Outsider fighting Quest第3部第3話


「ははははははは!! 運命は自分の意思で切り開くものとはよく言えたものだな、手足が拘束された状態でよ!!

わかっているだろうが此処はこの世界で一番栄えた国の城だ、無論警備は甘いものではないぞ。

前々回と前回のように危機的状況を打開できると思えるかな」

高笑いしながらファルテレオは去って行った。

そんな彼の姿を鉄格子越しに見つつ、大塚はどうにかしてここから脱出する手筈をまた考え出す。

(まずは手足が自由にならなきゃ俺は満足に動く事も出来ないな……)

どうしようか……と思いつつも、このままこんな所で我慢する訳には行かない。


そう思った大塚の腰に、ふと硬い物が当たる感触がした。

「ん? 何だこれは……」

牢屋に放り込まれる前にS2000のキーは取られてしまった。

それ以外に何かあったっけ……と思いつつ腰の辺り……では無く、良く良く探ってみると

黒い革ジャンの内ポケットに役に立ちそうな物が入っていた。

それを見て、大塚は一瞬で脱出方法を思いつく。

天性の閃きが上手く行く事を願いつつ、大塚は手を拘束された状態で何とか内ポケットからそれをいじり始めた。


突然牢屋の中から鳴り響いた音楽に驚き、見張りの騎士団員は鍵で牢屋の扉を開ける。

しかしその瞬間、大塚のハイキックが側頭部にクリーンヒット。

それでも頭部を甲冑に守られている為に気絶はしなかった。

だから大塚はヘッドロックをかまし、全力で騎士団員を絞め落とした。

そして絞め落としてからスマートフォンの音楽を切り、牢屋の外の状況を確認する。

(……ふぅ、何とかなったか)

牢屋のカギは開いた。だけどこの手足の枷はまだ外れていない。

だけどそれも、気絶している騎士団員の懐をガサゴソと探ってみればそれらしい鍵が出て来たので枷の鍵穴に差し込んでみる。

「……しゃあ!」

思わず声が出る程嬉しかった。

カチャリと音がして手枷が外れ、その勢いで足枷も外れる。

……さぁ、脱出だ。


そんな状況になっているとも知らない王城の中で、フェレークとファルテレオが大塚の事を明らかに馬鹿にしていた。

「今度ばかりは、流石のあいつも元の世界には戻れないだろう」

「手枷、足枷もされている状態で牢屋に放り込んだからな。そんな状態で運命は自分で切り開くものだと言って、

未だに諦めきれていないからなぁ、往生際の悪い奴だぜ全く」

そんな2人の元にやって来たのは、この城を見て回っていたミャルマスだった。

ミャルマスはフェレークとファルテレオに大塚がどうなったのかを尋ね、話を聞いて凄く納得する。

彼女の口からは大塚を心配するセリフが出たが、フェレークはそんな彼女に対して大塚には同情するな、とたしなめた。

「大塚さんも私達と同じ人間なのに、扱いがまるでぞんざいですね。捕まえるときは実力行使でしたので仕方ないとして、

手枷や足枷は流石にやり過ぎでは……」

「いいか、あいつは異世界人だぞ。あいつが此の世界にとって脅威の存在なのかも未だにわからない。

だから、そんな奴に同情する必要などないさ」


そんな脅威の存在かも知れない大塚は、枷が外れて自由になった手足をブンブンと振ってほぐしてから地下牢を脱出し始める。

(出口を探さなきゃな……)

ファルテレオによれば警備が厳重だという話である。

事実、地下通路の角を曲がる時にも曲がり角の先に騎士団員が居ないかどうかを確かめてから大塚は進む。

(くそぅ……見張りが結構多いな)

あっちもこっちも見張りだらけ。

どうにかして見張りを移動させなければ脱出ルートは作れそうにない。

またスマートフォンで音楽を鳴らすか……と思った大塚だが、それよりも先に牢屋の異変を知らせる叫び声が聞こえて来た。

「なんてことだ、大塚の姿がないぞ!!」

「少なくともまだこの城からは抜け出していないだろう、くまなく探せ!!」

バタバタと地下通路が騒がしくなるが、それは大塚にとってのチャンスでもある。

騎士団員達が動き出したのと同時に大塚も動き出し、通路の先の足音を頼りにして騎士団員達が向かって来ないルートを選んで突っ走る。


騎士団員達はガチャガチャと重そうな鎧を着込んでいるからか、その足音が大塚の足音を聞こえなくしてくれたのも役立った。

はぁはぁと息を切らせつつ、大塚はやっとの思いで見つけた階段を上に駆け上る。

その先に見つけたドアを少しだけ開け、先の様子を探ってみると何とか行けそうだった。

(S2000のキーをまずは取り戻さなければ。でもエンジン止めて眠ってた筈なのに、あそこに挿しっ放しの

キーが何で何時の間にかポケットに入ってたんだよ…)

未だに謎である。そして余計な手間である。

とは言いつつも、大塚はそのドアを開けてS2000のキーをこの城の何処かから探し出すべく再び進み出した。


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