは無いか。

「ん?」

誰かの忘れ物かなと思い、用を足し終わったら届けようと手を伸ばすシェオル。

だが手が滑ってしまい、ばさりとその書類の束が床へと落ちてしまった。


「あっと、やば」

用を足し終わり、手を洗ってすぐにそれを拾い上げる。

だがその時、思いもよらない文章が目に留まった。

「ん……んん!?」

その書類に書かれていた文章は、シェオルを十分に戦慄させる物であった。

「な、何だよこれ……」

思わず口からそんな声が漏れてしまったかと思うと、トイレの外から

バタバタと慌しい足音が聞こえて来た。

(やばい!)

文章のその内容から危険を察知したシェオルは、トイレの窓から外へと脱出し

そのまま王城を抜け出して足早に薬草畑へと帰るのであった。


薬草畑へと戻ったシェオルは、急いでその書類の内容にもう1度目を通し始める。

(これ、は……)

自分でも信じたくは無い内容ではある。しかし、誰かのいたずらであるとすれば

ここまで内容が詳細に書いてある書類の内容も説明がつかない。

ただのいたずら如きにここまで手をかけられる程暇な人間が居るのであろうか?

それにここまでこれだけ詳細な内容の書類をいたずらで作ったとしても、それを見せて

喜ぶ人間が居るのであろうか?

(………………)

シェオルの頭の中で出た答えはNOだった。こんな書類の束がトイレにあるとしたら

誰かが置き忘れたに違いないと思うが、これを自分が見たと知ったら間違いなく殺されても

おかしくは無い内容である。


だが、薬草畑の傍にある小屋の裏でこっそりその書類に目を通していたシェオルの元に

1つの影が忍び寄る。

(……!!)

咄嗟に自分の持ち物を入れている麻袋の中にその書類の束を隠し、怪しまれない様に

警戒心を限り無くゼロにしてから影の出方を窺う。

そうしてその影がシェオルの前にゆっくりと現れた。

「おい、何をしてるんだ?」

「あ……」


シェオルの前に現れたのは、自分が稽古をつけて貰っているガラムだった。

「……? 何かあったのか?」

「いや別に何も。今帰って来たばかりで、ちょっと疲れたから息を整えていただけです」

「そうか。今日の納品分は少し多かったからな。しかし騎士たるもの、これ位で

へばっていてはまだまだだな。もっと飯を食え、飯を。そしてその上で体力作りだ」

「はい……」

へばっている訳じゃない、別の理由はもっともっとあるんだと言いたかったがそこはぐっと堪える。

「それじゃあ、僕は寮に帰ります」

「あー……そうだな。今度からは夜の分があったらそれを届けてそのまま帰っても良いぞ」

「分かりました!」

そのままガラムと別れて、シェオルは騎士団にある自分の寮の部屋へと戻る事に。

その行動がこの時、自分自身の身に大きな災厄をもたらすとは全く知らずに。


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