リレー小説第3部第14話


フレアたちは目撃情報をもとに森までたどり着いていた。

しかし森でガルに会い、ガルが空白のチケットを渡したことを聞くと頭を抱えてしまった。

「あの喫茶店に行ったら、その先どこに行ったかわからないじゃないか…!あそこはどこからでも行けて

どこにでも行ける場所なんだから…!」

フレアは「うあああ…」と頭を振りながらその場にしゃがみ込む。

そんな様子にオロオロするレオ。

「フ、フレア!そんなに悲観することねえって!順路通りならスヴェートに行ったかもしれねえし!な!大丈夫だって!」

しかしフレアは「間に合わなかったらどうするんだああ…」と聞く耳を持たない。

それを見て、ガルは少し呆れ気味に二人に言った。

「フレア、レオ、チケット持ってる。そのチケット使って魔女に聞けば早い」

二人の「それだ」と言わんばかりに目を丸くしてガルをガン見する姿はなかなかに貴重だった。


一方、城には女王に呼ばれた男がやってきていた。

白い仮面をつけ、黒い装束に身を包んだ男は、なんともいえない気だるさとやる気のなさを醸し出していた。

「へいへい、たまたま近くに来てたからそのまま来てやったぞ、っと」

「なぁなぁ、フロレアちゃん・・・この男やる気あるん?」

フロレアに思わず流斗は耳打ちでそんな事を問い掛けるが、フロレアは何とも言えない困ったような口調で曖昧に返事をする。

(大丈夫なんか・・俺、この男信用してええんか・・・・?)

うーん・・と心の中で悩む。仮面の下の目は見えないが、すげぇやる気の無さそうな目をしてそうな事だけは今の口調と

気だるそうなオーラから感じ取る事が出来た。


とりあえずこのまま黙っている訳にもいかないので、流斗は挨拶。

「あー・・えー・・俺、流斗って言います。よろしく。ええと、46歳。この世界にあるかどうかは分からないけど、たこ焼きっていう丸くて

たこが入った物を焼いた食べ物が有名な地域の隣の地域からやって来ました。どうぞよろしく」

ぐっと握手をする流斗だったが、たこ焼きと言う単語を聞いた男が何故か強烈な勢いでその握手の為に握った

流斗の手ごと彼を引き寄せた。

「あんた、たこ焼き持ってんのか!?あん!?たこ焼きくれるって!?いいぜやる気出してやるよ」

なぜか勝手にたこ焼きをもらう約束をこじつけた男の目は、先ほどと違ってギラついていた。

こいつ…たこ焼きに何の思い入れがあるというんだ…!


「ちょちょちょ、ストップストップ! いきなり何やねん!? え・・この世界にもたこ焼きあるんか? まぁ、大阪の友達も居ない事は

あらへんかったし、関西人イコールたこ焼きと言うイメージは鉄板やからな。作ろうと思えば作れへん事は

無いけど・・・俺は自炊余りせぇへんし、たこ焼きも余り上手く作れんよ。・・道具があって形がブサイクでも良いなら作るで・・」

その余りの変わり様に、内心でドン引きしながらも流斗は苦笑いで返した。

「と、とりあえず自己紹介頼むで・・後、出来れば仮面外してくれると助かる・・その仮面で近付くと若干怖いんや・・」

「んあ?ああ、俺は幽(かすか)。仮面は事情で外せねえ。以上」

スッ、と先ほどのけだるい感じに戻ると、幽は簡潔に自己紹介をした。

そして自分が呼ばれた理由と、問題の内容は女王から教えてもらい把握していることも説明した。


「せっかく吹っ切れたと思ったのに、こんな最悪な形で再会することになるとはなあ…」

幽は誰にも聞こえないような声でぽつりと呟いた。

「ま、魔物の方は俺に任せろ。あんたらは魔物の後を追って主犯の人間を引きずり出してくれ」

結局たこ焼きを作る事がこの世界でやるべき事の1つになってしまった流斗は、先程のデータを教えて貰える様に頼む。

「例えば人間に化けているって言うのであればどんな風貌なのか、それから魔物を見かけた場所は国のどの辺りだったのか、

囮作戦をやるとしてどう言った人選をするのか、俺が魔物の後を追うとしてその後の作戦はどう言う感じなのか・・・幽君だっけ、最悪な形で

再会したなら、その最悪な形を最高の形で撃破してやるだけやないか」

最後に何故か幽にエールを送り、流斗はテーブルの上のロールパンをちぎって一口大にして口に放り込みながら他の人物達の回答を待った。


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