リレー小説第4話
2人はがっちりと握手を交わし、フィオーレを出たさくらはそのタルナーダを目指そうと思ったのだが、その途中で1人の男に出会った。
(ん? あの緑の鉢巻きしてる男の人・・・何してるんだろ?)
船に乗る為に港町へとやって来たさくらはそんな男の姿を目撃。船の前でなにやらもめているようだ。
「だーかーらー!俺は傭兵でこっちに来たんだっつーの!いつまでもお前に構ってる余裕はねえの!ルイスんとこに帰れ!」
男はオレンジのリボンでツインテールに髪を結った少女と何やら揉めていた。
とりあえずさくらは関わらないようにしようとして乗船の手続きをしようとしたが、近くを通りがかった時にその女にいきなり話を振られる!!
「あ!さっきジョゼ姉とお話ししてた人っすよね!ねえ!あなたからもコイツに言ってやってくださいっす!私と遊べって!」
(えっ!? うわ、いやな展開)
いきなり話を振られたさくらはしどろもどろになりながらも何とか答える。
「え、えーと・・・・なら私と遊ばない? タルナーダ帝国まで一緒に遊ぼう!!」
関わりたく無かったが、断ると更に絡まれそうなので何とか別方向に話を振ってみるさくら。
「え!いいんすか!わー!やったーー!」
喜ぶ少女の横でいやいやいやと手をぶんぶん振り男が間に割り込んでくる。
「駄目だって!あんたあの姉さんに会ったってことは、あの人がどういう立場かわかってるだろ?
こいつあの人の妹なんだよ…あの人に黙って国外に出したらあの人黙っちゃいねえぞ!?」
「ああ、それなら私は大丈夫ですけど・・・と言うかあなたたちの事をまだ聞いてませんでしたね。どちら様ですか、お2人は?」
「ん?ああ、俺はレオ。ヴァルクォーレから来た傭兵だ。で、こっちが…「美宝(メイパオ)っすよ!」こら、俺の話を遮んな」
「ヴァルクオーレ? ああ、フレアさんの国ですか?」
なんだか世間は狭いなーと思いつつ、さくらはこんな話をしてみる。
「ああ、そう言えばジョゼファ王女様が呼んでましたよ。妹さんの事。食事会に出てくれって。
それとレオさんでしたっけ? 傭兵として雇いたいんですよ。一緒にタルナーダまで」
「お?雇ってくれんの?いいぜ。ちょうど暇だっ「傭兵の仕事があるって言ってなかったスか!?あれは嘘だったんすか!?」だから
俺の話を遮るな!お前はさっさと食事会へ行け!」
レオと美宝は漫才のような掛け合いを繰り広げる。
「そうなんです。だからよろしくお願いします」
そうして強引にメイパオを振り切り、レオと一緒に船に乗った。
さくらはレオと一緒に船から下りて、そこで追加の護衛の代金を渡す。
「とりあえず手持ちがこれくらいしか無いけど良いかしら?」
しかしレオはさくらが出した代金をそのまま突っ返した。
「いーわ、そんなのあとでも。そもそも俺仕事探しにきてた訳じゃねーし、ボランティアでもいいんだぜ、ぶっちゃけ」
「えっ、そうなの? なら何でここまで来たの?」
「あん?んー…面白そうだったから?」
(何なのそれ・・・・・この人には危機感がないのかしら?)
そう思ったさくらは素直に金を返してもらい、先の護衛を断って立ち去ろうとした・・・・が、次の瞬間背後から凄い殺気を感じた。
思わず振り返ってみると、そこにはオレンジ色の鳥を連れた黒い服装の女が立っているではないか。
(・・・・・ぺったんこ・・・・・)
と思ったのはあえて口に出さないようにしつつ、さくらはその女がレオの知り合いであると直感するのだった。
「お、ニシキ!わりいわりい、迎えにきてくれたんだな!」
そう言うとレオは黒い服装の女に近づいていき、何やら話し込み始める。
(ニシキ・・・?)
