Outsider fighting Quest第2部第2話
そして大塚を遺跡の外まで案内したミャルマスは、手近な場所にある大きめの岩に座らせて落ち着かせる。
「……信じて貰えるかどうか分からないけど……」
大塚はミャルマスに対して、以前この世界に来た事があると言う事やフェレークやファルテレオと言ったメンツと戦った事を話した。
その話の中に出て来た名前に、ミャルマスはハッとした表情になる。
「・・・私、その人達とは面識があるんですよ、よく彼等と戦って勝ちましたね、・・・にしても何故彼等と
戦ったんですか? 何か訳があるんですか?」
「えっ、面識があるのか?」
まさかその2人と知り合いだったなんて、と大塚は自分の迂闊さを呪った。
「あー……いやほらえっと……まぁ、腕試しって奴だよ。でも俺だって楽に勝った訳じゃ無い。むしろ大苦戦だ。かなり強かったからな」
適当にごまかしてはみたものの、ミャルマスの心の中では大塚に対しての疑問が浮かび上がる。
(うーん・・・大塚さんの言っていることは、果たして本当なんだろう? 先程からこの人の様子は尋常でないし、フェレークさん達は
もしかして別の理由で大塚さんと戦ったのでは・・・?)
大塚も大塚で、こんなんじゃごまかしきれねーかも知れないなと思いながらこの後の足取りについて考える。
(この女はフェレークとファルテレオに会ったが最後、俺とあいつ等が戦った本当の理由を知る事になるだろうな。
だったら早く別れて、出来るだけ遠くに逃げるしか無いな)
しかし「他の国に行きたい」なんて言ったら間違い無くそこから足がついてしまうので、大塚はミャルマスに今質問を。
「あー、ここから1番近い町って何処かな? そこまで送って欲しいんだ。ずうずうしくて悪いけど」
その申し出にミャルマスは……?
「一番近い町ですね、えーっと・・・、あ、ラルクトンの町というところがあるんですけれど、此処から東に向かって歩けばつくと思いますよ」
「どれ位掛かるかな?」
「そうですね・・・10分ぐらい歩けばつくと思いますよっ」
「あ、そんな近いんだ。なら俺1人で行けるわ。どうもありがとう」
それじゃあ、と手を振って走り去っていく大塚の背中を見つつミャルマスは紙とペンを取り出してブツブツ呟きながら何かをメモし始めた。
「名前は、大塚・・・と、以前にもシェノトゥルアに来たことがある異世界人で今回で二度目、挙動不審なところも見られた・・・」
そんな挙動不審な場面をメモされているとは露知らず。大塚はラルクトンの町に辿り着いた。
(この町は以前の町と違って検査も何も無いけど……)
それ以上に大塚が気になるのは、町の広さに対して人の姿がまばらな事だった。
(何か、以前の町でもそうだったんだが……この世界って全然人の姿が少ない様な……)
しかし、人の姿があるだけでもまだマシなので大塚は手近な人間に聞きこみ調査を開始。
その結果として得られたのは、このシェノトゥルアと言うのが暗黒世界と呼ばれている、魔物や異形の怪物達が闊歩する事が
当たり前の世界だった事だ。
(俺、前の時は相当運が良かったのか?)
特にそれらしきモンスターにも出会わなかったので、大塚は以前は相当運が向いていたらしい。
しかし今回は違う。
実は歩き出す前、あの銅像に一旦S2000の鍵を差し込んで回してみたのだが今回は何の反応も無かったのだ。
最初から鍵を持っているという事は、この世界から地球に帰る為のアイテムがまた何処かにあるのだろうか?
それとも、何か別の方法で帰る事になるのだろうか?
そして1番最悪なパターンは……。
(この訳の分からない世界から、俺が帰れないって言うのだけは真面目に止めてくれよ、この世界の神様!)
この世界に神が居るかどうかは分からないが、それでも一応頼んでおく事にする。
神に祈りだか願い事だか分からない微妙な物を捧げた大塚が再び情報収集を開始した頃、ミャルマスが行動をスタートし始めていた……。
ミャルマスは大塚と別れ、反対方向へと30分程歩いて行った所にある別の町に辿り着いていた。
そしてそこにある宿屋へと向かい、事前に予約していた部屋に入る。
そこで荷物を纏めたあと、1階の食堂へと降りてお目当ての人物達を発見した。
「・・・フェレークさん! ファルテレオさん!」
「・・・あっ、ミャルマスが来たぞ」
顔見知りの2人……この世界を旅するコンビとして有名な剣士と格闘家のコンビである2人。
その2人と知り合いのミャルマスは、4人掛けの丸テーブルに座るその2人に向かい合う形で座った。
フェレークはミャルマスに取材の成果を聞いてみる。すると、彼女の口から思いも寄らない結果報告が!!
「今日私が遭遇した異世界人の名前は、大塚という男性でした、シェノトゥルアに訪れたのは二度目で、彼の言葉によると
前に来た時はフェレークさん達と力試しをしたとのこと、です、何か隠していた様子でもありましたが・・・」
「何っ、それは本当かっ?」
「・・・俺達は、力試しなんかであいつと勝負をしたわけじゃない、あいつが何者なのか、その真実を知るために
騎士団にあいつを渡そうとして勝負を仕掛けたんだ、・・・ところがあいつに負けた、悔しいぜ・・・」
「・・・だがリベンジだ、向こうからわざわざやって来たんだ、このチャンスを逃がすわけにはいかないよな?」
「あぁ、あの時の借りを返すときだぜ!」
指の骨を鳴らしているファルテレオに、ミャルマスはこんな提案をする。
「・・・もし、よろしければ私も同行させていただいてもよろしいでしょうか? 私も彼が何者なのか、気になるのです」
「ああ、全然かまわないぞ、お前は充分活躍した・・・この後の活躍にも、期待してるぞ」
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