リレー小説第3部第9話
「しっかり掴まれば問題ない!よし!しゅっぱつ!」
流斗は希望通り一番大きな魔獣の背中に乗せてもらい、フロレアは小柄な魔獣に、そしてガルは
ラルフに跨り、ガルの合図で一行は出発した。
薄暗い森の中を、ガルとラルフを先頭にのっしのっしと進んで行く。
しばらく進むと光が差し込み始め、道が開けてきた。
「おー、やっと森を抜けたな!!」
流斗はこの薄暗い森から無事に抜けられた事に内心で胸を撫で下ろす。
陽の光を浴びるのはやっぱり大切なんだなー、と思いながらこのままスヴェートまで何事も無ければいいと願う。
「で・・このままついて来てくれるんか? それともまた俺と彼女で2人旅?」
それに出したガルの答えとは・・・。
「ガル、ついていけない。森でやることある。その代わり、これをやる!」
ガルはゴソゴソと腰にぶら下げた巾着の中から、どこかで見たような白紙のチケットを取り出す。
そしてそれを流斗にはい、と手渡した。
「あれ、こ、これってもしかして・・・空白の喫茶店の?」
その問い掛けに何で知ってるの? とフロレアとガルから問い掛け返される流斗だが、流斗は正直に
アレックスに出会って・・そして今の状況になった所までを話した。
「あー・・知らんかったとは言え・・・もしもう1度会えるなら謝らなきゃあかんな。あの兄貴にな」
流斗はうん、と決意する。最後の一言は余り反省していない様に思えるが。
そうして流斗はガルに礼を言って、フロレアと一緒に空白のチケットを太陽にかざす。
しかし、その一方で先程流斗が脱出して来た街では別の事で騒ぎが起こっていた・・・。
「フロレアがいない!?」
珍しくフレアの大声が上がる。
街で流斗の捜索を続けていたフレアたちは、その一方でフロレアが神殿にいないという報告を兵士から受けていた。
城内も探してみたがフロレアはどこにもいない。フレアは頭を抱えた。
「なんてことだ…何か変なことに巻き込まれたか、それとも僕の身を固めるために彼女を誘拐…?」
とにかくフロレアを探さなくては、と、フレアは当初の目的を変更し、フロレアを探すよう兵士たちに指示をした。
そして自身も、このままじゃ居ても立っても居られないし捜索に加わろうと動いた瞬間、「フレア!」と叫びながら
こちらへ緑のハチマキを揺らしながら男が走り寄ってきた。
「レオ!何かあったのかい!それとも不審者を…」
「それどころじゃねえよ!おい大変だ!フロレアのやつが、あの怪しい男と一緒に街から出てったの目撃したやつがいるって!」
「なんだって…!?」
レオの報告にフレアは血相を変えてその場から飛び出す。
「フレア様!どこへ行かれるのですか!」「フレア様!」と兵士が止めようとするも、フレアは「うるさい!」と振りきり、
街の外へ走り去ってしまった。
「ックソ!フレアの馬鹿野郎!どこへ行ったかも分からねえってのに…!」
レオは頭をかきながらフレアを追いかける。
「フレアは俺に任せろ!あんたらは不審者が戻ってきたときに備えて厳戒態勢でもとっといてください!」
そうレオは兵士たちに言い放つと、フレアのあとを追い走って行った。
流斗は再びあの喫茶店の前に立っていた。
しかし、今度はフロレアも一緒だ。これが吉と出るか凶と出るかは分からない。
それでもこうしてここまで来てしまった以上、目の目にあるこの喫茶店に入るしか無いだろう。
「行くしか無いやろな・・・」
ポツリとそう呟くが、まともに入って行ったのではまた追い出される可能性が大である。
んーどーすっかなーと流斗が考え、そしてひねり出した答えがこれだった。
「仕方無い、日本人の謝り方っちゅーもんを見せるしかあらへんやろ、この異世界の人間達にな!!」