リレー小説第3話


ひょんなことからこの異世界にやって来た春浦さくらは、これまたひょんなことから

知り合いになったこの国の王子であるフレア・R(ロッソ)・焔王・プロメテウスと談笑していた。

「フレアさんと私は同年代みたいね。フレアさんは何時から武術を?」

「物心つく頃から、武術は一通り稽古してもらったよ」

「それなら私と同じね。私は4歳からよ。戦場には出た事無いけど。ちなみに剣道には二刀流もあるのよ。

フレアさんは見たところレイピアみたいだけど・・・強い女の人ってこの世界に居るのかしら?」

「剣道なら僕ではなくてニシキ姫の方が詳しいかもしれないね。彼女もなかなかの手練だ」

「わかったわ。名前からするに私達と同じ種族っぽいし・・・」

「同じ種族…?手合わせしたいのなら彼女の所へ行けば、快く応じてくれるだろう」


さくらは頷くともう1つの疑問をフレアにぶつける。

「わかったわ。それともう1つ・・・銀髪の男の人を探してるの。黒い制服に黒い帽子、黒の手袋に

黒いブーツ、水色の紐飾りが目印なんだけど・・・・知らないかしら?」

「ああ、彼ならつい先日この国を旅立ったばかりだ。知り合いなのかい?」

「知り合いも何も・・・・私の親戚なの。遠いけど。何処に行ったの?」

「そうだったのか。そうだね…彼は船に乗る為にフィオーレに向かったはずだ。

フィオーレへはこの国から定期便の馬車が出ている。それを使うといい」

それを聞いたさくらは当たり前の疑問もぶつけてみる。

「分かった。ちなみに・・・お金はかかるの? かかるとしたらどこか働き口とかあるかしら?」

「運賃はかかるね。そうだね、街の掲示板に行けばなにか仕事が見つかるかもしれないよ」


さくらはその話を聞き、BBSで情報収集して金を数日で稼いだ後に馬車に乗って、

遠く離れたフィオーレ花国へとやってきた。

(ここがフィオーレ・・・・とりあえず騎士団の詰め所に行けば何か分かるかも)

だがその思いを最初からくじくように、町の入り口で鼻にカットバンをした男がつかつかと歩いて来て

抑揚の無い声でさくらに問い掛けてきた。

「そこで何してるの」

「えっ? 人を探してるのよ」

さくらは自分が探している親戚の容姿をその男に伝える。どうやら格好からして騎士のようだ。

「ああーその人って確かフレア王子から連絡貰った人だ。今どこにいるんだろ?」

ルイスは呑気にうーんと首をひねる。

「え、あのフレアさんの知り合いなの!? やっぱりここにきたってのは本当だったのね!?」

ガクガクとカットバンの男、ルイスの肩を揺さぶりながら顔を数センチまで寄せるさくら。かなり必死だ。


ともかく城へと連れて行かれることになったさくらは、そこで1人の女と出会うことになった。

「ええと…俺の姉さんです。姉さん、この子どうやらフレア王子と知り合いで、例の人とも知り合いらしいんだけど…」

ルイスに姉さんと呼ばれた人物は、ふむ、とさくらを見ると一呼吸置いてからこう告げた。

「すまないなご客人。貴女の探し人はもうこの国にはいない。船に乗って別の国へ行ってしまったよ」

「えっ、そ、そんな・・・・!! もう京君はこの国に居ないって・・・・!?」

まさかの王女の発言に、さくらは膝からがっくりと頭を抱えて崩れ落ちる。

「何処に行ったんですか、ねぇ、何処に行ったんですか!?」

王女に詰め寄ろうとしたさくらだったが、そこをルイスと護衛兵に止められる。

しかし王女は「良い」とひと声かけ、ルイス達を下がらせる。


「その男にずいぶんと強い執着がおありのようだな、ご客人」

王女はそう不敵に微笑むと、近くの壁に飾ってあった地図を剥がし目の前で広げ、ある位置を示した。

「その男は今、この国に向かっている。タルナーダ帝国。力で全てが決まる、大きな軍国家だ。」

「軍事国家・・・・ってことは、よっぽどのパワー至上主義らしいわね。それに、皇帝もかなりの武術の

使い手っぽいですね、その口ぶりだと・・・・」

さくらは自分の腰に下がっている愛用の日本刀と脇さしを握り締めながらそう呟いた。

「いや、皇帝殿はもう一線を退かれ今は隠居なされている。手強いのは軍のトップの奴らだな。だが皆、基本は話のわかる奴らだ」

ただ…、と王女は少し困ったように続ける。

「その中に一人、戦闘狂がいるがな。そいつも話せばわかる奴だが、捕まったら手合わせを強いられるのは避けられんな」

「でも、私も15年のキャリアがあるから・・・。それにしても凄そうね、その戦闘狂って。となれば、捕まらないようにするだけ

ですけど・・・・何か捕まらないコツとか、抜け道とかってあります?」

話せば分かると彼女は言うが、どうにもそんな気がしないというのがさくらの気持ちである。

「京君は心配ね・・・あの人はあの格好だと間違いなく・・・・」


「捕まらないコツ、か…。とにかく細道に逃げる、といったところか。あの国は細い路地が多いからな」

「なるほどなるほど、細い道・・・か・・・・」

なんだか納得したさくらだったが、その戦闘狂はどんな人間なのかを聞いてみる。

「年齢とか、職業とか、髪の色とか分かれば・・・・・」

何とか鉢合わせないようにすることは出来るんだけどなぁ、と心配になるさくら。

「年齢は20代だろうな。職業も何も奴は軍の大佐だ。薄いブロンドで、頭に緑のヘアバンドをしているのが特徴の奴だ」

「ふむふむ、なるほど。大佐ね・・・・私の世界ではありえないけども・・・・」


20代って大佐ってありえないんだけどなぁ、と思ったりしていたら、ルイスからジョゼファとの手合わせの提案が。

「ふむ、そうだな。折角だご客人。軽くでいい、私と手合わせしてみないか」

「ええー、私とですか? 結構お姉さまも強そうですよね」

さすがに真剣を使った手合わせは出来ないので、模擬刀を貸してもらう事にしてもらい鍛錬場へと向かう。審判はルイスだ。

「手合わせだからやっぱり手加減したほうがいいですか?」

「手加減は無用だ。だがどちらかが怪我を負ったらその場で終了だ。傷つけるのが目的ではないのでね」

「わかりました。それじゃあ・・・・本気で行かせて貰いますよ」

一気に闘争心を高めたさくらは、脇さしも使って二刀流での対決を試みる。

(剣道でも二刀流があるからね。余り知られていないだけで・・・・・)

そうして、ルイスの開始合図を待つことになった。


「はい、じゃあ試合開始!」

開始の合図と共に地を蹴ったさくらと、それを迎え撃つジョゼファ。

そして10分ほど打ち合って、結局決着はつかずにお互い激しく息を切らしていた。

「はー、はー、はぁ・・・・さすが王女様ですね・・・・はぁ、はー・・」

「いやいやご客人…そちらもなかなかの手練と見た…ハァッ…」

「どうもありがとうございました。それじゃあ、私はそのタルナーダ? って所を目指します」


第4話へ

HPGサイドへ戻る