Outsider fighting Quest第2話


大塚はその足音に反応して顔を上げる。

その視線の先には銀髪で、腰にはロングソードを携えた自分よりも一目で分かる位の若い男の姿があった。

「・・・お、おい? あんた・・・大丈夫か?」

「・・えっ?」

この男は一体誰なのだろうか。見た所、コスプレをしている若者とも見て取れる。

だけどこんな状況は、自分と一緒にキックボクシングを習っているRPG好きの男から聞いた話が

すっぱりと当てはまりそうであったので一応尋ねてみる事に。

「・・・・大丈夫だ。だけど、1つ聞かせて欲しい」

ここは一体何処なんだ? そう男に問いかけた大塚に、男は首をかしげて大塚にとって非情な事を口にした。

「此処は一体何処、って・・・あんたは一体何処から来た、何者なんだ? 此処はシェノトゥルアだが・・・」


シェノトゥルア。

大塚は今まで生きて来た42年の人生の中で、そんな地名は聞いた事が無い。

「シェノトゥルア・・・・シェノトゥルア・・・・・・・・シェノトゥルア?」

またもや頭を抱えてしまった大塚だが、このままでは話も進みそうに無い。

「えー・・と、え・・あ・・お、俺は旅をしてて・・気がついたらここにいたんだ。

ちょっと今までの事が思い出せなくて・・・で、出来れば近くの街まで案内してくれると助かるんですけども」

最後だけ丁寧口調になってしまったが、見知らぬ人間に余り素性をぺらぺらと喋るのは宜しくないだろうと

思った事で大塚は適当に言葉を濁す。


しかし目の前の若い男は非常に警戒心を強くしたらしく、腰のロングソードに自然な流れで手を添えた。

「・・・俺はあんたを怪しい人間と見た、すまないが・・・協力できそうにない」

その男の言葉に、大塚の心は揺れる。

「何で?」

確かに自分は怪しいかも知れないけど、近くの町まで案内して欲しい。

そうしてもらえれば何とかなりそうだが、目の前の男は更に警戒心を深める。

「じゃあ如何したら、俺を信用してもらえるんだ?」

そんな大塚の問い掛けに、男が出した答えとは?


「・・・真実を語ってくれたら、考えてやってもいいぜ」

その男の答えに、大塚は条件付きでOKを出すしか無かった。

「・・・・ああ、良いよ。でも・・・この事は他の人間には喋らないって約束してくれるか? もしかしたら

俺は・・・俺は、この世界の人間じゃないかも知れないんだ」

俺は、の前に一旦息を吐いてもう1度俺は、と付け足した大塚は今までの出来事を出来るだけありのままに話した。

仕事で帰りが遅くなってしまった事、鍵を回したらいきなり光が自分を包んだ事、気がついたらここに居た事、

シェノトゥルアなんて地名は全く聞いた事が無い事。

大塚が事実を述べて行く度に、男の表情が訝しげな物に変わって行く。まだまだ半信半疑と言った所であろうか。


それでも、自分が今話しているのは事実なんだからどうしようも無いとばかりに大塚は最後までその事実を話し終えた。

「・・・と言う訳だ。別に信じるも信じないも勝手だし、俺がそっちの立場だったら今そっちが思っているその気持ちと

同じ気持ちになってたと思う。けど、これは紛れも無い事実なんだ」

そんな大塚の話を信じたかどうかは分からないが、目の前の男は納得してくれた様ではある。そして名前も言ってくれた。

「なるほど、な・・・違う世界に転移する、というのは考え難い話ではあるが、その口調からするにどうやら

本当のようだな、・・・自己紹介だ、俺はフェレーク・ジェレドア、よろしく」

「改めて。俺は大塚誠。失礼だけど、随分若いんだな。今は幾つなんだ?」

「よろしく。そうだな、俺は19歳だ」

その年齢を聞いて、大塚は自分と歳が倍近く違うのか・・・と思わずにはいられなかった。

「俺は42だから・・容姿が似てたら親子でも通じてたかもな」

とにもかくにも、フェレークと名乗ったこの若者に中年の大塚は近くの町へと案内して貰う事にした。


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