Resistance to the False Accusation第3話


そこで何をするのかと言えば、まずは聞き込みからスタートだ。王都を中心に、この王国で

人間が住んでいると言う所を聞き込み調査して、情報を集めてそれを元に犯人を割り出すのだ。

「アーエリヴァ迄麻薬の事が出回っているとなれば、国際問題に発展していますね……」

「厄介だな」

そうは言っても、王国に危機が潜んでいる事は間違いが無い。

2人はまず、王都の聞き込みから開始する事にした。

と言っても闇雲に聞き込みをした所で効率の良い捜査が出来る訳も無いので、

情報を沢山持っていそうな場所の当てを既に2人はつけてあった。

「あそこへ行けば大抵の情報は入って来るだろうな」

「ええ。ヴィーンラディで困ったらそこへ行けば良いって言う位の情報提供のスポットですから」

そうぼやきながら2人が目指す場所は、クレガーが言う通りにこのヴィーンラディの国内の

情報であれば逐一更新がされている場所であり、旅人から時にはこうして警備隊、更には

騎士団の人間までがやって来て情報収集の手助けをしてくれる施設。


使い込まれている感じがたっぷりの入り口の木製のドアを開けると、その施設の中は

相変わらずの賑わいを見せていた。何故ならここは情報提供の場所としてだけでは無く、

酒場としての役割も果たしている複合施設なのである。

昼間から酔っ払っている者もいれば、むっつりと黙り込みながら酒をちびちびと呑んでいる者、

丸テーブルを囲んで談笑に興じている複数の人間等を横目にして、奥のカウンターで

書類整理をしている1人の男の元へと向かった。

「……何だ、あんた等か」

やや無愛想なその男の言葉にヴェンラトースが鼻で笑う。

「何だとはご挨拶だな。せっかく情報を買いに来てやったんだ、感謝するが良いぞ、ガラム」


騎士団において、過去に盗賊を逃がしてしまいその責任を取って辞職した男。それが王国ギルド長で

元騎士のガラム・シャレーフォン。騎士団を退団してからはロングソードとショートソードの二刀流の

剣士として自分でもギルドにやって来る依頼を請け負う事がある他、ギルドで冒険者達の面倒を見たり

依頼の仲介をしている傍らで、何か役に立つ事があればと思い王都の外れの城壁の傍に造られている

自分の小さな畑で薬草を栽培する寡黙な男。実家は王都から少し離れた場所にある農家だったので

こうした畑仕事には慣れている事もあり、意外と今の生活が気に入っていると言う。元々騎士団で

生活していた為に騎士団とは今でもつながりがあり、たまに自分が栽培した薬草を王城へ持ち込む事もある。


そんなギルド長のガラムが受け持っているギルドではこうして金を出す事によって情報を買う事が

出来るので、今回の麻薬事件についてこんな不穏な噂を聞いた、と言う事でガラムに問い掛けてみる。

しかし、ガラムの答えは芳(かんば)しくないものであった。

「麻薬……ああ、こっちにもチラホラそう言った事があるのは聞いているんだが、恐ろしい程

それ以上の情報は入って来ていない。恐らく、あんた達に提供出来る様な情報は無いかもしれない」

「入って来ていない?」

クレガーがそう聞くと、ガラムは小さく頷いて続ける。

「ああ。何処かで情報が止められている可能性がある。恐らくかん口令が敷かれているんだろうがな」

「え?」


そんな話は聞いた事が無い、と疑問符を口に出したヴェンラトースは続けるが、ガラムもどうしようも

無いとばかりに首を横に振る。

「悪いが、俺も本当にこれ以上の情報については知らない。幾ら俺が未だに騎士団と繋がりを

持っているとは言えども、情報を仕入れるのにも限界がある」

そこで言葉を一旦切ったガラムだったが、情報を止めている心当たりはあるとも言う。

「けど全く情報が無い訳では無い。俺が考えたのは騎士団に犯人の一味が居るんじゃないかと言う事だ」

「騎士団に?」

思わず聞き返したクレガーにガラムは首を縦に振る。

「あくまでもこれは俺の予想にしか過ぎないから、今の所は話半分に聞け。警備隊のトップである

あんた等や騎士団と繋がりを持っている俺が知らないと言う事は、恐らく騎士団内部で

情報がストップしているのでは無いかと言う事だ。さっきのかん口令の話もそう思ってな。

麻薬の話は出ているが、全く犯人の手がかりや足取りが掴めていないと言う話は出ている。だとすると

巧妙な手口で完璧に痕跡を残さない様にしている奴等の仕業か、あるいは情報が漏れたとしても

何処かでその情報をストップさせて漏れ出すのを防ぐ事が出来る奴が居るか、と言う事かもしれない。

俺が立てられる予想なら今の所それしかない。だから料金も要らない」


思えば、警備隊の所にでは無く自分達2人だけに騎士団長と副騎士団長から情報が回って来たのも

そのかん口令が敷かれているからであろう、とヴェンラトースとクレガーは思っていたが、

その任務に関してはあくまで内密なので自分達が捜査の実権を握っている事自体に関しては

ガラムには話していない。しかしどうやら、騎士団の内部が怪しいと感じたガラムのその予測は

成る程と頷けるものであった。

「分かった、協力感謝する」

「お邪魔しました」

踵を返し、クレガーとヴェンラトースはギルドを出て再び城下町を歩き出した。


Resistance to the False Accusation第4話へ

HPGサイドへ戻る