バーチャコップ＆タイムクライシス小説第２話
「由紀！ こっちだ！」
「う…うん！」
隆と木下に連れられ、とにかく通路を駆け回る由紀。
後ろからは大勢の足音が聞こえてくる。正直言って、話し合いで解決できる問題ではなさそうだ。
（くそっ…）
隆は舌打ちをして、逃げ続けなければいけないと言う事を呪うと同時に嘆くのでもあった。
事の起こりは数分前。上昇していくエレベーターは２７階で止まり、
ドアが再度閉まるのを待っていた３人。しかし、一向にドアは閉まらない。
Ｄ３と同じ反応をした３人は、階段を使っていかなければいけないと言う事にうんざりしていた。
「全く、なんでこんな時に故障なんだよ！」
「そうだよ！ ついてないわね」
「全くだな。ともかく、早く下に降りないと閉店しちまうぜ？」
３人は手すりを使って、２段飛びで階段を駆け下りようとした。
しかし…。
「そっちに逃げたぞ！」
どこからか男の声がして来たかと思うと、目の前から２人の男が走ってきた。
どちらもジャケットを羽織った男だ。
だがその手には、何とアメリカでは日常茶飯事とも言うべきか
大型の拳銃がそれぞれ握られていた。
「ね…ねぇ、あれ銃じゃないの？」
「マジだ…とりあえず、どこかに隠れよう！」
だが、不幸というものは結構重なる確率が高い。
男たちを見て踵を返した３人の足元めがけ、１発の銃弾が放たれた。
「うわ！」
これはまずい事態になったかもしれない、と木下たちはあせり始めるのであった。
エレベーター故障の原因は、２７階で起こっていた。
先に取引現場にたどり着いたＶＳＳＥ達と、取引最中の組織との銃撃戦が、すでに始まっていたのだ。
しかも、パーティだというのにタキシードではなく、普通の一般人的な服装をした奴らも混じっている。
どうやら、怪しまれないようにするためだろう。
とりあえず、このフロアにいるのは全員敵だと言う事だけは、明白のようである。
その取引連中の１人が、エレベーターを止めてしまったらしい。
「ウェズリー、あぶねぇ！」
ウェズリーが背後から狙われているのをアランがカバー。
その一方で、ジョルジョとエヴァン、キースとロバートも激しい抵抗を続けてくる連中に手を焼いていた。
何分広いパーティ会場。それだけならまだしも、敵の数が多すぎる。
どこからこんなに湧き出て来るんだ？ と思いつつも、今まで培った経験を頼りに敵を倒していくのであった。
その頃。バーチャコップ達は階段を使ってパーティ会場へと向かっていた。
エレベーターが来ないので、階段を使っていくことにしたのである。
「よし、後もう少しだ」
「ああ、そうだな」
普段から刑事として尋常では無い鍛え方をしているため、２人は息を少しも切らしてはいない。
そしてようやく２７階に着いた……と思ったのもつかの間、ジャネットから通信が入ってきた。
「ん…ちょっと待って！」
「どうした？」
「多数の生体反応を確認したわ。動きも活発ね。何かが起こっているかもしれないから気をつけて」
「「了解」」
引き抜いたバーチャコップ用の大型オートマチック拳銃、ガーディアンⅡを握り締めた２人。
まずレイジが身構え、スマーティがドアを蹴り破って侵入した。
「動くな！ バーチャシティ警察だ！」
そのレイジの大声に気がついた取引現場のメンバーは、２人に銃口を向けた。
ステージ２
「キース、ロバート、アラン、ウェズリー、そっちはどうだ？」
ＶＳＳＥメンバーは３手に分かれ、耳のイヤホンでお互いに連絡を取り合いながら、
散らばって逃げていく敵を追い詰めていく。
「アランだ。こっちは良いぜ」
しかし、キースとロバートのほうからは切羽詰った声が聞こえてきた。
「こっちは逃げた３人組を負っている。１人はどうやら女のようだが、
こちらを見て逃げた以上、怪しいと思うので追跡中だ」
