リレー小説第3部第17話
「大事な話ってなんだ?」
今のフレアは完全にただのポンコツで使い物にならないと判断したのか、ずいっとレオが割り込む。
「いやほら・・この国の魔物の話やろ。この幽君が話を聞く限り前にどえらい目にあった言うてんねん。
っちゅー事はやで、その魔物がこの国の町にまた被害をもたらさんとも限らんわけで。・・しかも女王様から
聞いた話によれば以前、王子とフロレアそしてその他の人間のおかげで魔物を撃退したっちゅー話やあらへんの?」
流斗はさっきの話の真偽を確かめる様に、当事者だったと言うフレアとフロレアの方をチラリと見た。
フロレアはその発言を受けて、ああ!と声を上げた。
「そういえば説明してませんでしたね!でも……その……」
しかしフロレアはどことなく歯切れが悪い。と、フレアが口を開く。
「…幽さんの前で、その魔物の話はしたくない。魔物はおそらく幽さんの担当なのだろう?だったら君は
魔物のことを考える必要は無い」
レオも「そうだな…」と少しバツが悪そうに頷く。これ以上聞くのは地雷だ、そう流斗は感じた。
そうこうしている間に、女王の準備が整ったようで、ルイスが厨房に皆を呼びに来た。
「姉さん準備できたから出撃するって…ってフレア王子にレオ?増えてる?…まあいいか」
ルイスは人数が増えていることに特に興味を示すことなく、全員を城の外へ案内した。
外には女王が待っていた。女王は一行を出迎えると、城下町から少しそれた薄暗い森に行くと言った。
「以前、魔物はその森の中にある小屋に住んでいたからな。そこなら遭遇率も高かろう。それに、街中でないぶん派手に暴れられる」
では行くぞ。と一行は森へ向かった。そして女王も弟と同じく、人数が増えたことに対しては特に興味も関心もなかったようだ。
本当であれば、流斗はその魔物の事を話して欲しかった。
(トラウマなのは分かる。でも、俺はその魔物の事を知らん訳やから・・・情報が全く無いままで行くのは正直危険過ぎるやろ。
森の中の小屋に住んでいた、と言う事は過去形やから・・今は違う場所に潜伏している可能性も十分に考えられる訳やな)
考え込む余り歩くペースが周りの人間達に対して遅れがちになりながら、流斗はアゴに手を当てて考え込む。
(それに、もし俺がその魔物と1番最初に出会ってしもたらどないする? 俺はあの兄貴に口を不思議な力で閉じられて
声が出せへんかった。つまりファンタジーな世界やから魔法とか何でもありって事やろ。・・もし相手が魔法使いなら? もし相手が
相当な武術の使い手なら? もし相手が相当耐久力のある奴やったら? 知略に長けていたら? 素早かったら?)
そう考えるとますます相手の情報が無いと言う事は勝てる見込みがそれだけ薄くなるという事じゃないか、と冷や汗をかく。
(向こうの方から寄って来てくれると言う事やったら、ここは思いっきり期待するしかあらへんやろ・・・幽君にその魔物が寄って来てくれる様に!)
と、前を歩く集団が足を止めた。考え込んでいたが故にそれに気づかず、流斗はどんっとすぐ前を歩いていたレオにぶつかる。
なんだ?と思ったが、周りの空気が先ほどまでと違っていることにすぐに気がつく。
「……来る」
誰かがそう発したその時、一行の目の前に人影が揺らいだ。
その正体にいち早く気付いたのは幽だった。
「…よう、久しぶりだな。─×××」
幽が最後になんといったのかはよく聞こえなかったが、目の前に現れた人影はダッと踵を返し走りだした。
「っ!総員!あの人影を追うぞ!おそらく向かう先に主犯がいる!」
女王の号令とともに、幽と流斗以外は走り去る人影を追いかけて行った。