Outsider fighting Quest第10話(最終話)


だけどそんな事を考えている余裕は無い。

フェレークのロングソードが再び襲い掛かって来るので、それをスウェーで回避しつつ

ローキックを繰り出す。でもそれを足を上げて回避されたので、そのローキックを振りぬいた

勢いでハイキックに繋げる・・・が、これもまた同じくスウェーで避けられる。

更に無言のままもう1発ハイキックを1回転しながら振り抜くが、今度はそれをフェレークに

腕全体で止められてしまいお返しとばかりにロングソードの回転斬りが来たので、大塚も

一瞬の判断で後ろに大きくバックステップ。


ロングソードを振り抜いた事で隙が出来たフェレークに一気に接近し、胸にまず1発右のストレート、

次にみぞおち目掛けて左、右と2発ボディブロー、それから顔面目掛けてそれぞれ1発ずつまた

同じく左、右とパンチ。流石にこのパンチの雨にはフェレークも呻き声を上げてよろめく。

「うぐっ!! ぐあぁっ!! っの野郎・・・!!」

体勢を立て直しながらもフェレークは再びロングソードを振り上げるが、ファルテレオよりも小柄な

フェレークを大塚はその懐に飛び込んで一気に持ち上げる。

流石に自分よりも背が高いが、持ち上げられない重さでは無い。


フェレークを持ち上げた大塚は、遺跡の前の時の様に叩き付けられる物が無い・・・・いや、

1つだけあったと思い出す。

「ふんぬああああああああああああああああああっ!!」

絶叫しながら、今度は後ろにあった銅像に背中からフェレークを叩きつける。

銅像は硬かったらしく砕けたり欠けたりする事は無く、フェレークはそのまま叩きつけられた衝撃でKOされ

地面へと倒れ込んでしまった。

「はぁ・・・はーっ・・・はぁ・・・ああ・・はっ、はぁ・・・はーっ!!」

(御前、こんな事言ってたな。剣の戦いには自信があるけど、素手はあんまり自信が無いってさ・・・)


腹の痛みから始まる身体中の痛みに耐えながらも、大塚はこれで銅像をようやく調べられるとばかりに

色々な所を見て行く。その銅像は鎧を着込んで右手に持っているロングソードを天高く突き上げた大男の

銅像であり、フェレークと何処か重なる部分があった。

そんな銅像・・・には何も怪しい所は無かったが、ふと、大塚はその銅像のタイトルが記されているプレートの下に

奇妙な細長い穴を見つけた。

(・・・ん?)

明らかに自然の歳月で出来た物では無い。そして、その穴の形に大塚は見覚えがあった。


これってもしかすると・・・とばかりに大塚はS2000のキーを取り出す。

(ま、まさ、か・・・)

エンジンをかける時と同じ様に、カチャっとキーを差し込んで右側に捻ってみる。

するといきなり銅像が振動し始め、眩い光を放ちながら大塚はその光の中に吸い込まれて行く。

「う、うわ・・・あああっ!?」

光の眩しさに思わずキーを握ったままもう片方の腕で顔を覆い、その光が収まった所で大塚は目を開ける。


すると、大塚は自分のS2000のドライバーズシートにエンジンがかかったまま座っていた。

残業で遅くなって帰ろうとした矢先の、自分の長年の愛車のシートに。

「え、あ・・・あれ?」

今までの事は一体何だったのだろうか?

もしかしたら自分は深夜までの残業で疲れ果ててしまい、そのままS2000のシートで眠ってしまったのでは無いか?

そう思い、大塚はとりあえず時間確認をしようと腕を動かす・・・が。


「・・痛っ・・・た!!」

腹部に強烈な痛みを覚える。思わず右手で腹を抑えてみると、その手が真っ赤に染まった。

「・・・!!」

ルームライトでその手を照らして惨状を確認した大塚。腹部からは血が流れている。

当然、こんな傷は残業でついた物では無い。

「・・・・・・は、はは・・・・」

何だか良く分からないけど、笑う事しか大塚は出来ない。

しかし笑ったらまた傷に響いたので、大塚は何とかS2000をスタートさせて夜間の救急病院へと

この傷の適当な理由を考えながら向かうのであった。



Outsider fighting Quest 


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