確かフレアがそんな名前の女の事を離していた気がする、とさくらは思い出す。
思い違いで無ければ何処かの姫だと言う情報で、かなり腕も立つらしい。
そんな事を思いつつ、なにやら話し込んでいる2人の邪魔をしないようにさくらは黙っているのであった。
2人はしばらく話し込んでいたが、突然レオが顔色を変え、さくらの方へ振り向いた。
「おいアンタ、大怪我したくなければさっさとこの国から出た方がいいぞ!俺は忠告したからな!」
「What? 何で?」
大怪我と言う単語がいきなり出てきたのでさくらはきょとんとする。何故そうなのか理由を聞かないと納得は出来ない。
「何で? このタルナーダって国で何かがあるの?」
「何でって…タルナーダっつったらあいつが有名だろうがよ…」
「まさか、あの軍人の話?」
「知ってんじゃねえか!今そいつが軍会議抜け出して逃走中なんだとよ。あいつ戦闘狂だから見つかったら…」
確かジョゼファがそんな事言ってたっけ、と思い出す。
「え、脱走? それって相当まずいんじゃないかしら?」
そんな事を考えているさくらだったが、この国に来た目的はきちんとあるのでレオの言葉はあえて聞き流す。
「忠告どうも。だけど私はこの国で人を探しているのよ。レオ君も気をつけてね!」
手を振りながら走って2人と別れたさくらだったが、何処へ行けば良いか分からない。
(人が集まる場所に行こう。定番と言えばやっぱり・・・・・・)
さくらが向かったのはRPGでおなじみの酒場。腹も減っていたので腹ごしらえに料理を頼む。
(うわあおいしそう。ではいただきまーす!!)
だがさくらが料理に手をつけようとしたその瞬間、持っていたフォークがいきなり手からすっ飛んだ。
「えっ!?」
それと同時に何と銃声が外から聞こえて来た。この世界にも銃があると言うのか。
(や、やばい!?」
とっさに壁に張り付いて窓の外の様子を窺う。するとそこでは何と、自分の探していた人間と
ジョゼファの言っていた人物がバトルしているではないか!!
(あ、あれは京君!?)
2人はまるでガンカタの様に銃を乱射している。しかしこのままここで見ている訳にも
行かないがうかつに外に出る訳にも行かなかった。
その京はこのタルナーダの危険人物に絡まれてしまい、只今交戦中だ。
(クソ、何だこの男は! 逃げても逃げても追ってきやがって!!)
「オラオラどーしたァ!オレ様をもっと楽しませろよォ!?」
そのタルナーダの危険人物…淡いブロンドの髪を上げ、緑のヘアバンドをした軍人と思わしき人物は、
ヒャハハと甲高い笑い声を上げながら京に発砲し続ける。
「なァ、あんたァ…強いんだろ?…強いんだろォ!?もっと本気出してオレ様を楽しませろよォォ!!」
京は何とか凌いでいたが、まさか隊長の自分がここまで追い詰められている現実を認めたくなかった。
しかしその瞬間、男の後ろに現れた影が一気に男に飛びつく。そして男の頭に足を絡ませて
地面へと捻ってプロレスチックに引き倒す。
「今よ、京君!」
「なっ!?」
何故彼女がここに、と思いながらも京は大きなその隙を狙って、男の足に5発銃撃する。
そして男が動けなくなった所で、さくらの手を引っ張って路地裏に身を隠した。
そこでさくらと京はついに再会。今までの事を互いに話し、この国は今危機的状況になっていることをさくらは京から聞いた。
「となるとまずいわね・・・・だけど、何か知らないけど・・・・この事件を解決しないと私達は元の世界に帰れないような気がする」
いきなり唐突なことを言い出したさくらに京は尋ねる。
「何故分かる?」
「女の直感よ。だったらまずは情報収集ね。まだ全然この国の事も知らないから」
だがその時、2人の元に複数の足音が近付いて来る。
まさかさっきの!? と2人は身構えたが、そこに現れたのは人間の女の子と大きな魔獣だった!!