リレー小説第3部第8話
そのまま、フロレアは完全に立ち止まってしまった。しかし、周りには流斗が確認できる限りでは何かの気配は感じない。
ではなぜ立ち止まったんだ?と思考を巡らせていると、彼女が唐突に声を上げた。
「大変ですう!道に迷ってしまいましたあ!」
「何でやねん・・・」
関西弁の代名詞とも言える突っ込みを入れる流斗。
土地感が自分にとっては全く無いので、頼りになるのはフロレアだけ。しかしそのフロレアが迷ってしまった・・となれば、
これはもう目指すゴールはただ1つ。
「このまま俺達餓死してしまうんか・・・? とにかく、来た道を思い出すだけ思い出して戻るのが手っ取り早いと思うんやけど。
あ、でも目印とか何もつけて来ーひんかったし・・・」
昔の童話なら迷わない様にパンのくずを目印に置いて来て、そして鳥にそのパンのくずを食べられる・・と言う展開になってしまう。
(って、結局それじゃバッドエンドやんけ!!)
思わず心の中でセルフ突っ込み。
しかも「パン」とか「鳥」とか言うワードで自分がこの世界に来てからまだ何も口にしていない事に気がつく。
「あー・・腹も減った・・・どないすればええんや・・・」
しかしその時、2人の耳に何かの足音が聞こえて来た!!
「あれ…フロレア?」
二人の元に現れたのは、褐色肌の小さい女の子と、その女の子の倍はあるだろう大きさの薄緑色の狼にも似た獣だった。
流斗は敵か、と、すぐ抜けるように青竜刀を抱え直す。が、その横でフロレアがパッと嬉しそうに顔を綻ばせ女の子に駆け寄った。
「ガルちゃん!ちょうどいいところにいました!助けてください!」
「フロレア、また道に迷ったか?ふふん!フロレアはガルがいないとダメだ!」
ガルと呼ばれた女の子は誇らしげに胸を張る。そのとなりで魔獣は退屈そうにくああ、とあくびをしていた。
この女の子と魔獣が、フロレアの言う「お友達」なのか・・? と流斗はポカンとする。
魔銃なんて見たのは初めてだけど、雰囲気的には普通の動物と変わらなさそうだ。
一先ず初対面なので流斗は挨拶。
「あー、えー・・ど、どうも初めまして・・・流斗って言います。ええと・・・フロレアちゃんのお友達? ガルちゃん・・・で良いのかな?」
この1人と1匹が自分達を助けてくれるのだろうか? 流斗の頭には今そんな疑問しか思い浮かんでこない。
「流斗?ガルはガル!こっちラルフ!」
ガルは元気に挨拶を返すと、隣にいる魔獣を紹介した。魔獣はあくびで返事を返す。
「で、フロレア。今はどこ行きたい?」
簡単に自己紹介を終えると、ガルはフロレアにそう尋ねる。フロレアがそれに「スヴェートですよ!」と答えると、ガルはうむ、と手を
顎に当て、深く考え込むような仕草をした。
しばらくそうしたあと、突如目をカッと見開き「あっち!」と勢い良くとある方向を指さす。どうやらその方へ進めばスヴェートへ
辿り着けるぞ、ということのようだ。
けど流斗は首を横に振る。
「すまん、もう1つ頼みがあるんや。何か食べ物持ってへんか? 俺飲まず食わずなんや。
それか・・あの、スヴェートまで・・送ってくれへんか? 一発ギャグぐらいならやるから・・・」
何だか非常につりあいの取れない交換条件を流斗は出す。こんなんじゃ断られるだろうな・・と思いながらガルの返事を待った。
「食べ物?そんなもの、ガル持ってない!この森、自給自足!お腹すいたら自分で取ってくる!基本!」
あまりにもきっぱりとガルが言い放ったため、逆にフロレアが慌て出す。
「ガ、ガルちゃん!そうはいっても非常食とか、そういう備え的なものはあったりするんでしょう!?それを分けてあげたりとかは…!」
「非常食、ない!」
またもやきっぱり返され、なぜかフロレアが両手を地面につきがっくりうなだれる。
そんなフロレアの様子を見ながら、ガルは続ける。
「食べ物ないけど、送ることできる!ここには家族たくさんいる!家族に頼めばスヴェートまであっというま!」
そういうと、ガルはピィ!と指笛を鳴らした。その音が合図なのか、三人と一匹の周りに続々とラルフと同じような魔獣が集まってくる。
「みんなガルの家族!フロレア!流斗!誰に乗る?」
「おおきにおおきに!! 助かるで!! あー・・それじゃあ・・・この中で1番でかいのに乗せてもうとしよか」
普段からアリストと言うでかい車に乗っているからなのか、大きいボディじゃないと何だか安心出来ない流斗。
「問題は乗り心地やな。それと俺がちゃんと振り落とされずに乗れるかどうかや」
別に掴まっていれば問題無いんやろ? 流斗は聞いてみる。その答えを貰ったら出発しようと心に決めて。