Reconstruction of the kingdom第18話
「今更ですねぇ〜? そんな虫の良い話はありませんよぉ〜?」
ふざけた口調ではあるが、今のこの状況下ではこちらが不利な事に
変わりは無いとジェバーは踏んでいる。
襲撃があった事を知らせる鐘の音を彼も耳にした直後、何時の間にか
城内に入り込んでいた襲撃者達を得意の魔法で全て今の所は殺す事に
成功している。しかしながらその参謀格の男は自分と同じ魔導師の様であり、
なかなかの苦戦を強いられていた。
そしてジェバーもまた、その参謀格の2色の髪の色をした目の前に居る男から
エントランスで戦っているレーヴァやシャプティ達と同じ様な事を聞いていた。
しかし彼はそれ以上の事をこの男から更に聞いてしまう事になるのであった。
「せっかくですからねぇ、教えて頂きましょうか……貴方達の正体を。騎士団の
人間を各地で惨殺するだけに飽き足らず、こうして王都にまで攻め入って来るとは。
それに先程貴方は自分達の王国、と言いましたねぇ? だとすると私には大体
察しはついていますが、やはりあなたの口からきちんとこの状況について私に聞かせて
貰わないといけませんよねぇ〜?」
そのジェバーの喋り方にも男は全然動じる様子も無く、平然と答え始める。
「そうですか、そこまで知りたいのなら冥土の土産代わりに御教え致しましょうか。
私達の正体はこの国の騎士団です。ああ、正式には「旧」ラーフィティア王国騎士団と
言えば宜しいでしょうか。そして私はこのラーフィティア王国宰相のオーレンです。……ああ、
そこも「旧」ラーフィティア王国宰相のオーレンです、と言い直しましょう」
その男……オーレンが当然の様に言い放った説明にジェバーは笑みを返した。
「ふふふ……やはりそうでしたか。貴方が先程自分達の国だ、とおっしゃられた時からこうして
うすうす感づいていましたがねぇ〜。それでしたら私の予想も聞いて貰いましょ〜!」
「予想ですか? 良いでしょう」
戦いを一旦ストップし、宰相の執務室の中で新旧2人のラーフィティア王国の宰相が向き合う。
「このラーフィティア王国は以前、天変地異がありました。その天変地異はラーフィティア王国全土、
特にこの王都は酷い物だったらしいですね。地面は今も所々ヒビが入っている様から分かる様に
各地に爪痕を残しているみたいだし、私達が初めてこの国にやって来た時には建物等も原型を
留めていない物が多くありました。地震、竜巻、それからそれによる大火災も襲って来たらしい
ですから王都が滅びるのも時間の問題だった。だからあなた達は逃げるしか無かった。その時の
国民はほとんど見捨てられ、残ったのはそれこそラーフィティア王国騎士団員と王様、そして貴方と
数百名の住民のみだった」
そこでジェバーは一旦言葉を切り、今度は首を横に振って続けた。
「でも、それも仕方無いんじゃないですかねぇ〜? だって因果応報って言う言葉がこれ程しっくり来る
出来事もそうそう無いと思いますけどね?」
「因果応報……ですか、成る程」
その単語に反応したオーレンが自嘲気味に呟くのを見て、ジェバーは以前のこの王国について
聞いていた事のある噂を話し始める。
「だってそうでしょ? この国の王様は凄く横暴だったらしいですねぇ〜? 徹底した独裁政治を
布いていて、自分に逆らう者であれば例えそれが騎士団員達であったとしても容赦無く殺すって
言ってたし、国民の殆どが恐怖に怯えながらの政治体制だったらしいじゃないですか。だったらそんな
王国は一旦滅ぶべきだったんじゃないですかねぇ? 私達が元々住んでいたイディリーク帝国にも
噂は凄い届いてましたし、こちらと取り引きなんて殆どしてませんでしたし、そのちょっとの取り引きの
代金をごまかされた事だってありましたし。私達だってイディリーク帝国を追い出された身ですけど、
そこまで落ちぶれちゃ居ないんですよねぇ……!」
そこまで言い終わると同時に、オーレンからいきなり特大のファイヤーボールが
飛んで来てジェバーの横を掠めて行った。
「貴方の予想は大体当たりですよ。さて、それではお話も終わりですね!」
「ではこちらも、精一杯の抵抗をさせて貰いましょ〜!」
こうして、新旧宰相の第2ラウンドが宰相の執務室でスタートするのであった。
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