リレー小説第6話


「何だかネズミが騒いでいるかと思えば・・・・何だ、御前達は?」

「!あなたは…確か新しく特務師団長に就任したギールグッドさん…!?」

まさか見覚えのある軍服を着た人物が現れると思っていなかったニシキは、思わず固まる。

「ほう、ニシキか。久しぶりだな。そんな仲間を3人も連れて、俺様の企みを止めにでも来たのか?」

不敵な笑みを受けつつ後ろで手を組み、その組んだ手の指を小さく鳴らす。

「・・・・・やれ」

一言、ギールグッドはそれだけ口にする。その瞬間、何処からとも無く魔物の大群が姿を現した!!


「うわっ、ニシキ、さくら! そいつ等は頼む!! レオ、援護してくれ!!」

銃撃で魔獣達をしとめつつ、向かって来たギールグッドに1人で対抗するのは厳しすぎるので京はレオに援護を頼む。

「了解!ぶちかましてやれ!」

レオにサポートを任せて、京はギールグッドに集中する。

至近距離でハンドガンは隙が大きくなりそうなので、ハンドガンはジャケットの下に隠して体術で応戦。

「部外者が俺様の邪魔をするな!」

京でさえびびる程のスピードで、ギールグッドは的確に京を殺しにかかる。

それと同時にギールグッドは懐から短剣を引き抜いてレオの方に投擲(とうてき)。

その投げられた短剣はレオの方に向かう!!

うおっ!?と短い驚愕の言葉を吐きながら、レオは投げられた短剣をかわした。


「なんだよあいつ、顔以外にも目ぇついてんじゃねーの?」

なんて軽い冗句をつぶやきながら、大剣をしっかり握り直す。

そして足に力を溜め、ギールグッドの懐へ一気に飛び込んだ。ニシキ直伝の接近術だ。

「ふん!」

一気に接近してきたレオにギールグッドはカウンター気味に膝蹴りをぶちかますが、何とそれをものともせずにレオは彼の襟首を掴む。

「ぬあ!?」

そのまま力任せに投げられて背中から地面に叩きつけられるギールグッドだったが、即座に立ち上がって挽回。

だけど背中の痛みは相当なものであった。

「どーしたお偉いさんよぉ!その程度かよ!?」

体勢を立て直したギールグッドに畳み掛けるかのように、レオは大剣を大きく振り被る。

「援護よろしくなんて言われたけど、このまま俺がもらっちまうぜ!」

そのまま大剣を勢い良く振り下ろす。が、そこに手応えはなかった。


「遅い」

振り下ろされる前に一気に低い姿勢でレオにタックルし、足をつかんでドラゴンスクリューもどきで彼をブン投げる。

そうして投げたレオは転び、レオをそのまま走りながら踏み潰しつつ今度はニシキに接近。

彼女を後ろからがっちりホールドし、ジャーマンスープレックスをかけて叩きつけ・・・るのでは無く、そのまま手を離して巴投げのように投げる。

投げられたニシキは一瞬何が起こったのか理解できなかった!!

「はえっ?」

素っ頓狂な声を出しながら、大量にハテナマークを頭上に浮かべたニシキはそのまま壁に叩きつけられた。

壁にめり込みながら、投げられたことは理解できたものの、なぜこうなったのかが理解できず混乱する。

「二、ニシキ!…テメエッ!!」

ヨロヨロと立ち上がったレオは混乱するニシキの様子を見て、ギッとギールグッドを睨みつける。

そしてそっと、大剣の根元に付けられた引き金をカチッと引いた。その瞬間、鋭い電撃の火花が彼と彼の大剣を包み込む。

「雷魔法の威力、思い知りやがれえ!!」


「な・・!?」

まさかそんな芸当が出来るとは思いもよらず、慌てて腰についた鞘をレオのほうにブン投げるギールグッド。

だがそれは何とレオの大剣にはじかれ、そのまま彼は突進してくる!!

