リレー小説第2部第3話


「ひとーつ、人の世の生き血をすすり」

背後から声がする。思わずばっと振り返ると、黒い衣装に身を包んだ男がゆらゆらと近づいてきていた。

「ふたーつ、不埒な悪行三昧」

男はだんだん近づいてくる。よく見ると顔に仮面をつけており、顔が確認できない。

男はゆらゆらと近づいてくると、セバクターの前でピタッと止まった。

「何だ、貴様」

すでにロングソードを油断無く構えてセバクターは戦闘態勢に入っていた。

「この事件の黒幕は貴様か」

それから2まであるんだったら3もあるはずだろう、と心の中で突っ込みを入れる。


男はそれに答えず、両腕をすっと胸の前で交差させる。

「みーっつ、醜い浮世の鬼を」

直感的にヤバイと感じたセバクターは、男の横を前に回転しながらすり抜けて後ろへ回り込んだ。

しかし男はにっかりと笑うと、両腕をバッと外に開いた。

「退治してくれよう、桃太郎…なんつって」

するとどういうことだろうか、いきなりセバクターに無数の切り傷ができたではないか。

「ぐほっ、な・・・」

1つ1つの切り傷は大きい物では無いが、ちりも積もれば山となる。

これは恐ろしい程厄介な相手だ、とセバクターは武者震いをした。

それでもこの男を倒さなければまずいらしいので、セバクターはロングソードを構える。

相手も恐らく人間。何処かに隙も弱点もあるはず。完璧な人間等居ない。そう信じて。


でも、ここだとかなりまずそうなので一旦踵を返してセバクターは走り出す。

(奴は恐らく異常な武器を使うんだろう。勘だが・・・あれは魔術では無さそうだ!!)

この暗くて狭い通路ではまともに戦えない。暗いのは同じでも、広い場所に出れば何とかなりそうだ、とセバクターは考える。

・・・・が、その考えを途中で改めた。何だか広い場所に出たらもっとまずい気がする。

(・・・だったら!)

後ろから追いかけてくる男の足音を聞きながら、セバクターは曲がり角を曲がった瞬間に身体を反転させ、

追いかけてきた男の足目掛けて渾身のタックル。そのまま男を背中から通路の壁に押さえつけ、膝蹴り連発で

「超」接近戦に持ち込む。離れると逆にやばそうだ。

更に男の身体を両腕で抱え上げ、さっきの扉まで全速力で走りながら思いっきり男の背中を扉に叩きつける。

プラス、それで怯んだ男の顔面目掛けて回転をつけながらジャンプして強烈なキックを男の顔面にクリーンヒットさせた。


「…よーっつ、世に蔓延る悪の根を」

顔面に強力な蹴りをくらい、男の仮面がパキ…と割れる。

カラン、と音を立てて仮面が落ちると、出てきたのはいかにもやる気のなさそうな青年の顔だった。

「いつーつ、いかにも許すまじ」

「しょぼくれた顔の割には、なかなかの腕だ」

「…お前、ここで何してんだ。お前が犯人か?」

セバクターはその男の問い掛けに戸惑う。

「・・・・ん?」

固まったまま動かないセバクターにやる気の無さそうな男は再び問いかけてきた。

「だからお前がここの扉開けて変なもの呼び出した犯人かって聞いてんだよ。くっそ俺の貴重なたこ焼きタイムを邪魔しやがって…!」

「・・・・すまん、話がまるで見えないんだが・・・・つまり、この倒れている奴等は貴様の仕業ではないのか?」

何の話かまるで見えないセバクターだが、どうやら敵では無さそうだ。

とりあえず自己紹介をしつつあのカケラを見てもらう事に。

「俺はセバクター。このカケラの謎を解きにここに来た。で、貴様は何者だ?」

「俺はきぬ…いや、今は幽(カスカ)か。まあどっちでもいいや。で、その欠片がなんだって?」


きぬ…もとい幽は興味なさそうにカケラを覗き込む。

「カケラがどうもあそこにはまるらしい」

セバクターは指を差しながら幽と一緒に扉の前へ。

「このくぼみだ。しかし何だ・・・扉を開けたら変な物が出てきただと? 説明してくれ。何があったんだ?」

「説明しろって言われても、俺が来た時にはすでにこうだったんだよ。扉にはこじ開けた跡みてーなのがあるし、

さっきからなんか変な気配がするし、ぜってーなんかいる。そいつが暴れてみんな倒れたんだろ」

「・・・とにかく、まずはこれを扉にはめ込んでみても良いか? そうしたら何かが分かるかも」

「ならはめ込んでみろよ。変なの出てきたってお前強そうだからなんとかしてくれそうだしな」


じゃあ早速、とばかりにカケラをセバクターははめ込んでみる。

するとその瞬間、物凄い音を立てて扉が崩れる!!

「な、何だ・・・?」

その扉の先はどうやら地上までの吹き抜けになっているらしく、月明かりが差し込んできていた。

そしてその奥には大きな壁画が1枚。

「壁画・・・・?」

これ何だろな? とセバクターが幽に聞いてみるが、当然の如く知らないと言う返事が。

するとまたもや、自分達が入ってきた扉のあった場所から足音が聞こえてくる!!


「まさか中にこんなものがあったとはね。みんなを襲った化け物はここから出てきたのだろうか…」

扉から入ってきたのは、燃えるような赤い髪に淡い朱色のマントを身につけた、いかにも王子様、な青年だった。

「おいこらフレアてめえどこ行ってたんだよ。つーかなんだよこれ」

幽は文句を垂れながらフレアに壁画について尋ねる。

「これは…壁画じゃなくて魔法陣じゃないか?おそらくこの魔法は僕らには関わりのないものだろうけど、

そこにいる御仁には重要なものだろうと見たね」

「誰だ、あんたは」

奇妙な事を言い出したフレアと言う男に、訝しげにセバクターは尋ねる。

「それに、この壁画が俺にとって重要であると?」

「僕はフレア。このヴァルクォーレの王子だ。ああ、貴方にとってはとても重要なものだと思う。

まず、貴方はなぜこの国に…というよりも、なぜこの世界に来たんだい?」

「・・・・!!」


第2部第4話(最終話)へ

HPGサイドへ戻る