Outsider fighting Quest第3部第4話


そしてそんな大塚脱走の報告は、あの3人の耳にも届いていた。

その中で何よりもビックリし、そして悔しがっていたのはファルテレオであった。

「何? 大塚が……あの牢獄から脱出しただとっ……?」

「まさかっ、しっかりと拘束している状態で牢屋に放り込んだ筈だ!」


ドアを開けた大塚はすぐに見つかって……しまうとは限らなかった。

何故なら大塚脱走の報告を受け、城中が慌ただしくなっている。

人間は動く物に反応する。それはスピードが速ければ速い程反応しやすくなるのだ。

前に自分のキックボクシングの師匠である恵の、更に師匠である遠藤真由美からその事を聞いていたので

大塚は城の壁際に沿って小さく身体を丸めて歩いて行く。

(意外と気付かれないもんだなー……)

本人が1番ビックリしているその横で、手近なドアを見つけたのでそこに入ってみる大塚。


城のエントランスから続く別の通路になっているその通路の突き当たりには、何と渡り廊下に続くドアが。

その渡り廊下に差し掛かった大塚だが、そこではその大塚の到着を待っていたかの様に腕を組んで

壁に寄りかかる銀髪の男の姿があった。

その男は不敵な笑みを浮かべ、大塚に対してロングソードを引き抜きながら警告のセリフを告げる。

「ふっ……、手足が縛られている状態で牢に監禁されていた男が、まさか脱出出来てしまうとはな。

今ならまだ間に合うぞ……もう一度牢へ戻るんだ、さもなくば抵抗させてもらうぞ」

フェレークのセリフを大塚は鼻で笑い飛ばした。

「はっ、抵抗させて貰うだと? 道を空けてやるから素直に通れ、の間違いだろう?

……悪いが、御前にもそれからこの世界にも興味は無いな」


そう言う大塚の表情が突如変わる。

フェレークの後ろに誰かを見つけた様で、大塚は「あれっ!? 御前等!?」と手を振りながら叫ぶ。

そのアクションに自然とフェレークの気がそれた。

大塚はその瞬間を見逃さず、フェレークの横をすり抜ける……つもりだったのだがフェレークは何と回し蹴りを繰り出す。

「ぐえ!?」

大塚の胸にその回し蹴りがクリーンヒット。気がそれて振り返ったように見せかけ、首だけを後ろに向けた体勢から

身体を捻って繰り出されたフェレークの回し蹴りに、大塚は床に倒れ込んだ。

仰向けに倒れ込んだ大塚に対し、ロングソードを向けながらフェレークは嘲笑う。

「お前は強く、賢く、そして幸運だ……だが、この俺を甘く見るなよ」


大塚は胸の痛みを抑えつつ立ち上がる。

「これまでは1勝1敗だからな。あの銅像の時、それからクリスタルの時……ああそれと

最初に顔面叩きつけた時も入れたら2勝1敗か?」

だったら3勝1敗でここから逃げさせて貰う、と言いながら大塚はフェレークに向かって前蹴り。

しかし何度も戦っているフェレークは大塚の攻撃をある程度予想出来る様になった。

前蹴りで繰り出されたその右足を左手「だけ」でキャッチし、ロングソードの柄を「弁慶の泣き所」に叩き込む。

「ぬぐぉ!?」

一旦ロングソードを投げ捨てて、怯んで力が抜けた大塚の足を両手で引っ張ったフェレークはそのまま力任せに

大塚の身体をそばの壁へとジャイアントスイング状態で叩きつける。

背中から壁に叩きつけられて再び仰向けに地面に倒れ込む大塚の首に、フェレークの足の裏がギュッと体重をかけて乗せられた。


そして増援を呼ぶべく、懐から騎士団員が携帯している警笛を取り出し口に咥えて思いっ切り吹き鳴らす。

その警笛を吹き鳴らし終え、自分の足元で力が入らずにうめく大塚に向けてフェレークは勝利宣言をした。

「クリスタルの時は俺一人ではなかったとはいえ、あの時の戦いを含めるならばこれで二勝二敗だ。

これでお前の負けだ……、大人しくそれを認めるんだな」

こうして大塚はせっかく脱走したにも関わらず、王国騎士団にこの人間あり、とまで言われた剣術の使い手である

フェレークの大活躍により再び牢屋に戻されてしまう事になった。

……と、思いきや牢屋では不安が残ると言う事でそのまま取調室へと連行される。

そこでフェレーク、そして傭兵として王国からも深く信頼をされているファルテレオに尋問される事になった。


(くそっ……ここまでか……!?)

このまま尋問される為に取調室まで連行されてしまえば、今度こそ処刑だけは免れないだろう。

まだチャンスはあるかも知れない。

いや、チャンスは見つけなければいけない。このまま黙って連行されるよりは、少しでも抵抗してここから抜け出せる道を

探した方がよっぽど有意義だし、元の世界に帰る為にはそれしか無いかも知れない。

運命は自分で切り開くもの。

フェレークやファルテレオとはただでさえ2度も3度も関係がこじれてしまっている以上、もう修復は不可能であろう。

だったら尚更、この完全なアウェイ環境から抜け出す為に大塚は必死に頭を回転させる。

(両手を後ろに縛られてはいるが、見張りはこのフェレーク1人……。応援をさっき笛で呼んでいたとは言え、

俺1人だったら自分だけでも大丈夫だと思われているのか?)

舐められたもんだな……と思った大塚は、2階部分の廊下を歩いている時に早速行動に出る!


Outsider fighting Quest第3部第5話へ

HPGサイドへ戻る