「くそっ!」

咄嗟に緊急回避しようとした彼だったが、その瞬間背中に物凄い衝撃が。

そう、今まで彼の視界に入っていなかったさくらが渾身のドロップキックを彼にぶちかましたのだ。

「ぬおっ!?」

緊急回避どころか、ギールグッドはレオに向かってそのままよろけてしまう!!

「うおらああああ!!!」

そのまま勢いで電撃をまとった大剣をギールグッドにぶち当てる。

電撃の焼けるような痛みに大剣の衝撃が加わり、ギールグッドもかなりのダメージを負ったはずだ。

「おがあ!?」

後ろと前からサンドイッチ状態で追い込まれたギールグッド。一方でその攻撃を当ててきたレオの後ろから叫び声が響く。

「レオ、四つん這いになれ!!」

その声に咄嗟に反応したレオが四つん這いになった所で、後ろから走ってきた京が

彼の背中を踏み台にして全力の肘を当てる。


「伏せて!!」

続けて後ろからやって来たニシキも、今度は京の背中を使ってドロップキック!!

ニシキのキックを脳天に受けたギールグッドは、呻き声を上げながらヨロヨロとふらつき、少しずつ位置がそれていく。

そしてそのまま、ガラス張りになっていた塔の壁にトン、と寄りかかる。

当然、ガラスが彼の体重に耐えきれるわけもなく、あっけなく割れると彼はそのまま重力に身を任せ塔のてっぺんから落ちていった。

「ぬおあああああーーーっ・・・・」

地面に彼の身体が落ちる音を聞いて、京はポツリと呟いた。

「終わった・・・・な・・」

はぁ、と息を吐いて力を抜く京だったが、次の瞬間淡い光が京とさくらの身体を包み始めた。

「んっ!?」

「え、な、何これ・・・!?」

2人が戸惑っていると、その瞬間塔の階段に繋がる扉からアレックスが姿を現した。

アレックスには事前にガルを通じて連絡してもらっていたのだ。


「いや〜あンのクソ上司を始末してくれたみたいだなァー。感謝感謝、本気で心から感謝」

アレックスはニタニタと笑いながら、パンパンとやる気のない拍手を送る。

「で、その光ってるお二人さんは、これでようやく元の世界に戻れるってこったァ。良かったなァ」

ケラケラととんでもないことをポロっというアレックス。当然、その発言によって全員の目が丸くなる。

「ちょ、何か知ってるの!? ねぇ!!」

さくらは必死に叫ぶが、身体が消えていくのは止められない。

「まぁ良いじゃないかさくら・・・もう俺達の役目は終わったみたいだし・・・」

後は頼むぜ、異世界の人たち。

そう言い残して2人の身体は塔の頂上から消え去って行った。


「わあ…本当に消えちゃったよ…」

二人が消えた後を呆然と眺め、ニシキがポツリとそうこぼした。

「元の世界…か…。つーかアレックス、あの偉そーなおっさんは結局なんだったんだ?なんか知ってんだろお前」

レオは相変わらずニタニタヘラヘラとしているアレックスに、若干呆れ気味に問いかける。

「んー、あのクソ上司はただの反・乱・軍。だけど急にこの国に現れた言うなれば異物ってやつゥ?」

ヘラヘラとアレックスは答える。

「んで、あのお二人さんはきっとその異物を倒すために呼び寄せられた助っ人、ってとこなんじゃねえのかなァ?

あの魔女さんならやりかねないぜ」


魔女…と聞いて、レオとニシキはあの喫茶店にいた男…いやお姉さんを思い出した。確かにあの人ならそれぐらい朝飯前そうだ。

「なーんか、フロレアが異世界に行った時も異物っぽいものを倒したら元の世界に戻れたっぽいし、

きっと今回もそうなんじゃねえのォ?ってフレアが言ってたぜ」

アレックスは頭の後ろに腕を組み、ふああと欠伸混じりに言う。

今回の事件はとても不思議な点が多かったが、あの二人の協力がなければ解決はしなかっただろう。

その出会いが偶然か必然か、それはきっと誰にもわからない。でも、この出会いは忘れないだろう。

レオたちは二人が無事元の世界に戻れるようにと、願った。


終わり


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