リレー小説第3部第7話
「どこだ!探せ!」
「こっちにはいないぞ!」
「向こうへ行ったか!?」
バタバタと兵士が慌ただしく街中を駆け回る。幸い、路地裏までは捜索が回っていないようだ。
しかし今出て行くのはまずい。しばらくここで息を潜めていたほうがいいだろう。
しかしそれは無理そうだった。なぜならこの路地裏にはもう一人いたからだ。
「うう、大変なことになっていますねえ…何かあったんでしょうか…」
いきなり話しかけられ、流斗はびっくりしながらバッと声の主の方へ振り向いた。
そこには長い青髪の、すこしおどおどした少女があわあわしながら立っていた。
「だっ、誰や御前さん!?」
緊張のあまり人の気配に気がつけなかった流斗だが、その女は流斗の事を知らない様だ。
「と・・・とりあえず、お願いがあるんや。何か金を稼げる方法が欲しいんや。俺、今ちょっと訳ありで一文無しやねん。
で・・ちょっとこの国の人間には余りばれたく無い・・お、俺シャイな性格やから。出来れば求人情報とか・・・あれば
教えてくれへんかな? 俺ここで待ってるから!!」
「私はフロレアです。この国の神官ですよう」
と、フロレアはのんきに自己紹介をした。が、相手はのんびりしている暇はないらしいことに気づくと、あわわ!と慌てだす。
「す、すみません!自己紹介してる場合じゃなかったですね!お金ですか?なら、私これからフィオーレ国に行かなきゃ
いけないんですよう。でも私戦いは得意じゃなくて…なので私の護衛をしてもらえないでしょうか?本当はフレア王子か
レオさんに頼もうと思ってたんですけど…」
と、ここでフロレアは口を噤む。
「…今、フィオーレでいろいろ大変なことが起こってるらしくて…私はそこの女王様に呼ばれて行かなくちゃいけないんですけど、
そんな大変なところにフレア王子を巻き込んでしまうのは忍びなくて…だからあなたが付いてきてくれたら大助かりなんですけど…」
どうでしょうか?とフロレアはおずおずと流斗に尋ねる。それに対して流斗は…。
「かまへんかまへん、俺にとってもその方が好都合や!!」
流斗は2つ返事でそれを引き受け、人ごみは苦手だから・・とフロレアになるべく目立たないルートを案内してもらう。
「と言っても俺もたいそうな事は出来ひんよ。で・・・そのフィオーレ言う国に行くには如何行けばええんや? 案内してくれるんやろ? ルートとか」
それはフロレアもきちんと考えて・・。
「目立たないルートとなると…馬車は使えませんし、徒歩になりますよ…?とりあえず街の裏から出て、森を抜けてスヴェートから
乗り物を使うルートになりますかね?」
フロレアは手持ちの地図を開き、指でトントンと森を指し示しながら説明する。
「それでもええ。ちーとばかし目立ちたく無い事情があるんや。取り合えずまずはこの街からの脱出と行こうやないの」
そう言う訳でフロレアに案内してもらって街の裏口から出る流斗。こっちの方にはまだ警戒態勢の話は来ていない様である。
「良し、第1関門は突破やな。それから・・・ええと、この先の森には何か魔獣? とか言うものが出たりするんか? 俺は
そう言うのとは戦った経験が無いからあんたに任せる事になると思うで」
「魔獣さんはいるといえばいるんですけど、大丈夫ですよ。あの森には私のお友達しかいませんから!」
そう呑気にフロレアは返すと、るんるんと楽しそうに森へ続く道を歩く。
森に近づくにつれ、辺りもだんだんと薄暗くなっていく。森は鬱蒼と木々を茂らせ、近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。
が、フロレアはそんな森に臆することなくずかずかと入っていく。
「ちょ・・ちょ、おい、大丈夫なん? いかにも何かが居ますっちゅー雰囲気やろ? お友達言うても・・・」
フロレアは友達、と言っていたが流斗にとっては初対面な訳で、非常に不安を煽る事この上無い。
それでも今は彼女を頼るしか方法が無いし、この護衛のミッションを引き受けたのは自分なんだから・・と責任を持って今はついて行くしか無いと悟る。
すると、段々とフロレアの足のペースが落ちて来た。この先にその「お友達」とやらが居るのだろうか? と流斗は前方を見据えた。