リレー小説第3部第15話
「そうだな、データに関してだが、これはもう意味をなさない。先ほども言ったが、幽がいる以上あちらからやってくる」
女王は腕を組みながらそう答えた。
「囮は幽一人で十分だ。それ以外の人間…私とフロレア、ご客人は魔物の後を追い主犯を捕捉する
役割だ。ルイス、お前も来るんだぞ」
最後の言葉に、女王の弟の騎士団員は「ええ〜?俺も?最悪…」と肩を落としていた。
その後の作戦だが、敵がわからない以上対策は練れない。となれば、正面突破だ。主犯を見つけたら迷わずそいつを狙う」
そう言うと女王はドンっと勢いよく机を拳で叩いた。
女王がテーブルを叩いた衝撃で、テーブルの上の食器が揺れる。
凄い決意だなーと流斗は何処か冷めた感じでその様子を見ながら、うーんと腕を組んだ。
「それじゃあ魔物は幽君に任せておけばええんやな。で、俺達は幽君の周囲に目を光らせる。そして主犯が出て来たら
一気に捕らえる。メンバーは少ない方やけど・・・まぁ、少数精鋭の方が返って動きやすいかも知れへんな」
コップの中のアップルジュースをグイッと飲み干して、飲料メーカー商品開発部所属の流斗はジュースの評価をしながら
軽くハイキックしてストレッチ。
「甘味の中に僅かな酸っぱさがあるジュースやね。100パーセントの天然物やな。・・・俺も50近いから何処まで
協力出来るかは分からんけど、よろしくお願いします」
そうして流斗は頭を下げてお願いし、こうして魔物の討伐チームが結成された。
そんな光景からさかのぼる事5分前。王子と傭兵のチームはあの喫茶店で大変な事になっていたのである・・・。
「また異世界から人が来ただァ!?寝言もほどほどにしろよオカマ!」
「うるっさいわね!アタシだって困ってんのよ!オネエさんって呼びなさい!」
フランから事情を聴き、思わずレオは素っ頓狂な声を上げる。
「ってことは今まで追ってたあの男は異世界から来た人間だったのか…!で、フロレアも花の女王さんに呼ばれただけで
別に事件に巻き込まれたわけじゃねえと」
レオはフランの話を簡潔にまとめると、なんだ、そんなことだったのかよと一人納得しうんうんと頷く。
だがフレアは納得がいかないようだった。
「どうしてフロレアは僕に護衛を頼まなかったんだ…僕よりあの男の方が頼り甲斐があるということなのか…」
なんだか別のベクトルで落ち込んでいるような気もするが、ひとまず危険は無いということが確認できたので
レオはフレアを放っておいてフランに話を持ちかける。
「じゃあ花のとこで何か起こってるってことなら、俺らも加勢に行ったほうがいいよな?だから魔女さんよ、俺たちをフィオーレに飛ばしてくれ」
フランは快く承諾する。
「ええ、その方が女王さまも助かると思うわ。ここだけの話だけど、真犯人は反乱の時と同じでいきなり国にぽっと出てきた人間よ。
盛大に暴れてぶっ飛ばしてやんなさい!」
そう言ってフランはガチャリと喫茶店の扉を開ける。レオは未だに何かブツブツ言っているフレアの首襟を引っ掴むと、その扉に入っていった。
まだ女王達の準備には時間が掛かると言う事なので、とりあえず流斗は前払い金みたいな形で先に幽にたこ焼きを作る事に。
ちなみに道具と材料は幽が荷物で持っていた。道具の形は少し違えど、たこ焼きの焼き方は地球と全く変わらない。
「幽君は関西に住んだ方がええんちゃうかな。まぁ、関西人が全員たこ焼き器持っている訳やあらへんけど」
道具が発熱する原理は魔法のエネルギー鉱石らしい。自分のドライビングテクニックの師匠であるカラリパヤットマイスターの
兼山と違ってファンタジーな世界に疎い流斗は良く分からなかったが。
「あちっ! ああ・・・少し焦げた・・・外はカリカリ、中はヒヒョヒヒョが関西のたこ焼きやね。関東のたこ焼きとはまた違うんや」
ブツブツ言いながらたこ焼きを焼く流斗に、幽は複雑な面持ちでそれを見ていた。