リレー小説第2部第2話


と言う訳で船を使って護衛をしながら半日かけてタルナーダまでやって来たセバクターは、紹介された通り軍へと向かう。

「やあやあ、話は花国の女王様から聞いてるぞ!あんたがセバクターとやらだろォ?欲しい情報があるんだってなァ?」

何やらいきなり話しかけてきた1人の男。凄い軽薄そうだ。

「ああ、あんたが・・・。セバクターだ、よろしく」

「ほいほい、よろしくゥー!ところでさァ…あんた、強いの?」

軽薄そうな男はニタァと楽しそうに笑うと、両腰のホルスターに手をかけ臨戦態勢を取った。

戦う気満々だった。

(・・・・殺気)

セバクターは咄嗟にその男の両腕をぐっと掴んで押さえる。

「自分では強いとは思っているが、戦う気は今の所無い。それで良いか?」

「あっははは!やっだなァ!ジョーダンだよジョーダン!悪いねー、俺様ってばつよそーな奴見かけるとついつい戦いたくなっちゃうんだわァ」


男はケラケラと愉快そうに笑うと、「で、何の情報が欲しいんだ?」と急に真顔になった。

「この奇妙なカケラの事が知りたい」

ジョゼファに見せた時と同じく、セバクターは手の平の上にそのカケラを出してアレックスに見せる。

「ほんほん、なかなかめずらしそーなブツだわな。でも俺様こんなもの見たことないなあァー。つーか興味ないって感じ?」

「この国は世界で一番大きな国だと言うから来てみたんだが、どうやら見当違いの様だな。他にこのカケラの事を知っていそうな心当たりは?」

それとも、とセバクターは続ける。

「何かこのカケラがはまりそうな場所とかがあるのか? 俺にはそんな気がする。軍人とかじゃなくて傭兵とかに聞いた方が良いのか?」

アレックスはんーと唸ると、ちょっと待ってろと言い軍の資料室へ消えていった。

しばらくしてアレックスが何やら資料を持って戻ってきた。

「・・・それは?」

「俺様ってば普段こういう資料漁りとかはしないんだけどー、それっぽいの見つけてきてやったぜ」

そうアレックスは前置きすると、資料をセバクターに渡す。

「助かる。ちょっと何処かで落ち着いて読みたいんだが、場所を貸してくれないか?」

「おう、いいぜー。そこの休憩室なら自由に使ってよーし!」


と言う訳で場所を借りたセバクターは、どうやら異世界補正なのか普通に読める資料に目を通す。

するとある1つの単語が目に入った。

(ヴァルクォーレ聖国の・・・・封じられた迷宮・・・?)

何でもその昔、何かの研究所として使われていた場所が今では魔力か何かで封じられてしまい、開かずの扉が入り口にあると言う。

(凄く怪しい。行ってみる価値はありそうだな)

だけど何だか、この事をアレックスに言う気にはなれなかった。アレックスに言ったらとてつもなく嫌な予感がするからだ。

それでも資料は返さなければいけないのでアレックスの元へと向かう。

「助かった。・・・・特に情報は無かったが、ひとまずヴァルクオーレと言う国へ行ってみようと思う。手間をかけたな」

「なんでまたヴァルクォーレ?…まああそこには王子サマ達がいるし、確かになんかそれっぽいことも聞けそうだな」

とは言いつつも、アレックスは滲み出る怪しさを疑わずにはいられなかった。

セバクターはアレックスの疑問に非常に簡潔に答える。

「直感だ」


そう言い残してアレックスと別れたセバクターだったが、ヴァルクオーレへと移動する時に非常に強い違和感を覚えていた。

(つけられてる? でもあの軍人では無さそうだな・・・?)

馬車に乗っている筈なのに、この違和感はなんなのだろう? と不信感は日に日に大きくなる。

それでも今の自分には確かめる術も無いので、気がつかない振りをしてヴァルクオーレまでの旅を終える。

しかしヴァルクオーレへの入り口を通ろうとしたセバクターの目の前に、1人の女の子と1匹の魔獣、

プラス青い帽子を被った不思議な人間のような男? が立ち塞がった。

「知らない人!ダメ!今この国入っちゃダメ!」

女の子が声を上げると、魔獣も低く唸り威嚇をしだす。

「何なんだ一体。この国で今何かあるのか?」

と言うよりもこの気配は・・・・。

「まさか、俺をずっとタルナーダからつけていたのは御前達か?」

「タルナーダ?もしかして、あなたはアレックスさんの知り合いでしょうか」

今度は帽子をかぶった人間?のようなものが口を開いた。

「知り合い・・・と言うほどでもないがな。ただ、俺はそのアレックスのおかげでここまで来られた。

でも何だかこの国は大変みたいだな。何が起こっているんだ?」


「…今この国で謎の迷宮が発見されまして、それで大騒ぎなのですよ」

セバクターはその言葉に驚きはしたが、何とかポーカーフェイスを保つ。

「成る程な。ちなみに何処で見つかったんだ?」

「神殿の地下通路から繋がっていたそうです。実は私達の仲間が調べに行ったのですが…未だに帰ってこず…それで国中パニックになってるのです」

「帰って来ない?」

よっぽど危険な場所なのだろうか? とセバクターは思わず不安になる。

「して、この国に入れないってなるとどうすれば良いんだ? 城下町までは入れてくれないか? もう戻る時間も金も無い」

「ダメ!!絶対ダメ!!フレア戻ってくるまで人いれるなって言われた!!」

「…すみません。国では外部の人間による拐かしの線も考えているのです。事態が収まるまで容疑者も部外者も

出せませんし入れることもできないのです…」

「・・・そうか」

だったらしょうがないな、とばかりにセバクターは踵を返す。


だが傭兵として活動していた頃は寝ずの番をしていた事もあったので、再び夜中にふさがれた別の入り口から忍び込む。

かと言って、夜中に忍び込むとすれば入り口は閉まっているので別のルート・・・・一部だけ城壁に人1人がやっと通れる位の穴が開いていた。

恐らくこの非常事態で直すのが後回しになっているのであろうその穴から、セバクターは極限まで警戒心を高めて潜入する。

タルナーダ程では無いにしろなかなか大きそうな国の首都らしいので、さっさと目的の神殿を探す事に。

誰も居ない眠っている城下町を、セバクターが猛スピードで駆け抜ける。すると意外と簡単にその神殿が見つかった。

(警戒態勢じゃないのか? 警備の人間なんて居ないぞ・・・?)

それでもこの状況は好都合なので、セバクターはその神殿へと向かう。

すぐの所にある大きな穴? はとりあえず無視して、地下に繋がる階段を発見してその下へと下りて行く。


その先には通路があり、調べてみると沢山のあの青い帽子を被った人間? の仲間と思わしき身体が沢山横たわっていた。

「・・・・!?」

何だ、これは・・・・と思いつつも、セバクターは通路の奥へと進んで行く。

すると1枚の大きなドアを発見したのだが、その入り口には奇妙な形のくぼみが。

(・・・これは・・・)

まさかと思い、ごそごそとあの奇妙なカケラを取り出してそのくぼみにセバクターははめ込もうとしたのだが、

次の瞬間後ろから物凄い殺気が膨れ上がる!!


第2部第3話へ

HPGサイドへ戻る