Outsider fighting Quest第2部第6話(最終話)


聞き覚えのある声に後ろを振り向けば、この世界で自分を追いかけて来た3人の男女が。

「……俺をここまで追い掛け回して、お前等は相当暇なんだな」

そんな大塚に対して、ファルテレオとミャルマスは思い思いのセリフを吐き出した。

「暇なんかじゃない、折角異世界人と遭遇したんだ、こんな珍しいことだからこそ余計に好奇心が湧く。だからお前に干渉しないわけがない」

「私も、ファルテレオさんと同じ思いで貴方を追跡しました・・・もう、逃がしませんよ」

そして最後に、フェレークが腰と背中の剣を引き抜いて切っ先を向けて叫ぶ。

「もう逃さん・・・これで最後だ、異世界人!!」


大塚はクリスタルをポケットにしまいこみ、黒のジャケットを脱いだ。

「……逃げ場は無いか。なら、やるしか無い様だ。俺だって……・俺だってプロキックボクサーなんだ。こんな世界で終わってたまるか」

グルグルと足と手を回してストレッチ。

「3対1でも、そして女が混ざっていても手加減無しだ。始めようか……本物のバトルって奴をな!!」

大塚はロングソードを向けて来たフェレーク、拳を構えるファルテレオ、そして最後にミャルマスを見ながら宣言する。

前回とは違い、大塚にも武器がある。

だけど相手も武器は持ってるし、身体が自分よりでかいし、そして3人相手だしきつい物がある。


でも、ここまで来て負ける訳には行かないのだ。

(非常にまずい展開だ……)

大塚は3人の出方を見るが、それは3人側もそうだった。

(前回も今回も相手は1人・・・果たして、どう仕掛けて来るのか)

(やっぱり武器は持っていたかぁ、素手の時も充分手強い相手だったけど、今回はどう出るのか・・・?)

(数の利的に此方の方が、有利ですよね・・・? 私達なら、きっと大丈夫の筈・・・!!)


先に動いたのはフェレーク達だった。

長年の付き合いがあるのだろう。連係プレイで大塚に対してロングソードを振り、それから拳で襲い掛かる。

それを上手く骨でブロックし、反撃し、更に追撃を掛けて行く。

「ちぃ……」

2人に囲まれてはまずいので、大塚は2人に背中を向けて走り出す。

そして追いかけて来た2人に対して、岩の壁を使って反動をつけたジャンプから骨を突き出した。

「ぐわ!」

「ぐう!」


大塚は2人に何とか骨を当てる事に成功したが、その油断が命取り。

「はああっ!」

「ぬぐぅっ!?」

すっかり見失っていたミャルマスが、大塚に対して渾身のドロップキックを繰り出した。

大塚の頭にクリーンヒットしたそれは大塚をダウンさせるのに十分で、そこに復活したファルテレオが

大塚を掴み起こしてボディブロー3発。

そこからパワーを生かしてフェレークに向かって大塚を放り投げ、フェレークはハイキックで大塚を空中から蹴り落とした。、

「げはっ……がは……っ!!」

もだえ苦しむ大塚を見て、3人は思い思いのリアクションを取る。

「どうした・・・前回の時よりも弱くなったな?」

「潔く負けを認めるんだな、3人に勝てる訳ないだろ!」

「そうですよ・・・降参するなら、今の内です!」


それでも何とか大塚は立ち上がりファイティングポーズ。そしてまずはフェレークに向かう。

フェレークのロングソードを回避しつつ攻撃に繋げる為、ダッシュからきりもみ回転しつつ延髄目掛けて飛び回し蹴り。

今度はミャルマスが万年筆を構えて向かって来るが、大塚は前蹴りで対抗。

だがたたらを踏んだミャルマスに追い討ちをかけるべく、お返しのドロップキックを繰り出した大塚の横から

またしてもファルテレオの力強いドロップキックが炸裂し、大塚はクリスタルにぶつかった。

「げぇ、がはっ……」

ファルテレオはそれを見て溜め息を吐きながら大塚に宣言する。

「やれやれだぜ・・・この状況で、お前が勝てる確率は低い・・・すなわちお前の勝利は絶望的だということだ!」


その声も耳に届きそうで届かない大塚の目の前にクリスタルが転がって来た。

(うぐっ……)

満身創痍になりながらも、最後の力を振り絞ってその小さなクリスタルを大きなクリスタルに投げつける。

するとその瞬間、クリスタルが眩く輝き始める。

当然シェノトゥルアの3人も腕で顔を覆い、大塚は光に吸い込まれて行く。

そして光が収まった時には、大塚の身体はその場からクリスタルと共に消え失せていた。

「い、一体何が・・・、はっ! あいつの姿はっ・・・!?」

「き、消えただと・・・まさか、また元の世界に戻ったのか・・・!?」

「そ、そんな・・・やっと、追い詰めたと思ったのに・・・」

呆然としつつももうこの場所に用が無くなった3人は、この場所から出て行く選択をするしか無かったのだった。


「ぐぅ……うう……あっ……?」

大塚が自分のS2000のドライバーズシートで目を覚ますと、もう太陽の陽が昇ってすっかり朝になってしまっていた。

黒のジャケットに太陽の光が射し込み、天然の暖房になっている。

「あっ……も、もう朝……あいててっ!!」

物凄い頭痛。何で自分はこんな事に? 運転する為に酒は勿論飲んでいない。

だったらこの頭の痛みは何でだろう、と思いながらも朝を迎えた為にさっさと家に帰ろうと思いつつ、エンジンをかける大塚。

しかしその時、自分の足元に何かが転がっているのに気がついた。

それを拾い上げた瞬間、大塚は目を見開いた。

「こ、これ……は……」

それは紛れも無く、あの自分が物々交換して貰ったクリスタルに間違い無かったのである。



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