Outsider fighting Quest第3部第7話


フェレークとファルテレオがバタバタと大塚を追い掛けて回り込んでいる頃、当の大塚は宝物庫への潜入を果たしていた。

何故宝物庫?と言うのは大塚が屋上から建物の中に入り込んだ所まで時間はさかのぼる。

「……っ!」

曲がり角の先にあるドアから騎士団員2人が出て来たので、咄嗟に大塚は曲がり角の陰に隠れる。

しかし、事態は思わぬ方向へと進み始める。

「あーあ、脱走した奴等が居るって言うけど新人の俺等はかんけーねーしな」

「そうそう。宝物庫に変な物があるって言ってたけどそれも上の連中に任せとけって話だぜ」

どうもこの騎士団員達は新兵であり、騎士団員としての自覚も情熱も無いらしい。


「世界が違ってもやる気の無い奴は居るもんだな……」

思わず口に出てしまうだけの事はあるな、と大塚は思いながらも彼等2人が口走っていた事が気になった。

(しかし……宝物庫の変な物だって?)

それは非常に気になるよなと心の中で思い、大塚は何か手がかりが無いかとその新兵達が出て来た部屋の中へと入る。

そこは新兵達の部屋であり、どうやら騎士団の宿舎へとやって来てしまった様だ。

片付けも出来ないらしく色々と物が散乱しているが、お目当ての物はすぐに見つかった。

(これ、城と宿舎の中の見取り図じゃないのかな?)

新兵が城の中の構造を覚える為に配られた物だが、大塚にとっても役立つアイテムだ。


その見取り図を持って、騎士団員達の見張りや巡回を回避しつつ城の地下にある宝物庫へと大塚はやって来た。

(ふうむ…なかなかの広さだな)

壁には何個ものオレンジ色のランプが設置され、地下でも視力の低下を防げる様に明るい設計だ。

それにプラスして妙に天井が高い。その高めに造られている天井に向かって棚が壁に沿う様に設置され、

ぎっしり色々な宝が整理整頓されて置かれている。

(ともかく、ここに俺のアイテムが無かったら今までの全ての行動がパアだ)

それだけは何としてもあって欲しく無い。

早くしなければ騎士団員達が気付いてしまうかも知れないと思いつつ、大塚は「変な物」が何なのかを探し始めた。


そして。

「おっ……あれか!」

棚を順番に調べて行きつつ宝物庫の奥の方までやって来た大塚が見た物は、以前この世界から

地球に帰る時に使った愛車のS2000のキーだった。

しかしそれと同時に、大塚は棚の上に見慣れた穴を見つける。

「あれ?もしかしてあれって……」

脚立が無いと届かない高さの棚の上の壁には、これも以前あの遺跡で見た覚えがある鍵穴……車のキーシリンダーがある。

何故こんなものがこんな場所にあるんだろうか?と首を傾げる大塚だが、その理由はすぐに察知出来る。

(まさか、これをもう1度差し込んで回してみれば……)

不安と期待に胸を躍らせつつ、大塚は部屋の隅に脚立を見つけてそれを取りに向かう。


……が。

「そこまでだ」

「……!?」

入り口から聞こえて来た声に思わずバッと顔を向けて見れば、そこには大塚の因縁の相手2人が臨戦態勢で立っていた。

「ミャルマスが知らせてくれた。お前がこの宝物庫に向かったとな」

「もう逃げ場は無えぞ?大人しくここで観念するんだな、ええ?」

既にロングソードを抜いて構えるフェレークと、不敵な笑みを浮かべつつ指の関節をバキバキ鳴らすファルテレオは、

大塚にゆっくり近付きながら2人とも鋭い目つきで彼を見据える。


棚が置いてある場所から少し戻った、出入り口側の広い空間で両側から挟み込む形で、武器を構えた

王国騎士団員と傭兵コンビに逃げ場を無くされる大塚。

だが、勿論彼もここで捕まる訳にはいかない。

「悪いけど俺のミッションはもう済んだんだ。俺は別にこれ以上御前等に迷惑かけるつもりは無いし、

後は自分の世界に帰るだけだからな!!」

「迷惑は既に十分かけているだろう。その言い分は通用しないぞ?大人しくしておけっ!」

「う……」

フェレークの冷静だが怒気を含んだそのセリフに、思わず大塚もたじろぐが持ち直して2人を睨み付ける。

「おいオッサン。危ない目つきだけど寝不足か?」

「ふざけてる場合か、ファルテレオ」

ギロリとフェレークにも睨み付けられ、ファルテレオは肩を竦めた。

「へーへー、全く冗談の分からん奴だぜ……さて、お遊びはここまでだ。大人しくお縄につきやがれっ!!」


そう言い終えると同時にパンチを片手に大塚に仕掛けるファルテレオと、それに続くフェレーク。

だが大塚はS2000のキーをポケットに仕舞い込んで迎え撃つ。

ファルテレオのパンチを足で弾いてブロックし、フェレークのロングソードを屈んでかわす。

この宝物庫はそれなりの広さがあるので2人は武器を使っても問題は無いらしいが、大塚にとっては問題大有りだ。

こっちは素手で2人は武器持ち。

それでもここで捕まる訳にはいかない、と言う執念だけで大塚はフェレークとファルテレオに立ち向かう。

(俺だって……前回は負けてしまったがその前は勝っているんだ。さっきフェレークに捕まった時にあいつの

戦い方は大体把握出来たからな。だから負ける訳には行かないんだよ!!)

しかしロングソードのフェレークと体術のファルテレオ、と言うタイプの違う相手を2人同時にしなければ

いけないのでかなりきつい。

フェレークの素早いロングソードが向かって来ればかわして懐に飛び込んで膝蹴り。

ファルテレオの体術には手技を中心に接近戦で対抗。

宝物庫での限界バトルが……大塚にとってのファイナルバトルが幕を開けた。


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