Resistance to the False Accusation第12話
その手紙に書いてあった内容はと言うと、何と独自にレラヴィンが
この麻薬事件の事を裏で調べてくれたとの事。
すると色々と驚愕の事実が浮かび上がって来た。
まず、麻薬を作っていたのは騎士団が関係している事が分かった。
そのメンバーはざっと計算しただけでも100人以上に上り、大規模な麻薬の量が
騎士団員によって流通していたと言う事が見えて来た。
「100人以上って……凄まじいな」
「ああ。俺も団長もまるで知らなかった。恐らく巧妙に流通ルートを隠していたのだろう」
情けない事だがな、とピエールが呟きつつ更に続きを読んで行くと、今度はその人数と
流通量に対する疑問点が書かれている。
ゴミとして処理される筈の粗悪品の薬草だけでこれだけ多くの麻薬を栽培出来る筈が
無い、と疑問に思ったレラヴィンが更に調べを進めて行くと、この事件に関わっている
騎士団員達の背後関係がだんだん浮かび上がって来た。
それが麻薬を流す為に作られた、麻薬組織だ。
麻薬組織は騎士団に麻薬を流して、その見返りとして多額の報酬で懐を潤す事を画策。
それはドンピシャで成功し、麻薬が騎士団内で流通し始めて行った。
だが何故それを騎士団長のジェラードや副騎士団長のピエールが知らなかったのか?
答えとしては、王都の騎士団に流せば1発で麻薬が流通している事がばれてしまうから
地方の騎士団員達を主なクライアントとしてターゲットに絞り込む事で、多くのクライアントの
獲得と麻薬組織の拡大をする事に成功した。
それも、王都の騎士団がなかなか目を届かせる事が出来ない様に大金を積んで、
地方騎士団の部隊長等には大金を積んで口止めもしておく。
人間、結局金が絡むと人まで変わってしまうのだ。
「成る程な、だったら私達に情報が届かないのも納得が行くか」
溜め息を吐いてジェラードは続きを読む。
レラヴィンも麻薬組織がどれ程勢力の拡大をしているのかと言う事は知らなかったのだが、
丁度騎士団の本部に毎月の業務報告をしに来ていた部隊長達を物理的にも心理的にも
締め上げた所、芋づる式に白状し始めた。
悲しき事ではあるが、王都を除いてほぼヴィーンラディの全域にこの麻薬は流通してしまっているらしい。
と言う事は騎士団員のほとんどがこの麻薬の常習者と言う事になってしまう。
この麻薬の作用としては幻覚作用等は無いものの、気分が高まって普段よりもパワーが出やすくなり
その結果として体が限界を超えて壊れてしまう凄まじいドーピング効果を持っていた。
要はアドレナリンを肉体の限界を超えて放出してしまう上に、脳までもが連続服用を続けると
どんどん破壊されてしまい、最終的には死に至るまでになってしまうというとてつもなく恐ろしい薬物だった。
それを読んでいたガラムの手が震えだす。
「俺の、せいか……」
「え?」
「俺が薬草を騎士団に卸したりしなければ、こんな事に……」
「ま、待て落ち着け!!」
「う、うおおおおおっ!!」
いきなり発狂し始めたガラムは自分が使っていた短剣を鞘から抜き、自分の喉に突き刺そうとする。
だがそれを止めたのはジェラードだった。
「落ち着けっ、ガラム!!」
「だ、だけど!」
短剣を持つ腕をがっちりと力強く抑えて止めたジェラードは静かに、しかし力強い声でガラムを宥める。
「確かに、私達騎士団に対して薬草をお前とシェオルは卸していた。だけどそれが麻薬の原材料と
して栽培されるとは思っていなかったのだろう?」
「……はい」
「知らなかった、で全てが済まされる事では無い。しかし今回の事件に関してはこの麻薬栽培をしている
奴等が悪い。それからその麻薬組織もだ。それ相応の裁きは2人とも受けて貰う事にはなるだろうが、
今はその事は一旦忘れて、私達に協力して欲しい。お前も昔は騎士団員だったんだから、腐った
騎士団員を壊滅させるのに、今は全力を尽くしてくれ!」
そう言って、ジェラードは呆然とするガラムの手首を解放した。そんなガラムの目からは何時の間にか、
大粒の涙が流れていた。
「シェオルもだ、頼むぞ」
「勿論です、団長!!」
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