バーチャコップ&タイムクライシス小説第1話


ステージ1

「しっかし、でっけぇビルだなぁ」

天高くそびえるビルを見上げ、アランが呟いた。それに続いてロバートも声を上げる。

「そうだな。このビルの上にある、1番大きなパーティ会場…27階まで行くんだ」

天高くそびえる摩天楼は、まるで魔王の城のようでもあった。

「…行くぞ」

キースが一行を促し、6人はビルに向かって歩き始めた。


その数分後、バーチャコップ達のカマロもビルに到着。サイレンは少し前から鳴らすのを止めていた。

下手に敵に対し、警戒心を与えてはいけない。

「着いたぞ、ジャネット。取引現場の場所はわかるか?」

「ええ。27階のパーティ会場ね。直通のエレベーターはないから、そこまではエレベーターを乗りかえて行くこと」

「「了解」」

ジャネットの通信が終わったことを確認し、レイジとスマーティもビルの中へと入って行った。



「あー、おいしかったわね」

「そうだな。アメリカでは巻き寿司が人気だって言うけど、変わったメニューも多くて、日本のとはまた違ってたな」

「代金は少し高かったけどな…」

自分にも原因はあるのだが、全部出したのは隆だった。彼の財布の中身が半分はなくなるほど食った3人。

飛行機のチケットはきっちりとってあるので、帰りの心配はしなくて良いのだが、

隆がため息をつかざるを得ないのもまた事実だ。

「さてと、腹ごしらえもすんだし、見回りに行くか?」

ということで、3人はすし屋のある4階から上を見て回ることにした。


「さすがに…はぁ、広い…わね…」

「…だな…」

「俺もう疲れたよー。帰ろうぜー?」

由紀と隆は2人とも、ここバーチャシティでのあの事件の後、何かあったら困ると思い木下から約2ヶ月、

護身用に空手を習っていた。それでも腕前は全然木下に及ばないのは事実。

だが少しだけ体力はついている。それに加え、2人とも重い車を運転するために

筋力はそれなりにあるのだ。


由紀のスバルインプレッサ、隆の日産フェアレディZ、そして木下の日産ステージア。

取り回しの利きづらいこの3台の車を、狭い日本の山道のサーキットで強引に曲げていく

テクニックを持っている。ハンドルを切るのはとてつもなく忙しく、筋力も自然とついてくる。

たとえパワステがあってもだ。

でも木下も少し疲れているだけあり、これ以上の探索は今夜の大会に響くだろうと判断する。

閉店時刻ももう少しで来てしまう。

「よし、帰ろうぜ」

「そうだな」


今3人がいるのは地上21階。

帰るためにエレベーター乗り場へ向かうと、エレベーターがちょうど来たのでそれに飛び乗る。

しかし…。

「おい…これ、上行きだぜ?」

「えーっ!?」

めんどくせーことになったなぁ、と思いながらも、隆は15階へのボタンを押す。

閉店時間までもう残り少ない。

どうやらこのエレベーターは15階から30階までしかないようである。



一方その頃、ショップを見回って疲れたD3の3人は、20階のカフェテラスで休憩していた。

「足痛い…」

「俺も…歩きすぎたぜ」

高校時代陸上部だった中村直樹、剣道部の主将だった星沢慎太郎、

そして元刑事だった西山貴之の足でも、アメリカ特有の大きい建物を見て回った結果、

休憩せざるを得なかった。

「アメリカってやっぱ広いよな、建物。俺ら日本人とは考え方が違うというかさ」

「そーそー、車でも、車体がでかいならエンジンをでかくすれば良い、って考えだもんな」

「食いモンの量も多ければ、道だって広いし…」


何だか話していて虚しくなってくるのは、気のせいだろうか。

「さて、もう少ししたらまた散策開始だな」

「そうだな」

そう言って、慎太郎はコーヒーを口に運んだ。

その後。D3の3人は30階まで一通り見回った後エレベーターに乗り込んだ。

「カメラ、持ってくればよかったな。ケータイのじゃなくて」

「でも撮影禁止のところもあるだろうから、不用意に撮影は出来ないぜ」

「まぁ、それはそうだけどよ」


が、エレベーターが動き出したと思ったら28階まで来て一旦停止した。

しかしそこには誰もいない。おそらく、誰かがボタンを押したは良いが

エレベーターが来ないのに痺れを切らし、階段で行ってしまったのだろう。

「ったく…」

小さく舌打ちをし、直樹が開閉ボタンを押す。だが…。

「…あれ? 閉まらないぞ?」

「何言ってるんだよ。そんなバカなことが…」


そう言って慎太郎がボタンをカチカチと押すが、ドアはうんともすんとも言わない。

「あれ? 故障かな? どうなってんだよ一体…」

仕方が無いので、非常連絡ボタンを押してみるが…やはりこっちも通じない。

「マジか、故障かよ?」

「どうやらそうみたいだな」

西山が状況を判断。3人は階段を使って行くしかなくなってしまったようだ。


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