リレー小説第3部第11話
「フランさんフランさん、この人悪い人じゃ無いですよ。じゃなきゃ私の護衛引き受けてくれないですもん…」
フロレアは流斗の発言を受けて、おずおずとフランに告げる。
しかしフランはあまり面白くなさそうな顔のままだった。
「…フロレアちゃんに免じて大目に見てあげるわ。不可抗力とはいえどこっちはいい迷惑なのよ。
だからさっさと解決してとっとと元の世界に帰ればいいんじゃない?詳しいことは女王様に聞くのね」
そう言ってフランはガチャッと前回のように喫茶店の扉を開く。
「アタシはね、空間の魔女とは言われるけど、さまざまな平行世界を管理している立場上、それぞれの
世界に対して直接的な介入はできないの。つまり、助言や場所移動ぐらいならできるけど、がっつり手伝うことはできないわ。
だからここから先は自力でがんばんなさい」
ドアの先は真っ白だったが、明らかに先ほどまでと雰囲気が異なっていた。おそらくこの先はフィオーレにつながる何かなのだろう。
そしてフランはここを通れと言っているのだろう。
「ああ・・そう・・・。ま、フィオーレまでの道を作ってくれて感謝するで」
おおきに、と言って流斗はフロレアと共に喫茶店の外へと出る。
するとまた視界が変わり、喫茶店はスーッと消えてしまった。
「ここか、フィオーレ言う国は・・・。さっきのヴァルクオーレ? とも・・えーと最初のあの軍人が居た国ともまた違う雰囲気の国やな。
そう言えばさっきの兄貴・・あ、いやお姉さんはここで何か問題が起こってて、俺がこの世界に来てしもた原因が
その問題の原因でもある・・っちゅー事やろ?」
そうフロレアに問い掛けるが、明確な返答は得られなかった。彼女自身もこの国で起こっている問題については詳しく知らないらしいのだ。
「とにかく城に行きましょう。女王様に会いに行くのが第一の目的ですから、女王様に会えば詳しいことがわかると思います!」
それもそうだな、と思い、ここは素直にフロレアの言うことを聞くことにする。こうして二人はまずは城へ向かうことにした。
「うわぁ、でっかい城やな。でも花の国? っちゅーだけあって何だか何処と無くファンシーな雰囲気って言うか・・・こう・・・」
上手く説明でけへんけど、と流斗は城を見上げながら言う。
この城の中に自分達が会うべき人物が居るのだろうか? だとしたら善は急げとばかりに城に向かって流斗は足を進める。
だが、そんな2人に向かって来たのは頭にヘアバンドを巻いて鼻に絆創膏を貼っている、何だか覇気の無さそうな男だった。
格好からするとどうやら騎士団員の様だが・・・?
「フロレア…くるの遅い」
「わあ!ルイスさん!すいません!遅くなりました!」
どうやらこの男もフロレアの知り合いだったようだ。ということは騎士団員で確定か。
何てことを考えていると、ルイスと呼ばれた団員が流斗を訝しげに見つめていることに気づく。
「フロレア、この人は?」
「ああ!この人は流斗さんですよ!ここまで私の護衛をしてくださったんです!大丈夫!怪しい人じゃ無いですよう!私が保証します!」
へへん!とフロレアは自分の胸をトンッと叩く。そしてちょっとむせる。そんな様子に「大丈夫かなあ…でもフロレアが連れてきた人だしいいか…」と
ルイスはぼやきながらも、「ついてきて」と二人を謁見の間へと案内した。
謁見の間には、茶髪に赤いリボンをつけ、鎧を身にまとった凛とした女性が一人。彼女が女王だということは、その雰囲気と何とも言えぬ
威圧感から一目瞭然だった。
「やあフロレア。久方ぶりだね。そしてようこそ、招かざれぬご客人よ」
「ここでも俺そんな扱いなんか・・・」
流斗はがっくりと肩を落とす。この女王に会えば何かが分かるかも知れないと思ってここまで来たのだが、
まさかの第一声があの兄貴に言われた事と同じ・・と言うのは結構ショックだ。
「まぁ・・ええです。俺は流斗って言います。・・・何か、雰囲気が似てる様な・・」
その最後の流斗のセリフに女王は「ん?」と首を傾げる。
「ああ・・俺の武術の師匠に何処と無く雰囲気が似てると言えば似てるなーって思いまして。和美って言う女なんですけどね、
髪を赤と金の2色に染めてる目立ちたがりの自意識過剰女ですけどめちゃめちゃ強いんですよ。もしここにその和美が居たら、
きっと貴方と手合わせしてたと思うんですけどね」