Reconstruction of the kingdom第9話


式典は意外にも何事も無く滞りなく進んでおり。終わりのスケジュールも

見えて来た。しかしながら油断は最後まで出来ない。最後まで何が

起こるかが分からない。

油断はしない。油断が最も敵だと言う事を騎士団員達は身を持って

知っているしカルヴァルもジェバーも同じだった。

「このまま何事も無く終わってくれれば良いんだが」

「そうですねぇ〜、それが1番ですよ〜」

チビチビとカルヴァルは酒を呑みながら式典の様子を眺め、時折やって来る

ラーフィティア王国に誕生した貴族達と一緒に談笑したりもする。


そうして結局、スケジュール通りに何事も無く式典が終わってしまった。

「……何か、呆気無かったな」

「ええ。ですがまだ来場者の見送りが残っていますからねぇ〜。そこを乗り切ってから

初めて終わったと言えるでしょ〜?」

「そうだな。城に帰り着くまでが騎士団の遠征だった様にな」

実際の所、帝国騎士団所属の時は騎士団は城に帰り着くまでが遠征であった。

事実遠征の帰り道に魔物の集団に襲われた事だって1度や2度だけでは無い。

それもあって、式典の来場者が全て帰り終わるまで緊迫した状況は崩さない様にしていた。


「ふぅ、やっと終わったか?」

「はっ、最後の1人まできちんと王城の外にお見送り致しました」

「そうか、なら良い」

ローエンのその報告にどうやら杞憂に終わっていた様だとカルヴァルは感じ、やっと

騎士団員達の間に流れている緊迫したこの空気も消え始めていた。

「流石にここまで人が多いと、迂闊に手は出せない状況だったんですかね?」

「どうだかな。そんな襲撃を考える様な人間の事はそうした人間にしか分からないだろう」

ルイスの疑問にローエンは何処か遠い目をしながらクールに答える。


その式典も終わり、カルヴァルは騎士団員達を集められるだけ謁見の間に集めて

ベルトニアの王城レガリアにおいて労いの言葉をかけていた。

「皆の者、今日は最初から最後まで緊張が続いたと思うが本当に良くやってくれた。

おかげで何事も無く無事に式典を終える事が出来た。今日はゆっくりと身体を休めてくれ。

俺も含めて明日からはまた通常の任務に戻るから、訓練にはきちんと赴く様に」

カルヴァルのその言葉に騎士団員たちはしっかりと敬礼で返し、各自自分の部屋へと戻って行く。

「私達も休みましょ〜、カルヴァル陛下!」

「そうだな。……今更だが陛下、か。俺もようやく一国の王として成り立って来たか?」

「うーん……ちょっと、ですかねぇ〜?」

そのジェバーの返答に苦笑を漏らしながら、カルヴァルも自室へと戻って休みを取る事にした。

結構酒も身体中に回って来ている様だ。


だが、カルヴァルが自室に戻った瞬間だった。

「……!!」

カンカンカン、とけたたましく打ち鳴らされるこの甲高い音。それは敵の襲撃があった事を

意味する警鐘の音に間違いは無かった。

その警鐘にカルヴァルの酔いが一気に醒めて行き、素早く自分の部屋の壁に掛けられている

簡素な胸当てと肩当て、そして愛用の武器である弓を背中に、ロングソードを腰に、最後に

片手で大斧を持って部屋の外の様子を窺ってから飛び出す。

(敵襲か!!)

一気にさっき収まった筈の緊張感がまたマックスになるのをひしひしと感じながら、カルヴァルは

部屋から飛び出した後に辺りの気配を窺う。

すると後ろから物凄い殺気が膨れ上がり、咄嗟に斧を構えてガードする!!


「くうっ!?」

ガキン、と両腕が痺れる衝撃を受けたが何とか奇襲を防ぐ事には成功した。

「……流石」

「何者だお前!! どっから俺の城に入った!?」

斧にぶつけられたのは彼が腰に下げているものと同じくロングソードではあったのだが、

そのロングソードにはカルヴァルの物とは大きく異なる特徴が存在していた。

(……これ、は!?)

ロングソードを弾いて距離を取り、ロングソードの間合いから攻撃する。刀身の部分が

ほのかに青白く輝いている不気味なそのロングソードの攻撃に対抗する為に……。


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