「わかった。俺とエヴァンは交戦中だ。状況は逐一報告してくれ！」
「了解！」
ジョルジョからの通信が終わり、キース、ロバートは３人組を追っていく。
すると、目の前の通路に分かれ道が現れる。追い詰められた時、
集団で行動する人間が取るのは大抵…。
「くそ！ ２と１に分かれやがった！」
「ロバート！ 俺は女が居る方を追う！」
「わかった！ 気をつけろ！」
キースとロバートも二手に分かれ、それぞれ逃げて行く３人組を追いかけ始めるのであった。
「こんな展開、聞いて無いぜ！」
「俺だって同じだよ！ くそっ…あの悪夢がよみがえるのかよ！」
Ｄ３のメンバーも、階段を駆け下りていく途中に取引実行犯に見つかり逃走中。
何人かはぶちのめしたが、いかんせん数が多すぎる。もう閉店時間がどうのこうの言っている場合では無い。
しかし手近なドアを開けた瞬間、そこには男の姿が！
「ああくそっ！」
条件反射的にその男の顔に、思いっきりストレートパンチを入れてしまう慎太郎。
「ぐわ！？」
だが、男は１人だけではなかった。
「れ、レイジっ！？」
「ぐっ…鼻が…！」
２人いたことに気がついた慎太郎は、あわててドアを閉めてバック。
「ちょ、ここはだめ！ 別のルートを探そう！」
「ああ、わかった！」
踵を返して走り出す３人。後ろからドアを蹴り開ける音が聞こえたが、振り返らずに走り続ける。
手近なドアに飛び込むと、またしても階段。とにかく下に降りて、どこかで助けを求めなければ。
「大丈夫か？」
「ああ、何とかな！ しかしいきなりパンチ食らうとは、俺も情けねーな！」
レイジとスマーティは、パンチを食らわせてきた男とその仲間と思われる２人を追っている。
もう１人いたのだが、別のほうへ逃げてしまった。
「ジャネット！ 現在位置はわかるか！？」
「階段を下り切ると、そこはショッピングモールね！ 一般人がいるかもしれないわ。何としても食い止めて！」
「わかった！」
一般人に被害が出る前に、何としても食い止めたい。
その思いが通じたのかは知らないが、目前に見えてきた、十字路になっている
分かれ道の角で信じられない出来事が起きた。
ドゴン！ と派手な音がしたかと思うと、左側から走ってきた別の奴らと
衝突した２人組が思いっきり吹っ飛ばされていた。
（チャンスだ！）
だが、その左側から来た奴らの後ろからは別の５人組が追ってきていたのである。
「動くな！ そこで止まれ！」
「もう潮時ってやつだよなぁ？」
追ってきた５人組のうち、金髪のつんつん頭の若造が楽しそうに笑う。
レイジは２人組に、スマーティはその５人組に銃口を向けた。
「何者だ！？」
「くっ、そっちこそ誰だよ！」
茶髪のサングラスの男が切れ気味に問いかけてくる。
「……俺らはバーチャシティ警察の刑事だ」
スマーティがその茶髪男の言葉に、あくまで冷静に５人組に向かって答える。
しかしその言葉に、５人組の顔が変わった。
「…警察だって？」
「ま…待て待て！ 警察なのか？ 身分を証明できるものはあるか？」
「…ああ。これだ」
スマーティは警戒しつつ、警察ＩＤカードを取り出す。
「…調べさせてもらっても良いか？」
「調べるだと？」
黒髪の渋い男が発した言葉に、わずかな違和感を覚えるレイジ。
「俺らは国際特殊諜報機関ＶＳＳＥのメンバーだ。信じられないと言うのなら
俺らの事をまず調べてくれ」
「なら、調べさせてもらうぞ。ジャネット、頼むぜ」
「わかったわ」
本部に居るジャネットに、ＶＳＳＥのサーバーにアクセスしてもらう。
「……どうだ？」
「…紛れもなく、その５人はＶＳＳＥのエージェントの方々ね。キース・マーティンさん、
アラン・ダナウェイさん、ウェズリー・ランバートさん、ジョルジョ・ブルーノさん、エヴァン・ベルナールさんよ」