Resistance to the False Accusation第4話


日も暮れ始めた夕方頃。王都の外れにある畑の傍で、青色の髪の男がロングソードの鍛練をしている。

「やっ、やあっ!」

新人騎士達の中でも一目置かれる存在として、今では騎士団長と副騎士団長に目をかけられている為に

その実力を更に伸ばしているのがシェオル・ヴィンロレッド、25歳。15歳の時に騎士団に入団し、

19歳の時に見習い騎士から昇格して正騎士になりもう6年目。そろそろ新米とは呼ばれなくなっても

良い頃ではあるが、未だに新米枠であり次世代の騎士団を担って行く存在として期待されている。

騎士団に入ったのは自分の家が貴族であり、その縁で入団する事になったいわゆる家柄絡みの関係だ。

しかし彼自身は特に家柄が貴族だからと言って意識した事は無く、平民だろうが貴族だろうが平等に

接する優しい性格だ。体格こそ小柄ではあるがその分素早い体術とショートソードの組み合わせで

相手を翻弄するのが得意。


そして、この畑では薬草を栽培しているのだが実は彼の畑では無い。

彼の師となる人物がおり、その人物が薬草の栽培をしているので

彼はその手伝いとして王都の近くにある村からやって来たのである。

自分の師の帰りを待ちつつ、ロングソードから今度は弓に武器を変更。

こうして色々な武器を扱える様に特訓しているのだが、このシェオルが得意と

しているのはロングソードよりも短いショートソードであった。


木に手作りの的を彫り、その中心目掛けて弓を引く。

矢は中心からややずれた位置に突き刺さったが、まぁ上出来であろう。

しかし、当のシェオル自身はこれでは満足していなかった。

(まだこんなんじゃ駄目だ。もっともっと、正確に狙える様になれなければ)

弓を構え、それから放つまでのスピードは速いと師匠に褒められたのだが、

いかんせん命中の制度に関してはもう1歩と言うのが、今の自分での評価だ。


と、そんなシェオルがもう1度弓を引き絞ろうとした時、遠くから歩いて来る

1つの影が彼の視界に入った。

(あ、ガラムさん!)

水色の髪の毛に、上から下迄黒ずくめの服を着ている男が腰に短剣と

ロングソードの2本を携えて真っ直ぐ畑の方へ歩いて来る。

「熱心に稽古しているな」

「はい、勿論です」


それは王国ギルドのギルド長を務めているガラム・シャレーフォンだった。

この畑の持ち主でもある。ガラムの元にシェオルが手伝いに来て約7年。

その間に薬草の栽培の手伝いをしながら、シェオルは元王国騎士団員で

あったガラムから武術や馬術の手ほどきを受けて次世代の王国騎士団長に

なる事を目標にしているのである。

「だがもう少しだな。まだ弓の命中率が低いだろうから、武器を早く

出す事よりも正確に狙う事を心がけるんだ」

「はい!」

木の的に刺さった矢を見て、ガラムはこれからのアドバイスをシェオルに

向けてする。伊達にこの7年間、みっちりと彼が騎士団で活躍する為に

こうして技術を教え込んで来た訳では無いのだ。


だが、ガラムはこの後に思いも寄らない言葉を口にする。

「そうだ、御前に今日の夜に薬草を王城に届ける様に言ったよな?」

「ええ」

「その事についてなんだが、何だか良くない噂が王城を中心に飛び交っているらしいんだ」

「噂……ですか?」

突如口をついて出て来たその言葉に、シェオルの顔がきょとんとした物になる。


「何でも、北の隣国アーエリヴァから妙な親書が送られて来たらしくてな。

その親書によればこのヴィーンラディで、麻薬の栽培が行なわれているらしい」

「麻薬!?」

まさかの単語に、シェオルの顔が一瞬にして驚愕の表情に変わった。

「とは言えうちに取っては関係の無い事だ。国王からしっかりと認定を

受けている栽培所だし、余り気にする事でも無いだろう」

「は、はぁ……」

だが、そんな事を言われるとどうしても気になってしまって仕方が無い。

「まぁとりあえず、夜には頼むぞ」

「はい」


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