Resistance to the False Accusation第15話


ジェラルドは麻薬組織の一員であり、自分の騎士団に所属する

いわば自分の部下でもあるヴィルリンを追いかけていた。

「貴様、止まれ!」

「やなこった!」

ヴィルリンはまともに戦っても勝ち目が無いと判断したのか、ひたすら

山脈を逃げて行くのでそれをジェラルドも追いかける形に。


これはバトルでは無く、どちらかと言えば追いかけっこだ。

この山脈は1本道ではあるが、奥まで行くとなると結構時間が掛かる。

それと装備であるが、両者にそれ程の重さの違いは無い。

ヴィルリンは杖を持っている魔術師であり、ロングソードも持つ。

騎士団長のジェラルドは大斧を持っている。

肩当てや胸当てをつけているのは2人共同じなのだが、大斧は

ヴィルリンの持っているロングソード、そして杖と合わせても同じ位の

重さである。


しかし、彼等の間にはただ1つの違いがあった。

ヴィルリンの足がジェラルドより少しだけ速いのだ。その事もあり

ジェラルドは少しずつ後れを取って行く。

(くっ! 引き離される!)

このままではまずいと思ったジェラルドは、懐から短剣を取り出してそれを

ヴィルリンに向かって走りながら投げつける。


「うおっ!?」

顔のすぐ横を後ろから飛んで来た短剣がかすめて行き、その短剣は

横の木に突き刺さった。だがそれでも止まる訳には行かない。

2人の距離は少しだけ縮まったがそれだけの事だ。

(俺はまだ絶対に捕まる訳には行かない。捕まったら今まで順調に

やって来たこの計画が全て水の泡だぜ!)

元はと言えば自分の仲間のセヴェンの失態が原因なのだが、今は

そんな事を考える余裕もヴィルリンには無い様である。


(仕方が無い!)

このままでは追いつけないと判断したジェラルドは、もう1本短剣を

懐から取り出す。

今度はかすらせるのでは無く、本気でヴィルリンに当てるつもりだ。

(貴様もここで終わりだ!)

だが、そんなヴィルリンに投げつけようとした瞬間、そのターゲットである

ヴィルリンが立ち止まった。

何かを察した……のでは無く、その先はただ単に……。


(い、行き止まりかっ!)

ヴィルリンの目の前に立ちはだかるのは岩の壁。そう、行き止まりに

辿り着いてしまったのだ。

そしてそれに戸惑う彼の後ろからヒュッと音が聞こえたかと思うと、

背中に激痛が走った。

「ぐおああああっ!?」

背中に深々と突き刺さる短剣。それはジェラルドの手が握っている物であり

思いっきり突き刺さった短剣は、背中を貫通して心臓のすぐ下で止まる。


「うぐ……」

何とか抵抗を試みようと魔術を詠唱し始めるヴィルリンだが、そこに新たな衝撃が。

(終わりだ!)

ジェラルドが背中から、渾身の力を込めて大斧でヴィルリンの身体を斬り裂いた。

大斧の大きな傷が背中に走り、大量の血しぶきを上げてヴィルリンは絶命した。

(王国の平和を脅かした奴には、これ位の報いが来るって物さ)

心の中でそう呟き、ジェラルドは踵を返して歩き出した。


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