Outsider fighting Quest第2部第5話


惣菜を買って山の情報を手に入れた町からその山に向かって街道を歩いていると、1台の馬車が大塚の前に現れた。

凄い大荷物を荷車に積んでいる所から見ると、恐らくは商人の移動販売車だろうか。

特に買う物は無かったが、山への道を聞く為に大塚はその馬車を止める。

「すいません、ちょっと聞きたいんですけど……遺跡が見つかったって言う山ってこっちの方角で良いんですかね?」

「ああ大丈夫だよ。それより何か買わない?」

流石商売人だなと思いつつ、大塚はこのままだと何かかわされそうなのでさっさと断って先へ進もうとする。

しかし馬車の商人は気になる物を大塚の前に差し出して来た。

「これこれ。これはこの前大型のモンスターを討伐した傭兵から貰ったんだけどな? 何でも

そのモンスターが飲み込んでたんだってよ」


商人が大塚に見せたのは、青緑に輝くプリン程のサイズのクリスタルだった。

「クリスタル……?」

「そうそう、今なら安くしておくからさぁ。買わないか?」

それを聞いた大塚は、うーんと頭を悩ませる事30秒。

「……これと交換ってのはどうだ?」

ジャンパーのポケットから取り出したのは常温になっている焼き鳥の缶詰。

昨日出張前に秋葉原に行った時、古い自動販売機を見つけて友達に上げようと思って買ってみたのだが、出張先で

出会った友達の友達にその友達が海外赴任になると言う話を聞いたので、結局渡せずじまいで持っていた物だった。

「これは?」

「非常食だよ。凄い遠くの場所で手に入れた値打ち物だ。そのクリスタルと同じ位手に入れるのに苦労した」


50パーセントの嘘を混ぜてみたのだが商人は信じてくれたらしく、大塚と商人の間で物々交換がなされるのだった。

そして物々交換を終え、山にようやく到着して大塚は登って行く……が……。

確実に自分に迫り来る追っ手が居る事よりも、大塚は自分の足腰に限界を感じていた。

「ああ、ちょ、ちょっと休憩……」

自分にそう言い聞かせ、大塚は険しい山道の途中にある岩に座って一休み。

考えてみれば、もう40代であるが故に若くないと言う現実を嫌でも突きつけられてしまう。

激しいバトル、車と言う楽な移動手段が無い世界、大自然の険しい道のり。

それを考えてみると、昔の飛脚と言う職業を生業にしていた人物は尊敬出来ると大塚は思ってしまう。

(東海道の江戸から、京都までのおよそ493qを、たった60時間足らずで走り抜いたって言うからな……)


首都高ランナーとはベクトルが違うが、スピード勝負と言う点で何だか負けた気がする大塚はパンパンとズボンの尻を払って歩き出す。

ろくに整備もされて居ない山道。

こんな場所を走りぬいていた飛脚も居たんだろうかと思いながら歩く事、そこから15分。

人里離れた山奥の中に、ぽっかりと口を開く洞窟が姿を現わした。

(ここか……)

山の中の遺跡と言うのであれば恐らくここしかない、と確信して大塚は迷い無く中に踏み出す。

洞窟の中に吹きすさぶ突風が、まるで大塚の侵入を阻む番人の様に思えた。

(薄暗いけど、一応……歩いてはいけるな)

所々にクリスタルが埋め込まれているので、 それが明かり代わりとなって大塚に道筋を示してくれていたのだ。


その中には整備された道があり、更に古いエレベーターも奥に進むと鎮座していた。

(行くしか、無いよな)

そのエレベーターは最深部まで直通運転らしく、何が待ち受けていてもおかしくない。

そうしてエレベーターが停止し、大塚はその奥に向かって進んで行く。

突き当たりの角を左手に曲がると、そこに広場があるのが分かった。

そして広場の奥には……。

「これ・・何だ・・・?」

最深部で大きなクリスタルを大塚は発見した。自分の背丈よりもおよそ2倍の大きさが縦にも横にもあるだろう。

大塚はその青緑に輝くクリスタルを見上げ、ハッとポケットからガサゴソと取り出した物がある。

(あの時、あの商人から物々交換で貰ったこのクリスタル・・まさか・・・)


ポケットから取り出したクリスタルの輝きは、明らかにその貰った時より眩しい。

「この暗黒世界に、光をもたらすクリスタル・・・?」

そんな気がした大塚は、クリスタルに導かれる様に自分のクリスタルをかざして近付いて行く。

……だが。

「・・・そこで止まれ」

「・・・!」


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