リレー小説第3部第2話
流斗はその男が口にした「異世界」と言う単語に耳を傾ける。
何故かは分からない、が、物凄く心に引っかかる。
「え・・・・異世界・・・? おい、御前さん、異世界って言ったか今!?」
「あん?なんだよ。俺様はもうお前に用はねえっての」
もう遊ぶつもりはないですよ、とでも言わんばかりに男はそう吐き捨てる。
「俺はある。ここは何て言う国だ?」
男はその流斗の問い掛けにきょとんとし、はぁ・・と溜め息を吐いてぶっきらぼうに答える。
「タルナーダ帝国だけどォ?お前そんなジョーシキも知らないわけェ?」
「タルナーダ・・・知らない。御前さんの常識、世界の非常識かも知れないぞ。俺は知らないしな」
そしてこんな質問も流斗はしてみる。
「もしかして、魔法ってあったりするの?」
男は思わず顔をしかめる。
「はあ?あるに決まってるだろォ?この世界は魔法で成り立ってると言っても過言じゃねえぞ?…お前、まさか」
「・・・あちゃー・・・・」
何かを諦めた様な顔をして流斗は悟る。
「・・・分かったよ。どーもありがと」
しかし踵を返して青龍刀を拾い上げて立ち去ろうとした流斗の後頭部に、何か硬い物が押し当てられた。
「待った。俺様たった今お前に用ができた」
男はいつの間に引き抜いたのか、流斗の後頭部に先ほどの拳銃を押し付けていた。
「お前、異世界から来た人間だな?ちょうどいい!俺様の暇つぶし相手になりやがれ」
頭の後ろから聞こえて来たそんなセリフに、流斗の身体がぴたっと止まる。
「俺は御前さんと暇つぶしする余裕は今無さそうなんだ。それよりも、異世界ってどう言う事なのか凄く話を聞きたいんだよ」
どうやら、お互いに用事が出来た様だ。
となれば話は早いとばかりに、流斗は軍人であると自己紹介した男に連れられて話し合いの出来る場所へ向かった。
男に連れられた場所は、この国の軍部の会議室だった。現在は誰も使用していないのか、いるのは男と流斗の二人だけだった。
「んじゃま、とりあえず自己紹介。俺様はアレキサンダー。周りからはアレックスと呼ばれてる。で、あんたは異世界から
来たんだよな?ここは自分の住む世界じゃないと自覚があるってことだよな?」
アレックスは楽しそうに笑いながら続ける。
「アレックスね。俺は流斗。あ・・・まぁ、色々あって、異世界って言う単語に俺敏感なんだ」
今までの出来事を簡単に話す。
武術のレッスンの帰りだった事、自分の部屋に入ったらそのままあの路地裏に出てしまった事、何故ここに来たのか自分では
全く心当たりが無い事。
それだけ話すと、アレックスと名乗った男は何やら考える素振りを見せ始めた。
「なるほどねえーということはあんたやっぱり異世界の人間だわ」
そうアレックスは言葉を切ると、高らかに笑いだした。
「ぎゃははは!いいねえ!あんたで4人目だ!しっかし、この短期間で4人って…あの空白の魔女さんセキュリティガバガバすぎんじゃねえのォ?」
「空白の・・・魔女?」
何だそりゃ、いかにもファンタジーっぽいなーと流斗は問い掛ける。
「しかも俺で4人目って・・・全員地球から来たのか?」
何だかこんな展開に巻き込まれる運命なのかなーと思いつつ、2つの質問を流斗はアレックスに投げ掛けた。
「空白の魔女さんは次元を司る魔女さんだよ。たくさんの平行世界を管理してるとか言ってたなァー会ってみりゃ
話は早いんじゃね?ま、あんたが会えるかどうかはわからねえけどー」
そう言いながらアレックスはよいしょ、と窓側の壁に背中から寄り掛かる。
「で、地球から来たのかって話だけど、そりゃ俺様の知ったこっちゃないね。そうさなァ、最初の二人はお前と同じような
名前の響きだったけど…3人目はなんか違かったな」
これで満足?とでもいうかのように、アレックスは肩をすくめた。
「あ・・そうなの・・・」
何と無くだけど、その魔女に会う必要があるんじゃないのか・・と流斗は考える。そして地球からこの世界にやって来た人間が2人・・・後の1人は
違うと言う事は、異世界から人間が来るって事は良くある事なのかな、とも考えてみた。
「うーん、何かヒントになりそうなものって無いか? その魔女に会う為の。もし・・もし、御前さんの暇つぶしに付き合うって言うなら教えてくれるか?」
今の流斗はアレックスしか頼れる人間がこの世界には居ないので、ワラにもすがる思いで聞いてみた。