リレー小説第3部第13話


中国式のテーブルマナーは心得ているのだが、洋食関係のテーブルマナーはどちらかと言えばあやふや。

しかも孤児院で育った為にこうした王族関係者と食事をする事などは夢のまた夢のまた夢。

(いや、一般人でも夢のまた夢や無いか・・・)

何考えてんねん、とセルフツッコミを流斗は入れつつ、サラリーマン生活の中で心得ただけの

洋食のテーブルマナーで食事をする。

「あ・・美味しいです・・ありがとうございます・・・」

苦労人として育って来た為に謙虚な姿勢を忘れない流斗だが、今の状況なら何時にも増して輪をかけて

謙虚な姿勢で居よう・・と心がける。

「では食事しながらで申し訳無いんですけど、この国で起こっている問題についてお伺いしても

宜しいですかね? 今までの口ぶりからすると反乱だの遺跡での魔物の出現だのと何やら物騒な話だったって事ですけど、

この国でも何かそうした反抗勢力が出現しているとか、何やら魔物が出現したとか、遺跡が見つかったとか、もしくはまた別の問題が?」

俺はこう言う異世界に詳しく無いから分からないですけど・・・と流斗が言う。詳しい話はこのフィオーレの王女が

してくれると言うので、その問題の内容を言ってくれるのを待った。


「そうだな、魔物が出現した、というのが一番近いかもしれんな」

女王は食事を取る手を止め、食器をかちゃりとおくと、内容を説明し始めた。

「以前、この国に強力な魔物が潜んでいてな。そいつは昼は人に化け、夜は怪物に戻りこの国を襲っていたのだが…フレアや

フロレアのおかげでその魔物は退治できたんだ」

だが…と女王は唸る。

「その魔物が、復活したらしい。おそらく、誰か手引きをしたものがいるのだろう…魔物は我々は一度戦っているから

いいのだが、その誰か、に関しては全く手がかりがつかめなくてな、困っているのだ」

そう言って首を振る女王の顔には、疲労の色がうかがえた。ずっとその誰かの手がかりを探っていたのだろう。

「何だかけったいな話になって来てるやないですか。となれば・・・魔物に関しては俺は専門外ですからそちらに任せるしか

無いと思うんですよ。でも、その魔物を操っているという人間を探すのは俺も手伝う事が出来ると思います」


でも・・と流斗は腕を組んだ。

「まだ情報が少なすぎますね。例えばデータはありますか? 魔物が何時、どの辺りで、どれだけの頻度で出てきているかとか

そういうの。・・・これは俺の勘でしか無いんですけど、操る事が出来る人間って絶対近くに居ると思うんですよ。でも魔物の力が

強力だから近付けなかった訳で、その間に操る事の出来る人間が姿を眩ましたとか・・・まぁ真面目に勘やけど」

それに、と更に流斗は続ける。

「昼は人間に化けているって言う話やったけど、そんなに普通の人間と区別がつかへんもんなんですかね? もしそうだとしたら

結構厄介になるんや無いかと思いますよ。だから・・ここは思い切って囮作戦、というのはどうでしょうか」

誰かが魔物が化けた人間の後を追いかけて、操っている者の正体を突き止める・・・と言う提案を流斗がした。果たして王女の反応は?


「囮作戦か…なるほど、いいかもしれんな」

女王は軽くその案に乗ってくれた。しかし考えればそれが一番確実な作戦ではあるだろう。

「ならば、もう一人呼ばねばならぬ人間がいるな。彼の到着を待ってから作戦に移るとしよう」

女王はくくく、とまるで悪役のような笑みをこぼす。

「彼がいれば、魔物の方から寄ってくるからな」

「彼・・・?」

それは誰ですか? と聞いてみる。協力者が居るなら事前に素性を知らなければ信用できないのが世の常だ。

魔物の方から近寄ってくるというのであれば相当不幸体質なオーラを出していたりするのか・・? 等と突拍子も無い事を

考えながら流斗は王女の答えを待つ。


「ここで名前を言ってもご客人にはわからんだろう」

女王は至極まっとうなことを言う。

「彼は違う国の暗殺部隊の人間だ。闇に生きる影の人間だな。彼もまた異世界から人が来ることは知っている。安心してもらっていい」

そうして、女王は何かお札のようなものを取り出すと、札に向かって「幽を呼んでくれ」とつぶやいた。

そして札をぽいっと放り投げる。

と、同時に札はポンっと白い鴉に姿を変え、パタパタと城の窓から飛んで行った。

暗殺部隊と言う事は何やら闇のオーラが漂う人間なのか・・・? と少しワクワクしてみる。

一体どんな人間なのだろうか。ソリが合うと良いんだがなと思いながら流斗はその男が来るのを待つ事にした。

その一方で、一目散に飛び出して行った一国の王子とそれを追いかけて行った傭兵が確実に流斗の元へ追いついて来ている事は当然知らずに・・・。


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