リレー小説第2話

リレー小説第2話


「俺が話す事は何もないんで、とっとと解放してくれないか? セオリー的にそっちにとっても

余計な揉め事は起こしたくないっしょ?」

「そうは言われてもね?こちらの治安を守る為にも、少しでも不審な人物は調べないと」

京は腕を後ろ手に縛られたまま考える。どうにかしてここを抜け出し、またさくらに会いに行かなければいけないのだから。

「調べないと、とは言うけど・・・ここに来てもう2時間は経過してる。もう良いだろ?それともまだ何かあるのか?

と言うかよ、異世界の事だって結構話しただろ。何処が嘘だと思うんだよ?」

「そもそもここと違う世界があるという話を聞いたことがない。逆に問おう。その証拠はあるのかい?」

「こういうもの、こっちの世界にあるのかよ?」


そう言いながら京は財布から免許証を取り出した。

尋問の時に手荷物を色々と調べられるのかと思っていたが、持ち物検査をされなかったのは意外だった。

ジャケットの下のホルスターにはハンドガンも収まっているが、それも出すことにする。

「拳銃だ。見たこと無いだろ?」

「ああ、拳銃だな。馬鹿にしているのかい? 生憎だが僕には拳銃の名手の知り合いがいるんだ。別の国の人間だけどね。

しかしこのカードみたいな物は見たことがないな…というより手荷物検査をし忘れていたな…まあいざという時はフロレアの

魔法があるから大丈夫か…」

そう言うとフレアは免許証を手に取った。

「居るのかよ。しかし・・・この免許証は見たこと無いだろ。写真にプラスチック。こんなもの、こっちの世界にあるのかよ?」

「確かに、これはこの国にはないな。だが他の国にはその…プラ何たらだってある可能性もある」

「そう言われてもな。じゃあ逆にどうすれば良い? 異世界の武術でも見せた方が良いのか?」


話は平行線を辿り、膠着状態が続いているとフロレアがあのう…とフレアに何かを耳打ちした。

それを聞いたフレアは目の色を変え、なんでもっと早く言ってくれないんだとフロレアを軽く小突くと京に視線を戻す。

「…貴方の話を信じよう。今しがた、仲間がどうやらその異世界とやらに飛ばされたことがあると言ってきたからね…」

「・・・・そう、なのか? ちなみに飛ばされた時は一人ぼっちだったのか?今の俺のように」

「一人ではなかったようだ。彼女曰く素敵で頼れるかっこいい女性と無理難題を押し付けてくる貴族らしい男性と3人で共闘したと言っている」

「そうなのか。かっこいい女性・・・ねぇ。セオリー的に貴族は傲慢だとしか思えないっしょ」

「そうだな、僕も傲慢だとしか思えないな…」

「その異世界と言うのが地球かどうかは分からないが、とにかく信じてもらえて助かった。と言う訳で俺をここから出してくれないか?」

「その前に異世界の武術とやらを見せてもらえないかな。少しだけでいい。見せてくれたらすぐに解放しよう」

「分かった。なら・・・・エスクリマで行くとしよう」

そうして手合わせも終了し、貸して貰った木の棒を京はフレアに返す。

「・・・・どうだ、相手の武器を奪うことに長けているのがこのエスクリマだ。フィリピンって言う国の国技で、学校の教育でも

護身術の一環で取り入れられている。フェンシングのテクニックもあるから、あんたのレイピアの技と共通するものもあるんだ」

「なるほど、奥深いな。今後の参考にさせてもらいたいくらいだよ。手合わせありがとう」

「こちらこそ。まだ荒削りだがなかなかセンスはよさそうだ。それで・・・この世界で1番大きな国は何処だ? そこへ行けば

何かもとの世界へのヒントがつかめるかもしれない」

「一番大きな国と言えばタルナーダ帝国だと思うが…。情報が欲しいのなら、ここに行くといい」


フレアはそう言うと、何かのチケットのような物を手渡す。

「・・・・これは?」

「空白のチケット…これを太陽にかざせば『空白の喫茶店』へ行ける。そこにいる人物が、きっと貴方の助けになるだろう」

「1回限りか?」

「1回限りだ。でも彼女に気に入られれば大量に貰えるかもしれないね…リピーターになって欲しくて」

「そうか。それに食料に地図まで持たせてもらって感謝する。一時はどうなることかと思ったが・・・・いい奴だったんだな。

で、そのタルナーダって所にはどう行けば良い?」

「タルナーダはフィオーレ花国から船が出ているから、それに乗っていけばいい。ここからフィオーレまでは馬車の定期便が出ている。それを使うといい」


「分かった。後は商隊の護衛とか何でもして金を稼いでやるさ。手始めに、馬車の利用料は?」

「片道500リッツだ。貴方ほどの武術の使い手なら、すぐに貯められるだろう」

「分かった。もう1つ聞きたいんだが、日雇いの仕事はこの都にどれ位ある?」

「日雇いだと雑用や荷馬車の護衛ぐらいしか無いとは思うけど…城下町の掲示板を見ればたくさん見つかるだろう」

「分かった、BBSだな。雑用も組織に入った時はよくやったし、護衛に関しては今の仕事だから問題ない。俺はもう行くよ」

そうしてフレアとフロレアと護衛の兵士2人に見送られ、京は城下町のBBSへと向かった。


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