リレー小説第3部第3話
アレックスはその申し出に再び目の色を変えると、「こんなこともあろうかとー」とつぶやきながら自身の胸ポケットを
ゴソゴソとまさぐり、一枚の白い紙切れを取り出した。
「これな、魔女さんからもらったチケットなんだけどさァ、これを太陽にかざすと魔女さんがいる喫茶店に飛ばされんの。
これを使えばあんたは魔女さんに会える」
が、とそこで言葉を区切る。
「これが欲しいなら俺様と戦いな。俺様いま超暇してんの!軍部の奴らは今日も意味ない会議ばっかでさァ、俺様退屈で
仕方ねえわけ。だから戦いな。特別に殺し合いじゃなくただの決闘に負けといてやるからさァ!」
楽しそうに語るアレックスの目つきを見て、流斗はこんな一言。
「御前さん、戦う事がそんなに好きか?」
いわゆるバトルマニアって奴なのか・・・と思いつつ、一緒に持って来てしまった青竜刀に目をやる。
「・・1つ聞くけど、模造刀じゃ無くてこの真剣でやって良いのか? それからそっちは何か武器を使うのか?」
「真剣だァ?俺様刃物はキライなんだ。俺様の得物はこいつよォ!」
そう言うとアレックスは両腰のホルスターからクルリと拳銃を取り出す。
「俺様の得物はこの二丁拳銃!魔獣どもはこれで蜂の巣だぜ?」
「拳銃がこの世界にもあるのか、よっぽど文明の進んだ世界の様だな」
魔獣とかは聞いた事無いけど、と流斗は一言添える。
しかしよくよく考えてみれば、戦うフィールドが恐ろしく限定されそうだ。何せ相手の武器は遠距離攻撃が可能。
こっちは接近戦のスタイル。
「うーーーーーーーーーーーーーーーーーーん・・・・・」
いやー、こりゃー俺は勝てねーなー・・・と流斗は思うが、アレックスは戦えさえすれば何でも良いらしく流斗の手を引っ張って
半ば強引にバトルフィールドへと歩き出す。
「ちょ・・おい、ど、何処に行くんだ?」
さすが軍人、と言った力の強さか。
横顔でも分かる位にアレックスの目が輝いているのをしっかりと見ながら、流斗は不安そうに尋ねた。
アレックスはその問いには答えず、無理やり流斗をとある場所へ引きずって行った。
そこは軍部施設内の実戦演習場、ようは仮設闘技場だった。
障害物は特になく、暴れるには程よい広さ。戦闘狂のアレックスはよくここに強そうな人間を引きずり込んでは無理やり戦っていた。
「俺様本当はこの街の路地裏みたいにごちゃごちゃしてるとこの方が得意なんだけどー、殺し合いじゃない戦いをすんなら
こっちの方がいいんだよなァ!…さァて」
と、アレックスは姿勢を低くし、臨戦態勢に入る。
「戦おうか」
「・・・・・」
もうここまで来てしまったらやるしか無い。
もともとは師匠と出身地域が同じ様な場所で、しかも孤児と言うのも同じで意気投合した事からその師匠にカンフーを習い始めたのが2000年。
それから16年間カンフーの修行を積んで来た。自分よりは明らかに若そうだし、しかも職業が軍人・・いわば戦いのプロフェッショナルだ。
これが傭兵として世界中で活動していた栗山だったらなーと思うのだが、栗山は今この場に居ないので自分がやるしか無い。
(もうこうなりゃ・・・やるだけやるしか無いだろう!!)
覚悟を決めた流斗は手と足をぐるぐると回し始める。年齢によるスタミナや動きの素早さの低下、それから戦闘のプロフェッショナルが
相手と言う状況だと言う事は一旦頭の中から消し去る。
「本気の勝負で良いんだよな?」
手と足をほぐしつつそれだけ聞いて、布に包まれた青竜刀を光の下にさらけ出す。
そして、その布を取り去ると同時にアレックスに向かって布を投げつけつつ走り出した!!
「急がば回れ、無茶はしすぎずだ」