リレー小説第2部第1話


エスヴァリーク帝国騎士団団長のセバクター・ソディー・ジレイディールは、武器庫で妙な

カケラを拾ったかと思えばその次の瞬間には妙な光に包まれ、気がついてみれば見知らぬ場所に居た。

そしてそのまま近くの街へ辿り着き、そこがフィオーレ花国と呼ばれる国の首都である事が分かった。

セバクターはそのまま不法入国者として、王女の前に連れ出されたのであった。

「あなたがジョゼファ様ですね。エスヴァリーク帝国騎士団長のセバクターです」

「これはこれは。お初にお目にかかるぞセバクター殿。して、私に何用かな?」

「こんなカケラを拾ったんですが・・・ここに来る途中に廃墟になった砦があって、そこで」

セバクターはまるでジグソーパズルのピースのような形をしたカケラを取り出した。

「ふむ…私の知っているかけらとは違うもののようだな。しかし廃墟になった砦か…いや、まさかな」

「ご存知で?」

「いや、知らん。残念だが貴公の力にはなれなそうだ。すまない」

「・・・・そうですか」


しかし彼女が何かを知っているのではないか、と直感したセバクターは、危険ゾーンの作戦で夜に城に忍び込む事に。

(なかなか手ごわい警備だ……。さて、資料室みたいな所があれば良いんだがな)

だが忍び込んで進んで行くセバクターの目の前に、鼻にカットバンをした男がふあーとあくびをしながら現れた!!

「ふああ…あ?お前昼間の…こんなとこで何してんのさ?」

「資料室に忘れ物をした。しかし道が分からない。案内してくれないか」

「資料室…?…まあいいけど。こっちだ」

「・・・・こっちなのか?」

セバクターがルイスと言う騎士に案内されてついていく先は、どう考えても資料室では無さそうだ。これは嫌な予感がする。

(どうにかしてこの男をまく必要がありそうだ・・・)

「…もしかして疑ってる?まあ、そうなるのも無理はないかもね。俺だってこっちに行きたくねえもん」


だがそれをルイスは許してくれそうに無かったらしい。それもそのはず、案内された先は・・・。

「どう言う意味だ?」

「殺気がだだ漏れなんだよ、あの人」

「その気配はある、が・・。俺もこのまま引き下がれない」

「…あっそう。じゃあ、ご自由に…どうぞ!」

どうぞ、という声とともにセバクターはルイスに思いっきり背中を押される。

「うおっ!?」

そうして押されるままに飛び込んだ先には、セバクターにとって敵である1人の人物が待ち構えているのであった。


「これはこれは。一体どういうことなのか説明してもらおうか?」

「説明? それはこっちのセリフだ。このカケラの事・・・知ってるんだろう?」

カケラを王女に見せながら淡々とした口調で問いかけるセバクターだったが、後ろからひんやりと冷たい物が首筋に触れる。

「ルイス、まだ斬るんじゃないぞ?…メイバオ、お前も魔法石を構えるんじゃない」

ジョゼファがそういうと、彼女の後ろからひょこっと小柄な女の子が顔を出した。手には魔法石を構え警戒している。

「俺はただこのカケラの秘密が知りたいだけだ。それ以外に用は無い。知ってるんだろう? ここに居る3人は」

「だから言ってるだろう?知らん、と」


だがセバクターの目が王女に対して鋭く光る。

「だったら、何故あの時まさか、なんて言葉を濁した? 知らないにしても心当たりくらいはあるってことだろう?」

その言葉を聞いてジョゼファはチッと大きな舌打ちをした。

「しつこい男は嫌われるぞ?だから、私はそれに似たものしか知らん。これで満足か?」

「なら、その似たようなものの情報をくれないか。何でも良い・・・俺の運命がかかっているんだ」

「…記憶の欠片。かつて世界が別れた時、この国にあった記憶の欠片を巡ってちょっとした騒ぎがあったと聞く。詳しくはそこの私の弟と妹に聞け」


そう言って弟と妹に目配せするジョゼファだがそれ以上の事は2人も知らない様であり、代わりにその事を知ってそうな人物を紹介してくれた。

「タルナーダという国があって、そこにはたくさんの情報が集まるんだ。その国の軍人に聞いてみるといい。もしかしたら何か知っているかもしれない」

その方がいいよね姉さん、とルイスはジョゼファに目配せする。ジョゼファはそうだなと頷くと、タルナーダまでの行き方をセバクターに教えた。

「分かった。情報感謝する。とりあえず商隊の護衛でもして路銀を稼ぐ。それと・・・不法侵入してすまなかった。なんなら今この場で裁いてくれても構わない」

「そうだな。今は平和な世になったとはいえ、よもやこの国の機密情報やら何やらを盗まれるのではないかと肝を冷やしたぞ。

それ相応の裁きを受けてもらわねばな…メイバオ!」

ジョゼファは妹に声をかけると、やれ、と指示を出した。

メイバオはたたたっとセバクターの前へくると、「しゃがんで欲しいっす」と声をかけた。

「・・・こうか?」

ヤンキー座りでしゃがむセバクターは、内心これから何が起こるのかドキドキだ。

と、急に目の前に手をかざされたかと思うと、「えいっ」とデコピンをされた。


「ぐっ!?」

え? まさかこれだけ? とセバクターはきょとんとした顔つきになる。

「悪い子には昔っからデコピンでお仕置きって決まってるんすよー!」

メイバオは得意そうに手を狐の形にしながらコンコンと動かす。その隣でジョゼファは「そういうことだ」と満足そうに頷いていた。

「お、おう・・・・」

と言う訳で城門まで3人に見送ってもらい、一旦その日は宿屋に泊まる。

そして次の日からは商隊の護衛を兼ねてタルナーダへと向かった。


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