リレー小説第5話


「? ガル、何かしたか?」

女の子は身構えた二人を見て、きょとんとしている。

その横で魔獣はいかにも興味が無いというように、欠伸をしていた。

「あれ・・・・君は?」

京はその女の子に問い掛けると、自分はガルだと名乗った。

「いや・・・・さっきまで街の中で大騒ぎしてたから、つい・・・・。

それよりもお願いがあるの。この街の情報に詳しい人を探してくれないかしら?」

さくらはワラにもすがる思いでガルに頭を下げた。

「この街かー? ならアレックス!アレックスこの街のぐんじん!なんでも知ってる!」

「分かった、アレックスだな。何処に行けば会える?」

「アレックスか?アレックスなら…」


「ここにいるよーーーん」

ガルが言い終わるよりもはやく、聞き覚えのある声が上からした。

二人がバッと上を見上げると、先ほどまで京を追いかけていた危険人物が

ニターと人を馬鹿にしたような笑みを浮かべ、屋根の上からこちらを見下ろしていた。

「なっ、あ、あいつがアレックス!? 馬鹿な、さっき確実に足を……!!」

京はそんな事を思いながらも、ここは逃げずに飛び降りてきたアレックスに近付く。

「戦いならまた後にしてくれないか。今俺達はこの国について知りたいんだ。

この国で何が起こっているのかを……。それを教えてくれないか?」

「ガルちゃんの紹介からじゃしょうがないなァ。でも残念!軍部秘密なんだよなァこれが」

「そこを何とか! 私達が元の世界に帰れるかどうかの瀬戸際なの!」

さくらもDOGEZAせんばかりの勢いだ。


しかしそれでもアレックスは教えてくれなかったので、他を当たってみる事にする。

すると先程別れた筈のレオと相方の女に再会した。

「あれ…あなたはさっきの…」

「お願い、この国の事について全てを話して欲しいの!!」

自分達に気がついた女に対し、さくらはもう1度ワラにもすがる勢いでお願いしてみる。

「その格好にその姿…もしかしてあなた達が京さんとさくらさん?」

「俺達の事を誰かから聞いたのか?」

「もしかするとフレア王子からかもしれないわね」

「ええ、その通りです。フレア王子から話は聞いてます。話しましょう、この国のことを」


女はそう言うと、この国で何が起こっているのかを話しはじめた。

女の話によると、最近謎の魔物が現れ、その魔物がこの国に攻撃を仕掛けてきているとのことだった。

魔物は自らの分身を大量に送り込んできており、その一つ一つがかなりの力を持っているらしく、

どうにも軍の人間だけでは人数が足りないらしい。

そのため軍は近くの国に救援を頼むことにし、その助っ人達とともに毎日作戦会議中だということだった。

「相当やばい事になっているみたいだな」

その話を聞いていた京が思わず武者震いをするほどの事態だと感じるが、さくらがここで1つの推測を。

「突拍子も無い話だけど、その魔物って・・‥何か魔物自体の意思じゃなくて誰かが裏で手引きしている気がするわ。直感だけど」

「そんな話は聞いたことあるのか? レオは傭兵だから何か知らないか?」


「聞いたこともあるも何も…俺達はそうとしか思えねーからこうしてその「誰か」を探してるんだよ」

レオは困ったように頭をかく。

「つーか軍の奴らは分身を殲滅することしか考えてねえからな…だからアレックスが我慢出来ずに脱走すんだよ…」

「分かった。だったら・・・・俺達でそこに乗り込もうと思う。俺達は違う世界からこの世界に来た。

そして、そいつを倒せば元の世界に帰れると思う」

そう話すとレオとニシキもびっくりする。

「うーん、にわかには信じ難い話だけど…でもそれなら尚更そいつを倒さなくちゃ」


でも…とニシキは口ごもる。

「そいつがどこにいるのかのアテなんてないよ…手がかりも無いし、気配を辿るなんて私には出来ないし…」

「だったらそれを使えば良いんじゃないか?人間に不可能だったら、鳥って言う違う生き物の出番だ」

「あ、そうか…ハヤテなら…!」

ニシキはレオの頭の上に乗っかっている橙色の鳥に向かって話しかけた。

「ハヤテ、一番気配が強いところはどこ?」

ハヤテはゆっくりと羽をあげると、静かに「西の方…あの塔から感じますぞ…」と呟いた。

「ニシキだけに西か・・・・となれば、どうにかして塔に潜入しなきゃ。夜を待った方が良いかもな」

と言う訳で宿屋に行き夜を待ち、レオとニシキにも付き添って貰いながら最終決戦に向かう!!


「見張りが2人・・・まぁ、当たり前か。余り大立ち回りしないようにしたいぜ」

塔の近くまで来た4人は塔の入り口の様子を窺う。

街からのびた端の先にぽつんと寂しく立つ塔は、おそらく灯台も兼ねているのだろう。

そのためか周りには特に何もなく、萎びた草木が転々とあるだけだった。

どうやら、人が隠れるような場所は塔以外にはなさそうだ。

「丸見えね・・・・となれば強行突破しか無さそう」

「だったら誰かがおとりになるしか無さそうだ。俺が行く」

京はそう言うとハンドガンを引き抜いて一気に走り出し、2人の内の片方の心臓を撃ち抜く。

そしてそれにもう1人が気を取られている所へ、今度はさくらが的確にもう1人の胸元から

下腹部までを引き抜いた日本刀で切り裂いた。

「良し、突入するぞ!」

背後で待機していた2人に叫び、先にレオとニシキに塔の中へ入って貰う事にした。


声を受け、レオとニシキは塔の中へ突入する。中には分身が騒ぎを聞きつけ、集まってきていた。

レオは叫びながら、背中に背負っていた大剣を一気に引き抜き振り回す。

大剣の強烈な一撃を受け、分身達は一気に消滅していく。が、しかし荒っぽい攻撃を

上手くくぐり抜けこっちに襲いかかってくる奴が。

「もう!レオは粗いよ攻撃が!」

ニシキはそう言いながらバッと手を横に伸ばす。

その手先に鳥が飛び込むと、カッと身体を光らせ、次の瞬間には見事な日本刀に変化していた。

そのまま刀を握ると、その勢いでこぼれた分身達を一刀両断する。


(おー、なかなかやるな)

勿論自分達も戦っているが、若いのになかなかやるもんだと京は感心する。

このメンバーの中では30代の1番自分が年上だろうと感じながら、塔の上までひたすらゴールを目指す。

そしてついに、屋上へ繋がる扉の前へと辿り着く事が出来た。

「気配は・・・・?」

「んなもん、もう辿らなくてもわかんだろ。…この先にいる」

「そうね。さぁ・・・・ラスボスよ!」

そう言って、さくらとニシキで一気に扉を蹴り破った。


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