Outsider fighting Quest第3部第2話
「悪ィが、何度も逃げられると思ったら大間違いだぜ……大塚!」
大塚は次第に追い詰められて行く。やはり人数差は圧倒的だ。
何が何だか分からない上に、まさか因縁の相手と3度目の出会いを果たすとは
思っていなかった大塚は必死に逃げるものの、路地裏で何者かに足を引っ掛けられてしまう。
「ぶべっ!?」
間抜けな声を出して前のめりにすっ転び、顔面を地面に打った大塚に足を引っ掛けた人物。
それはのんびりと散歩をしていた、創作家のミャルマスだったのだ……。
「お久しぶりですね、大塚さん……まさか、本当に二度もこうして出会えるとは思ってもいませんでしたよ」
大塚の背中の上に座って起き上がれなくしたミャルマスにより、大塚は駆けつけたエンレデドレイ
王国騎士団と傭兵軍団に成す術も無く捕まってしまう。
そして大塚を連行する途中で、酒場で話していた3人はこれから大塚をどうするかを話し合いながら歩く。
「三度目の正直、今度こそあいつを捕まえることに成功したな」
「そうだな。 それと何時も不思議に思っていたがあいつの体は何か不思議だよなぁ、魔力も感じないし……。
異世界人であるあいつの特徴なのかな。異世界の連中は俺達にない不思議な能力を持っているのかもしれない。
大塚を徹底的に調べてみれば驚くべき事実が暴かれるだろうな、国に引き渡してしまった方がいいかもしれない」
「大塚さんにしかない能力……なんか、ロマンチックですね。 また創作の参考になりそうですよ」
そのまま王国の象徴でもある王城に連行された大塚は、薄暗くてかび臭い地下牢に放り込まれる。
「いてっ!!」
乱暴に牢屋の中に突き飛ばされ、手と足を逃げられない様に金属製の枷を取り付けられる。
見張りの兵士がつけられ、牢屋で大塚はさっきの3人の内で騎士団員のフェレークが直々に尋問を担当する事に
なったので彼が来るまでここに入れられる事になった。
(ちくしょう……ふざけんなよ、何で俺がこんな理不尽な目に遭わなきゃならないんんだ!?)
心の中で訴えかけても、誰も助けが来る訳でも無い。
かと言ってここは地下牢なので、脱出できそうな窓も無ければそもそもこの手と足を縛っている枷を外さなければ
満足に身動きも取れない。まさに八方塞がりのこの状況。
大塚はこれから自分がどうすれば良いのか、そして元の地球にどうすれば帰る事が出来るのかを考え始めた。
(最初は銅像にS2000のキーを差し込んで帰れて……次はクリスタルに俺が吸い込まれる形で
帰れて……何かキーアイテムがあるって事だよな?)
そのキーアイテムを見つけて、それに関係する様なポイントでそれを使う事で地球に帰る事が出来るかも知れない。
しかし、その為にはまずこの牢屋からどうにかして脱出しなければ元も子も無い。
(こうなったら、フェレークが来るまで待つしか無いか……)
大塚がそう心の中で呟いている丁度その頃、フェレークは騎士団員の格好で城の中を歩きながらブツブツ呟いていた。
騎士団の中で浮いている……と言うよりも1人で行動する事を何よりも好むフェレークは、今回の様に集団で
何かに立ち向かったり追い掛けたりすると言う事は余り無い。
それだけ大塚はフェレークにとって重要人物であり、警戒する人物でもある。
その呟きの内容は愚痴が半分、これからの大塚への尋問内容を考えるのが半分だった。
「終わり良ければ総て良しとはいうが……。大塚を捕まえるためにあれ程の騎士団員を動かす事態になるとはな。
少数精鋭ですらなかったぜ……俺は群れるのは嫌いなのだがな。
取り敢えず、奴には自分の世界のこと、そして奴の能力について語ってもらおうとしようか……」
そんな会話がされているとは知らない大塚は、必死に頭を回転させて脱走のプランを練っていた。
(どうすりゃ良いんだ……窓も無いし、そもそもこの手かせと足かせをどうにかしなきゃ俺は身動きが取れないからな……)
力任せに引っ張ったり叩いたりしてみるものの、やっぱりびくともしない。
それに牢屋の外には見張りの騎士団員も居るので、うかつに大きな行動も出来ない状況だ。
「……ん?」
八方塞がりの状況に諦めムードが漂う大塚の耳に、その時足音が聞こえて来る。
それは最初にこの世界で遭遇したファルテレオだった。
そしてファルテレオは牢屋の前まで来ると、大塚の姿を見て馬鹿にした様な口調で嘲り笑い始めた。
「ははっ、いいザマだな。そんな状態ではまともに身動きが取れないだろう。
さしものお前とて、今回ばかりは流石に元の世界には戻れないだろうなぁ?」
「……」
黙ったまま答えない大塚に、ファルテレオは更にバカにした様な口調になった。
「おっと……だんまりか、何時もの威勢は何処へ行った、プロキックボクサーさんとやらよ? まぁ自分の意思で
この世界に来た訳でなかったとしても、こういう運命になるというわけだったんだな、運命とは無慈悲なもんだなぁ」
そのセリフに大塚が反応した。
「……運命か。胸糞悪い言葉だ」
キョトンとするファルテレオの前で大塚は続ける。
「運命って言うのは自分の意思で切り開いて行くもんだ。だから俺は絶対にここから逃げ出してやる。
前は負けてしまったが、今回は最初の時と同じく御前なんかに負けないからな。勿論フェレークにも、それからミャルマスにもだ」
そんな長台詞も、手足を拘束されている状態ではファルテレオの爆笑を買うしか役立たなかった。
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